妊婦の病気治療で避けたいNG行動5選

NG 医者

妊娠中の病気治療では、母体と胎児の健康を守るために避けるべき行動があります。安易な自己判断や薬の誤用など、NG行動とその理由を詳しく解説します。

妊娠したけど・・・不安
NIPTを検討してみては?

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妊娠中は、母体と胎児の健康が密接に関わり、些細な判断の違いが大きな影響を与えることがあります。つわりや風邪といった軽症の不調から、糖尿病や高血圧、甲状腺疾患などの持病管理、感染症対策まで、妊婦が直面する健康課題は多岐にわたります。

しかし、自己判断での薬の服用や、ネット上の情報を鵜呑みにする行動は、時に胎児の発育や妊娠経過に深刻な影響を与えます。本記事では、「妊婦の病気治療で避けたいNG行動5選」を医学的根拠に基づいて詳しく解説し、正しい行動と予防策まで網羅します。さらに、NIPT(新型出生前診断)の結果解釈や検査後の対応についても取り上げます。

1. 医師の診断を受けずに薬を服用する

妊娠中の薬は「安全」とは限らない

妊娠中は、母体だけでなく胎児にも薬の成分が影響します。特に妊娠4〜12週(器官形成期)は、脳・心臓・四肢など主要な臓器が形成される時期で、この期間の薬の影響は将来の発育や機能に直結する可能性があります。
たとえ普段飲んでいる薬や、市販で手に入る薬でも、妊娠中は安全性が変わることがあります。

危険な自己判断例

  • 市販の解熱鎮痛薬を連日服用
    → 妊娠後期では胎児動脈管の早期閉鎖や羊水減少のリスク
  • 風邪薬を自己購入して服用
    → 一部成分(イブプロフェン、アスピリンなど)が胎児や母体に悪影響
  • 漢方薬やサプリを「自然だから安全」と誤解
    → 甘草やセントジョーンズワートなど、一部の植物成分は妊娠中禁忌

実際の症例

症例A
妊娠7週の女性が頭痛でNSAIDs(イブプロフェン)を自己判断で服用。妊婦健診で薬の服用を申告した際、医師から胎児循環への影響可能性を指摘され、精密エコー検査を追加実施。結果的に異常はなかったが、大きな精神的負担に。

症例B
妊娠後期に自己判断で漢方薬を服用し、肝機能障害を発症。薬剤の成分が肝臓代謝を阻害した可能性があり、入院管理となった。

医師が強調する注意点

「市販薬や以前もらった処方薬でも、妊娠週数によって使えないことがあります。服用前には必ず医師か薬剤師に相談してください。」
産婦人科医A先生

安全な服薬のための3ステップ

  1. 必ず医療者に相談
    妊娠週数・症状・既往歴を伝えてから薬を決める
  2. 母子手帳に服薬履歴を記録
    急な受診でも医師が状況を把握しやすくなる
  3. 薬剤情報シートを活用
    厚生労働省や学会が発行する「妊娠と薬情報センター」などを参照

チェックリスト:服薬前に確認すべきこと

  • 妊娠週数を把握している
  • 現在の症状が自己判断で市販薬を使ってよいか確認済み
  • 服用中の薬やサプリをすべて医師に申告済み
  • ネット情報だけで薬を選んでいない
  • 医師の説明をメモして保管している

このように、妊娠中の薬は「飲まないほうが安全」ではなく、「正しい薬を正しいタイミングで使うことが安全」です。
安易な自己判断は避け、医療者と二人三脚で服薬管理を行うことが、母子の健康を守る最短ルートです。

2. インターネットやSNSの情報を鵜呑みにする

情報の海には“真実”と“誤情報”が混在している

妊娠や出産に関する情報は、インターネットやSNSで無数に発信されています。検索すれば体験談や「おすすめの方法」が山ほど出てきますが、その中には医学的根拠がないものや、一部だけ正しい情報、さらには母体や胎児に害を与える可能性がある情報も含まれています。

特にSNS(Instagram・X・YouTubeなど)では、「自分には効果があった」=「すべての妊婦に安全」という誤解が広がりやすく、妊婦本人が気づかないうちにリスクを背負ってしまうケースもあります。医学的根拠に基づいた情報であるかどうかを見極める事が大切です。

誤情報が招く危険な例

  1. ハーブティーで流産防止
    → 根拠なし。一部ハーブ(セージ・シナモン・ペニーロイヤルなど)は子宮収縮作用があり流産リスクを高める可能性。
  2. つわりは絶食すれば軽くなる
    → 栄養不足で入院管理が必要になった事例あり。妊娠悪阻は脱水や電解質異常の危険。
  3. 葉酸は多く取るほど良い
    → 必要量を超えるとビタミンB12吸収阻害や代謝異常のリスク。
  4. 「NIPTは絶対診断できる」説
    → 実際は確率検査。陰性でも例外があり、陽性なら確定診断が必要。

実際の症例

症例A
妊娠初期に「自然療法で安産になる」とSNSで紹介されたアロマオイルを使用。結果的に皮膚刺激反応と子宮収縮が起こり、切迫流産で入院。医師から「精油成分が子宮平滑筋に作用する可能性がある」と指摘。

症例B
ブログ記事の「糖分は胎児に悪影響、完全カットを推奨」という情報を信じ、炭水化物を極端に制限。結果、ケトン体上昇と体重減少で胎児発育不全が判明。

医師のコメント

「ネットやSNSの情報は玉石混交です。特に“民間療法”や“経験談”は妊娠週数や体質で安全性が変わるため、医師の確認なしに試すのは危険です。」
— 周産期専門医B先生

安全な情報収集法

  1. 一次情報を確認する
    厚生労働省、日本産科婦人科学会など公的機関の資料が最優先。
  2. 複数の情報源で照合
    1つのサイトや投稿だけを鵜呑みにせず、少なくとも2〜3の異なる情報源で確認。
  3. 医療者に質問する
    健診時やオンライン相談で「この方法は安全か?」と直接聞く。
  4. 日付と更新履歴を確認
    医学情報は年単位で変わるため、古い情報は信用しすぎない。

情報の信頼性を見抜くポイント

  • 運営者の明示(病院、医師、学会など)
  • エビデンスの提示(論文、ガイドライン、臨床試験結果)
  • 広告目的の有無(特定商品やサービスの誘導が中心でないか)
  • 情報更新日(古い情報は現状に合わない可能性)

チェックリスト:情報を鵜呑みにしないために

  • 情報源が公的機関や医療機関である
  • 投稿者が医療従事者であることを確認
  • 効果や安全性に関する科学的根拠が提示されている
  • 複数の情報源で一致している
  • 医師や助産師に直接確認済み

妊娠中は「善意の助言」や「成功体験」が必ずしも自分に安全とは限りません。ネットやSNSの情報は参考にとどめ、最終判断は必ず医療者と行うことが、母子を守る一番の近道です。

3. 症状を我慢して受診を遅らせる

なぜ妊娠中は「早期受診」が重要なのか

妊娠中は、母体の免疫・循環・ホルモンのバランスが大きく変化します。
そのため、非妊娠時には軽症で済む病気や不調が、妊娠中は急激に悪化することがあります。
さらに、母体の異常は胎児の発育や安全に直結するため、「様子を見すぎる」ことは危険です。

症状を我慢してしまう心理

  • 「妊娠中はよくあること」と思い込む
  • 忙しくて受診の時間が取れない
  • 医療機関に迷惑をかけたくない
  • 受診したら入院になるのではという不安
  • コロナ禍などで外出・受診を控えがち

こうした心理が、重大な病気の発見を遅らせる要因になります。

我慢が招く危険な例

  1. 発熱・咳を放置
    → 実は肺炎で、母体低酸素状態となり胎児の心拍異常が発生。
  2. 軽いむくみを放置
    妊娠高血圧症候群の初期症状だった。受診時には血圧が180mmHg超で緊急入院。
  3. 軽い下腹部痛を我慢
    → 子宮頸管が短縮しており、切迫早産の状態に。

実際の症例

症例A
妊娠28週の女性。2日間の強い頭痛と視覚異常を放置し、翌日意識消失で救急搬送。診断は妊娠高血圧腎症による子癇発作。母子ともに緊急管理が必要となった。

症例B
妊娠32週で腹部張りを我慢。結果、陣痛様収縮が進行しており、未熟児出産となった。早期受診であれば薬で陣痛抑制できた可能性が高かった。

医師のコメント

「妊娠中は“よくある症状”と“危険な兆候”が見分けにくい。迷ったら受診、これが母子を守る鉄則です。」
— 周産期医療センター医師C先生

早期受診の判断基準

以下の症状は自己判断せず即受診が推奨されます。

  • 37.5℃以上の発熱が2日以上続く
  • 性器出血(少量でも)
  • 下腹部の持続的な痛みや強い張り
  • 急な視覚異常(チカチカ、視界がかすむ)
  • 激しい頭痛や吐き気
  • 胎動が急に減った、または感じられない

チェックリスト:受診を迷ったときの確認

  • 「妊娠中によくあること」と決めつけていないか
  • 胎児の動きに変化がないか
  • 症状が時間とともに悪化していないか
  • 家族や医療者に相談したか
  • 夜間・休日でも対応してくれる病院を把握しているか

妊娠中は「少し気になる」=「受診のサイン」です。
症状を我慢することで、取り返しのつかない事態になることもあります。迷ったらためらわず医療機関へ連絡し、必要なら早期受診することが、母体と胎児を守る最も確実な方法です。

医師と妊婦

4. 治療中の持病を中断する

妊娠と持病は密接に影響し合う

糖尿病・高血圧・甲状腺疾患・てんかん・心疾患などの慢性疾患は、妊娠中の経過や胎児発育に直接影響します。
しかし、妊娠が判明すると「薬は良くないのでは?」と考え、自己判断で治療を中止してしまう妊婦さんも少なくありません。
実際には薬をやめることのリスク>薬の副作用のリスクとなるケースが多く、安全な治療継続が母子を守る鍵です。

自己中断が招く危険性(病気別)

  1. 糖尿病
    • 高血糖状態が続くと、流産・先天異常(心疾患や神経管閉鎖症)・巨大児・羊水過多のリスク増大。
    • 妊娠中はインスリン抵抗性が高まり、血糖管理がさらに重要に。
  2. 高血圧
    • 放置すると妊娠高血圧症候群、子癇発作、胎盤早期剥離、早産の危険。
    • 降圧薬の自己中断で急激な血圧上昇を起こす例も多い。
  3. 甲状腺機能低下症
    • 放置すると流産、胎児発達遅延、知的発達障害のリスク。
    • 適正なチラージン投与でほぼ正常妊娠が可能。
  4. てんかん
    • 発作による外傷・胎児低酸素の危険。
    • 抗てんかん薬は妊娠中も必要量を継続し、可能なら催奇形性の少ない薬に切り替える。
  5. 心疾患
    • 心不全や不整脈の悪化により、母体・胎児双方の命に関わる可能性。

実際の症例

症例A
妊娠10週で降圧薬を自己中断。3週間後に血圧が急上昇(190/110mmHg)、妊娠高血圧症候群を発症。緊急入院・早期分娩となり、低出生体重児を出産。

症例B
妊娠8週で糖尿病薬をやめた結果、血糖コントロールが急激に悪化。胎児心奇形が見つかり、周産期管理が必要となった。

医師のコメント

「持病の治療は、妊娠中でも継続が基本です。薬のリスクを心配して中断するより、妊娠中でも使える薬へ調整し、安全に管理することが大切です。」
— 内科・周産期連携医E先生

安全な治療継続のポイント

  1. 妊娠判明後すぐに主治医へ報告
    妊娠週数・既往歴・現在の治療内容を共有。
  2. 薬の安全性を再評価
    妊娠中でも安全な薬へ切り替え、必要に応じて投与量を調整。
  3. 定期的なモニタリング
    血圧・血糖・甲状腺ホルモン・発作頻度などを妊娠経過に合わせて管理。
  4. 複数科の連携
    内科・産婦人科・周産期センター・薬剤師がチームで管理。

チェックリスト:持病治療の自己中断を防ぐために

  • 妊娠前・妊娠中に持病の治療歴を医師に伝えている
  • 服薬内容・用量・副作用を把握している
  • 薬の変更や中断は必ず医師の指示を受けて行っている
  • 定期健診と並行して持病の診察を受けている
  • 家族も治療継続の重要性を理解している

持病の治療は妊娠中でも中断せず、「母体を安定させることが胎児を守る最良の方法」という意識が大切です。
安全な薬への切り替えや用量調整は可能ですので、自己判断せず医療チームと協力して管理を続けましょう。

5. NIPTなどの検査結果を誤解して自己判断する

NIPTの正しい位置づけ

NIPT(新型出生前診断)は、母体の血液中に含まれる胎児由来DNA断片を解析し、主に21・18・13トリソミーなどの染色体異常リスクを推定するスクリーニング検査です。
しかし、NIPTはあくまで「確率」を示す検査であり、結果が陽性・陰性のどちらであっても100%の診断ではありません

確定診断を行うには、羊水検査絨毛検査など侵襲的な検査が必要になります。

誤解による危険な判断例

  1. 陰性=完全に安心
    → 実際には偽陰性(検出できなかった異常)があり得ます。まれですが陰性でも染色体異常があるケースがあります。
  2. 陽性=即中絶決定
    → 偽陽性の可能性もあり、確定診断を受けずに判断するのは危険。実際、追加検査で正常と判明する例もあります。
  3. 陽性結果を家族に相談せず独断
    → 精神的負担が大きく、正しいサポートや医療判断の機会を逃す恐れがあります。

実際の症例

症例A
妊娠11週でNIPTを受け、21トリソミー陽性判定。動揺のあまり家族や医師に相談せずに中絶を決意。後に羊水検査を受けた結果、染色体異常は認められず、誤判定だったことが判明。

症例B
陰性結果を「絶対安全」と誤解し、その後の妊婦健診で心疾患の可能性が判明。染色体異常以外の先天性疾患はNIPTでは分からないことを知らなかった。

医師のコメント

「NIPTは優れた検査ですが、診断ではなくあくまで“入り口”です。結果をどう受け止めるかは、必ず医療者と一緒に判断してください。」
— 遺伝カウンセラーD先生

正しい対応

  1. 検査前に限界と意味を理解する
    → 何が分かって何が分からないのかを事前に把握。
  2. 結果は必ず医療者と共有し解釈する
    → 遺伝カウンセリングで背景や統計的意味を説明してもらう。
  3. 必要に応じて追加検査を受ける
    羊水検査絨毛検査などで確定診断。
  4. 感情的判断を避ける
    → 家族や医療者と十分に時間をかけて話し合う。

チェックリスト:NIPT結果を受け取ったら

  • 検査の精度と限界を理解している
  • 医師・遺伝カウンセラーから結果の説明を受けた
  • 必要な場合は追加の確定診断検査を受ける予定
  • 家族や信頼できる人と結果を共有している
  • 感情的に決断していない

NIPTは、母体と胎児の健康管理に役立つ重要な検査ですが、結果を誤解すると取り返しのつかない判断につながる可能性があります。
「陰性でも油断せず、陽性でも慌てない」。この姿勢が大切です。
必ず医療者と相談しながら、母子にとって最良の選択を導くことが、妊娠期を安全に過ごす鍵となります。

まとめ

妊娠中の病気治療では、母体と胎児の安全を第一に考え、自己判断や不確かな情報に頼らないことが何より重要です。薬の使用、情報収集、受診のタイミング、持病の管理、検査結果の解釈——いずれも医療者との連携が欠かせません。安心して出産を迎えるために、日々の行動を見直し、正しい知識と行動で妊娠期を乗り切りましょう。

妊娠中の病気治療では、母体と胎児の健康を守るために避けるべき行動があります。安易な自己判断や薬の誤用など、NG行動とその理由を詳しく解説します。

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