この記事のまとめ
脳皮質異形成と他の脳奇形を伴う複合体5型(CDCBM5)は、TUBB2A遺伝子の変化によって脳の神経細胞の移動がうまくいかず、大脳皮質や大脳基底核の形に特徴が生じる先天性の疾患です。主な症状は、MRIで分かる脳の形の特徴、てんかん発作、筋緊張の異常、重度の発達遅滞などで、症状の重さには個人差があります。ほとんどのケースは新生突然変異(de novo)によるもので、ご両親のせいで起きたものではありません。根本的な治療法はまだありませんが、てんかんの薬物治療とリハビリテーションによって、お子さんの持っている力を引き出し、生活の質を高めることは十分に可能です。診断や今後の見通しについては、小児神経科や遺伝カウンセリングの専門家に相談しながら進めていくことをお勧めします。
この記事でわかること
- CDCBM5(TUBB2A関連脳形成異常)という病名の意味と、脳で何が起きているのか
- 脳の構造的特徴・神経学的症状・発達の特徴という3つの側面から見た主な症状
- TUBB2A遺伝子の役割と、多くが新生突然変異(de novo)によること
- MRI・脳波・遺伝学的検査による診断の流れと、他のチューブリン症との違い
- てんかん治療やリハビリテーションなど、今できるサポートと相談先
医師からCortical Dysplasia, Complex, with Other Brain Malformations 5という非常に長く、難解な診断名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。
生まれたばかりの赤ちゃん、あるいは乳幼児期のお子様に、日本語の定まった呼び方もまだ浸透していないような難病の診断が下り、計り知れないショックと不安の中にいらっしゃることと思います。特に、この病気は世界的に見ても報告数が少なく、希少疾患の一つに数えられるため、日本語で書かれた詳しい情報はインターネット上でもほとんど見当たりません。医師であっても、小児神経や遺伝の専門家でなければ詳しく知らないことも珍しくない疾患概念です。
遺伝カウンセリングの現場では、次世代シーケンサーによる遺伝学的検査の普及にともなって、こうした極めて希少な単一遺伝子疾患の診断名を初めて耳にするご家族からのご相談が増えてきたと感じています。長い診断名を前に立ちすくんでしまうお気持ちは、とても自然なことです。
まず結論から|CDCBM5(TUBB2A関連脳形成異常)とはどのような病気か
CDCBM5は、TUBB2A遺伝子の変化によって、脳が作られる過程で神経細胞がうまく移動できず、大脳皮質や大脳基底核などの構造に特徴的な変化が生じる先天性の疾患です。長い診断名を日本語に訳すと、脳皮質異形成と他の脳奇形を伴う複合体5型となります。医療現場や医学論文では、頭文字をとってCDCBM5(シー・ディー・シー・ビー・エム・ファイブ)と呼ばれることが一般的です。
この病気は、お母さんのお腹の中で脳が作られる過程において、神経細胞の並び方や脳の構造の形成に何らかの変化が生じた状態です。その原因として、TUBB2Aという特定の遺伝子に変化が起きていることが分かっています。
脳奇形という言葉や5型という数字に圧倒されてしまうかもしれませんが、この数字は発見された順番や遺伝子の種類を区別するための番号であり、単に重症度を表す数字ではありません。
また、原因が遺伝子にあることが分かったということは、これから起こりうることへの対策が立てやすくなり、お子さんに合った療育やケアのプランを考えるための地図を手に入れたということでもあります。
病名の意味を分解して理解する|脳皮質異形成・複合体・5型とは
長い診断名は「脳皮質異形成」「他の脳奇形を伴う」「複合体」「5型」という4つの要素に分解すると理解しやすくなります。それぞれの意味を順番に見ていきましょう。
脳皮質異形成とは
脳の表面には、神経細胞が整然と層をなして並んでいます。これを大脳皮質といいます。脳が発達する過程で、神経細胞は脳の深部で生まれ、表面に向かって移動し、正しい場所に整列します。このプロセスを神経細胞移動といいます。
この移動や整列がうまくいかず、層構造が乱れたり、脳のしわが厚くなったり、あるいはしわがなくなってつるつるになったりする状態を、脳皮質異形成といいます。
他の脳奇形を伴うとは
CDCBM5では、大脳皮質だけでなく、他の部分にも構造的な特徴が見られます。特によく見られるのが、大脳基底核と呼ばれる運動の調整に関わる部分の形成異常や、右脳と左脳をつなぐ脳梁の形成不全、小脳の低形成などです。
複合体とは
これらの症状が組み合わさって現れる症候群であることを意味しています。
5型とは
CDCBMには原因となる遺伝子によっていくつかのタイプがあり、TUBB2Aという遺伝子の変異によるものが5型と分類されています。このTUBB2A遺伝子の変異による病気は、チューブリン症(Tubulinopathy)という大きなグループにも属しています。これは、細胞の骨組みを作るチューブリンというタンパク質に関連する遺伝子の病気の総称です。
つまり、CDCBM5はTUBB2A遺伝子の変化により、大脳の形や構造がうまく作られず、それによって発達の遅れやてんかんなどの症状が現れる病気です。似た名前の病気との違いは、記事の後半で改めて整理します。
主な症状|脳の構造・神経学的所見・発達の特徴
CDCBM5の症状は、脳の構造的な特徴、神経学的な症状、発達の特徴という3つの側面に大きく分けられ、お子さんによって重さや出方はさまざまです。これまでに報告されている代表的な特徴について、順番に見ていきましょう。
| 症状のカテゴリ | 具体的にみられる特徴 | 気づかれやすい時期 |
|---|---|---|
| 脳の構造(画像所見) | 厚脳回・多小脳回、大脳基底核の異形成、脳梁の低形成、小脳や脳幹の低形成 | 出生前後のMRIで判明することが多い |
| 神経学的な症状 | てんかん発作、筋緊張低下から痙縮への変化、小頭症 | 乳児期から幼児期 |
| 発達・知能の特徴 | 運動発達の遅れ、重度の知的障害を伴うことが一般的 | 乳幼児健診を通じて経過とともに明らかになる |
| その他の身体症状 | 斜視・眼振、皮質視覚障害、顔つきの特徴 | 乳児期以降 |
1. 脳の構造的な特徴(画像検査でわかること)
MRI検査で分かる脳の形の特徴は、CDCBM5の診断における最も重要な手がかりです。具体的にどのような所見が見られるのか、代表的なものを確認していきます。
単純化された脳回(しわ)
脳の表面のしわが少なく、幅が広くなっている状態が見られます。これを厚脳回(こうのうかい)や、部分的な滑脳症(かつのうしょう)と呼ぶことがあります。また、逆に非常に細かいたくさんの小さなしわができる多小脳回(たしょうのうかい)が見られることもあります。これらは、神経細胞が正しい場所にたどり着けなかったことを示す所見です。
大脳基底核の異形成
脳の奥深くにある大脳基底核という部分(尾状核、被殻、淡蒼球など)が融合していたり、形がいびつだったりすることがあります。これはチューブリン症に特有の所見の一つとされています。
脳梁の低形成
右脳と左脳をつなぐ脳梁が薄い、あるいは短いといった特徴が見られることがあります。
小脳や脳幹の低形成
バランスを司る小脳や、生命維持に関わる脳幹が小さいことがあります。
2. 神経学的な症状
脳の構造の変化にともなって、てんかん発作や筋緊張の異常など、さまざまな神経症状が現れます。順を追って見ていきましょう。
てんかん発作
多くの患者さんでてんかん発作が見られます。発症時期は乳児期から幼児期と幅広いです。発作のタイプも様々で、体の一部がピクつく発作、全身が硬直する発作、てんかん性スパズム(お辞儀をするような発作)などがあります。薬でコントロールできる場合もありますが、中には複数の薬を使っても発作が止まりにくい難治性てんかんとなることもあります。
筋緊張の異常
赤ちゃんの頃は、体がふにゃふにゃとして柔らかい筋緊張低下が見られることが非常に多いです。抱っこした時にずっしりと重く感じたり、首のすわりが遅れたりします。成長とともに、逆に手足の筋肉が突っ張って硬くなる痙縮(けいしゅく)が見られるようになり、手足の自由が利きにくくなることもあります。
小頭症
生まれた時の頭の大きさは正常範囲内でも、成長とともに頭囲(頭の大きさ)の増え方が緩やかになり、相対的に頭が小さくなる小頭症が見られることがよくあります。脳の成長がゆっくりであることを反映した所見です。
3. 発達と知能の特徴
脳全体の形成に関わる病気であるため、運動面・知的な発達への影響は避けられませんが、その程度には幅があります。
重度の発達遅滞
首がすわる、お座りをする、ハイハイをする、歩くといった運動面の発達が、一般的なペースよりもかなりゆっくりになります。多くの場合、歩行の獲得には長い時間がかかるか、あるいは車椅子などの補助具が必要になることがあります。
知的障害
言葉の理解や発語など、知的な発達にも遅れが見られます。重度の知的障害を伴うことが一般的です。言葉によるコミュニケーションが難しい場合もありますが、表情や声のトーン、身振りなどで感情を伝えることは可能です。ただし、報告されている症例には幅があり、すべてのお子さんが同じ経過をたどるわけではない点は、正確にお伝えしておきたいと思います。
4. その他の身体的な特徴
視覚的な問題
斜視(目の位置がずれる)や眼振(黒目が揺れる)が見られることがあります。また、目そのものの構造には問題がなくても、脳が映像を処理することが苦手なために、ものを見ることが難しい皮質視覚障害が見られることもあります。
顔つきの特徴
おでこが傾斜している、あごが小さいなど、いくつかのお顔立ちの特徴が報告されていますが、個人差が大きく、ご両親に似た可愛らしいお顔をしているお子さんがほとんどです。
原因|TUBB2A遺伝子と神経細胞移動の仕組み
CDCBM5の原因は、脳を作るための細胞の「レール」であるチューブリンというタンパク質の設計図、TUBB2A遺伝子の変化にあります。なぜ脳の形が変わったり発達が遅れたりするのか、順を追って説明します。
TUBB2A遺伝子の役割
CDCBM5の原因は、第6番染色体にあるTUBB2A(タブ・ビー・ツー・エー)という遺伝子の変異です。この遺伝子は、ベータ・チューブリンというタンパク質を作るための設計図です。チューブリンは、細胞の中に微小管という非常に細い管を作る成分です。この微小管は、細胞の骨組みとなって形を保つ役割だけでなく、細胞の中で物質を運んだり、細胞自体が動いたりするためのレールのような役割を果たしています。
脳が作られる時期には、神経細胞が脳の深部で生まれ、表面に向かって長い旅をします。この時、神経細胞はこの微小管というレールを使って移動するのです。
遺伝子の変化がもたらす影響
TUBB2A遺伝子に変異が起きると、レールの成分であるチューブリンがうまく作られず、神経細胞が正しい場所まで移動できなくなります。
変異によってチューブリンの形がおかしくなると、レールが途中で曲がったり、不安定になったりします。その結果、神経細胞が正しい場所まで移動できずに途中で止まってしまったり、間違った場所に配置されたりします。脳の表面のしわが異常になる厚脳回や多小脳回、脳の奥の構造である基底核がうまく形作られない状態は、こうした神経細胞移動障害の結果として説明されています。
遺伝について|多くは新生突然変異(de novo)
CDCBM5のほとんどのケースは、ご両親の遺伝子に異常がなくても起こる新生突然変異(de novo変異)によるものです。多くのご家族が、親から遺伝したのか、妊娠中の生活に問題があったのかとご自身を責めてしまわれますが、その必要はありません。
新生突然変異とは、精子や卵子が作られる過程、あるいは受精した直後の細胞分裂の段階で、偶然にTUBB2A遺伝子に変化が起きたことを意味します。つまり、ご両親のどちらかのせいで遺伝したわけではありません。また、妊娠中のお母さんの食事、お薬、ストレス、環境などが原因で起きるものでも決してありません。誰にでも起こりうる、生命の誕生における偶然の現象なのです。
チューブリン関連遺伝子の変化は、多くが常染色体顕性の形式で次世代に伝わりうる性質を持つ遺伝子ですが、CDCBM5の実際の症例のほとんどはご両親どちらにも変異がない新生突然変異です。ごくまれに、ご両親の生殖細胞の一部だけに変異がある「生殖細胞モザイク」を背景として、次のお子さんにも同じ変異が伝わる可能性が報告されています。次のお子さんを考える際の具体的な再発率は家族ごとに異なるため、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングで確認してください。
TUBB2A遺伝子や関連するチューブリン症全体の分子メカニズムについては、米国国立医学図書館(NCBI)が公開している専門家向けの総説「Tubulinopathies Overview(GeneReviews)」に詳しくまとめられています。また、TUBB2A遺伝子そのものの基礎情報はNCBI Geneのデータベースで確認できます。
診断と検査の流れ|MRI・脳波・遺伝学的検査
CDCBM5の診断は、症状の観察・MRIなどの画像検査・遺伝学的検査を組み合わせて行われ、最終的な確定診断には遺伝子検査が必要です。それぞれの検査で何が分かるのかを整理します。
1. 画像検査(MRI)
CDCBM5を疑う上で、MRI検査は最も重要な検査です。脳の断層写真を撮ることで、脳のしわの異常(厚脳回、多小脳回、滑脳症など)、大脳基底核の形の異常(特に尾状核や被殻の融合や欠損)、脳梁の低形成、小脳や脳幹の低形成といった特徴がないかを詳しく調べます。特に、大脳基底核の異常と皮質の異常がセットで見られる場合、TUBB2Aを含むチューブリン遺伝子の異常が強く疑われます。
2. 脳波検査
てんかん発作がある場合や、発作が疑われるような動作が見られる場合に行われます。脳の電気活動を記録し、てんかん性の波(スパイク)が出ていないかを確認します。発作のタイプを特定し、治療薬を決めるために不可欠な検査です。
3. 遺伝学的検査
確定診断のためには、血液を採取してDNAを調べる検査が必要です。MRIで特徴的な脳の形が見つかっても、それだけでCDCBM5と断定することはできません。他のチューブリン遺伝子(TUBA1A、TUBB2B、TUBB3など)でも似たような脳の形になることがあるからです。
近年急速に普及してきた次世代シーケンサーという技術を用いた全エクソーム解析(WES)や、脳奇形に関連する遺伝子パネル検査が行われることが一般的です。こうした検査で特定されたTUBB2A遺伝子の変異こそが、CDCBM5という原因の実態を示す根拠であり、確定診断に至る決め手となります。実際にTUBB2A遺伝子の変異とこの疾患像の関連を報告した代表的な研究として、Cushionらによる2014年の論文(American Journal of Human Genetics掲載)があります。
治療と管理|今できるサポートとリハビリテーション
遺伝子の変化そのものを治す根本的な治療法は現時点で確立されていませんが、てんかんの薬物治療とリハビリテーションを組み合わせることで、お子さんの生活の質を高めることは十分に可能です。それぞれの支援の内容を見ていきましょう。
1. てんかんの治療
てんかん発作をコントロールすることは、脳の発達を守るためにも非常に重要な治療の柱です。抗てんかん薬による治療が中心となり、発作のタイプに合わせて、バルプロ酸、レベチラセタム、クロバザム、ラモトリギン、トピラマートなど、様々なお薬が試されます。一つのお薬で止まらない場合は、複数を組み合わせたりします。難治性の場合は、ケトン食療法などの食事療法が検討されることもあります。
2. 発達支援と療育(リハビリテーション)
早期からの療育が、お子さんの成長と生活の安定にとって非常に大切です。理学療法(PT)では、体の柔らかさ(筋緊張低下)や、逆に筋肉の突っ張り(痙縮)にアプローチします。首すわりやお座りの練習、関節が硬くならないようなマッサージやストレッチを行うほか、歩行が難しい場合は座位保持装置や車椅子、バギー、立位台など、お子さんの体に合った福祉用具を作る際にも専門的なアドバイスを受けられます。適切な姿勢を保つことは、呼吸や食事をスムーズにするためにも大切です。
作業療法(OT)では、手先の感覚を養ったり、遊びを通じて外界への興味を引き出したりします。食事や着替えの介助方法など、日常生活をスムーズにするための工夫も学べます。言語聴覚療法(ST)では、言葉の理解を促すだけでなく、コミュニケーションの方法を探ります。言葉が出にくい場合でも、絵カードやスイッチ、視線入力装置などを使うことで意思疎通ができるようになることがあります。また、食べる機能(摂食嚥下)の訓練も行われ、飲み込みが難しい場合は食事の形態(とろみの調整など)や介助の姿勢について指導を受けます。

3. 栄養と呼吸の管理
摂食・嚥下管理
飲み込む力が弱く、口から十分に栄養が摂れない場合は、鼻からチューブを入れたり、お腹に小さな穴を開けて直接胃に栄養を入れる胃ろうを作ったりして、十分な栄養を確保します。胃ろうは、誤嚥のリスクを減らし、お子さんとご家族の食事時間の負担を軽くするための有効な手段です。
呼吸管理
筋緊張が弱いと呼吸をする力も弱くなることがあります。風邪を引いたときに痰が出しにくかったり、睡眠中に呼吸が浅くなったりすることがあるため、必要に応じて吸引器を使用したり、在宅酸素療法を行ったりします。
4. 整形外科的ケア
成長とともに、背骨が曲がる側弯症や、股関節の脱臼などが起きることがあります。定期的に整形外科を受診し、必要に応じて装具の使用や手術などを検討していきます。
似た名前の病気との違い|CDCBM6・滑脳症3型・H-ABC症候群
CDCBM5とよく似た名前の病気は、いずれも「チューブリン症」という同じ大きな枠組みに属していますが、原因となる遺伝子や脳の特徴には違いがあります。混同しやすい病名を整理しておきましょう。
| 病名 | 主な原因遺伝子 | 脳の主な特徴 |
|---|---|---|
| CDCBM5(本記事) | TUBB2A | 厚脳回・多小脳回、大脳基底核の異形成 |
| CDCBM6 | CDCBM5とは別の原因遺伝子 | 複合体の脳形成異常(詳細は個別記事を参照) |
| 滑脳症3型(LIS3) | TUBA1A | より広範な滑脳症(脳回の消失)を特徴とすることが多い |
| H-ABC症候群 | TUBB4A | 大脳基底核と小脳の萎縮に加え、脳の白質形成不全が中心 |
病名だけを見ると「複合体」「症候群」といった言葉が共通しているため混同しやすいのですが、実際にはそれぞれ原因遺伝子が異なる別々の疾患です。MRI所見だけで見分けることは難しく、前述のとおり遺伝学的検査による原因遺伝子の特定が診断の決め手になります。お子さんの診断名がCDCBM5で間違いないか不安な場合は、遺伝学的検査の結果報告書に記載された原因遺伝子名を、主治医や遺伝カウンセラーと一緒に確認してください。
ご家族が今できること|相談窓口と次のステップ
診断を受けた直後は、まず主治医や遺伝カウンセラーに相談しながら、療育や支援制度の窓口につながっていくことが最初の一歩になります。具体的にどこに相談すればよいのか、順番に整理します。
- 診断がついた病院の小児神経科・遺伝子診療科で、今後の経過観察の計画を確認する
- 臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングで、次のお子さんを考える際の相談も含めて話を聞く
- 地域の療育センターや児童発達支援事業所に、早期からの療育について相談する
- 同じ希少疾患の家族会やSNSのコミュニティで、他のご家族の体験に触れてみる
特に、療育や福祉サービスの制度は自治体によって窓口や名称が異なるため、まずは出生した病院のソーシャルワーカーや地域の保健センターに相談するとスムーズです。障害児支援の制度全体の概要は、こども家庭庁の障害児支援に関するページにまとめられています。ひとりで抱え込まず、医療者や支援の窓口を早めに頼ってください。
また、知的障害を伴う先天性疾患全般について幅広く知りたい場合は、知的障害はNIPTでわかるの?検査前に知っておきたいこともあわせてご覧ください。妊娠中の検査で分かることと分からないことの違いを整理しています。
よくある質問(FAQ)
Q. CDCBM5とTUBB2A関連脳形成異常は同じ病気ですか?
はい、同じ病気を指しています。CDCBM5は正式病名「脳皮質異形成と他の脳奇形を伴う複合体5型」の略称で、TUBB2A遺伝子の変異が原因であることから「TUBB2A関連脳形成異常」とも呼ばれます。どちらの呼び方も、医学論文や診療の現場で使われています。
Q. 親から遺伝した可能性はありますか?次の子にも起こりますか?
CDCBM5のほとんどのケースは、ご両親のどちらにも変異がない新生突然変異(de novo)によるものです。ご自身を責める必要はありません。ただし、ごくまれにご両親の生殖細胞の一部だけに変異がある「生殖細胞モザイク」を背景として、次のお子さんにも同じ変異が伝わる可能性が報告されています。次のお子さんを考える際の具体的な再発率は家族ごとに異なるため、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングで確認してください。
Q. MRIで脳の特徴が見つかったら、必ずTUBB2Aが原因ですか?
いいえ、断定はできません。他のチューブリン遺伝子(TUBA1A、TUBB2B、TUBB3など)でも似たような脳の形になることがあるためです。確定診断には、全エクソーム解析や脳奇形に関連する遺伝子パネル検査など、血液を用いた遺伝学的検査でTUBB2A遺伝子の変異を確認する必要があります。
Q. てんかんはどのように治療しますか?完全に止まりますか?
抗てんかん薬による治療が中心で、発作のタイプに合わせてバルプロ酸やレベチラセタムなど複数の薬が試されます。多くのお子さんで発作のコントロールが得られますが、中には複数の薬を使っても発作が止まりにくい難治性てんかんとなる場合もあります。発作の状況は主治医と定期的に確認しながら、治療方針を調整していくことになります。
Q. 発達の見通しはどの程度ですか?
報告されている症例には幅があり、重度の発達遅滞や知的障害を伴うことが一般的とされていますが、症状の重さや発達のペースはお子さんによって異なります。生まれてすぐの時点で将来の見通しをひとつに断定することは難しく、成長の経過を見ながら、その時々に合った療育やケアを組み立てていくことが大切です。
Q. 同じ「複合体」と名のつくCDCBM6とはどう違いますか?
CDCBM5とCDCBM6は、名前は似ていますが原因となる遺伝子が異なる別の疾患です。CDCBM5はTUBB2A遺伝子、CDCBM6は別の原因遺伝子によるもので、MRI所見だけで見分けることは難しく、遺伝学的検査による原因遺伝子の特定が診断の決め手になります。詳しくはCDCBM6の解説記事もあわせてご覧ください。
Q. 家族としてまず何をすればよいですか?
まずは診断がついた病院の小児神経科や遺伝子診療科で、今後の経過観察の計画を確認しましょう。あわせて、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングや、地域の療育センターへの相談を早めに始めることをお勧めします。制度面の窓口が分からないときは、出生した病院のソーシャルワーカーや地域の保健センターに聞いてみてください。
著者・監修
岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。
まとめ
脳皮質異形成と他の脳奇形を伴う複合体5型(CDCBM5)についての重要なポイントを振り返ります。
病気の本質
TUBB2A遺伝子の変異により、脳の形成段階で神経細胞の移動がうまくいかず、大脳皮質や基底核の構造に変化が生じる先天性の疾患です。
主な特徴
MRIでの脳のしわの異常(厚脳回、多小脳回など)や基底核の異常、重度の発達遅滞、てんかん、小頭症などが挙げられます。ただし症状の重さには個人差があります。
治療の方針
てんかん発作のコントロールと、リハビリテーションによる発達支援が治療の中心です。
原因
多くは新生突然変異によるもので、親のせいではありません。
ケアの要点
医療的なケアだけでなく、お子さんの「できること」や「好きなこと」に目を向け、心地よい生活環境を整えていきましょう。分からないことがあれば、遺伝カウンセリングや療育の窓口に早めに相談してください。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
