発達性およびてんかん性脳症31型(Developmental and epileptic encephalopathy 31)

医者

医師からDevelopmental and epileptic encephalopathy 31という非常に長く、難解な診断名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。

生まれたばかりの赤ちゃん、あるいは生後数ヶ月のお子様に、日本語の定まった呼び方もまだ浸透していないような難病の診断が下り、計り知れないショックと不安の中にいらっしゃることと思います。特に、この病気は世界的に見ても報告数がまだ少なく、希少疾患の一つに数えられるため、日本語で書かれた詳しい情報はインターネット上でもほとんど見当たりません。医師であっても、てんかんや遺伝の専門家でなければ詳しく知らないことも珍しくない疾患概念です。

この長い診断名を日本語に訳すと、発達性およびてんかん性脳症31型となります。医療現場では、頭文字をとってDEE31(ディー・イー・イー・サンジュウイチ)と呼ばれることが一般的です。

また、原因となる遺伝子の名前をとってDNM1関連脳症やDNM1関連てんかんと呼ばれることも増えています。

この病気は、生後間もない時期にてんかん発作が始まり、それとともに全体的な発達の遅れが見られるという特徴があります。その原因として、DNM1という特定の遺伝子に変化が起きていることが分かっています。

脳症という言葉や31型という数字に圧倒されてしまうかもしれませんが、この数字は発見された順番や遺伝子の種類を区別するための番号であり、単に重症度を表す数字ではありません。

また、原因が遺伝子にあることが分かったということは、これから起こりうることへの対策が立てやすくなり、お子さんに合った療育やケアのプランを考えるための地図を手に入れたということでもあります。

概要:どのような病気か

発達性およびてんかん性脳症31型(DEE31)は、生まれつきの遺伝子の変化によって、脳の神経細胞の働きに影響が出る疾患です。

まず、この発達性およびてんかん性脳症という病名グループの意味を理解することが大切です。

発達性とは、生まれ持った遺伝子の変化そのものが、脳の発達や成長に影響を与えていることを意味します。つまり、てんかん発作があるから発達が遅れるだけでなく、発作がなくても発達に課題が生じる体質であることを示しています。

てんかん性とは、頻繁なてんかん発作や、脳波の激しい乱れが、脳の機能や発達にさらなる悪影響を与えている状態を指します。

脳症とは、脳全体の働きに広範な影響が出ている状態を指す医学用語です。

つまり、DEE31は遺伝子の影響による発達の遅れと、てんかん発作による脳への負担の二つの要素が合わさって、発達や神経の症状が現れる病気です。

この31型は、DNM1(ディー・エヌ・エム・ワン)という遺伝子の変異によって引き起こされることが2014年頃の研究で明らかになりました。

DEE31は、数あるDEEの中でも比較的症状が重いタイプとして知られています。発作のコントロールが難しかったり、重度の発達の遅れを伴ったりすることが多いですが、その分、早期からの手厚いケアとサポートが必要とされます。

この病気の頻度は非常に稀で、10万人に1人よりも少ないと考えられています。しかし、近年の遺伝子解析技術の進歩により、原因不明のてんかんと診断されていたお子さんの中から、DNM1遺伝子の変異が見つかるケースが増えてきています。

主な症状

DEE31の症状は、特徴的なてんかん発作、重度の発達の遅れ、そして身体的な特徴の三つに大きく分けられます。お子さんによって症状の重さや出方は異なりますが、これまでに報告されている代表的な特徴について詳しく見ていきましょう。

1. てんかん発作

多くの患者さんにおいて、生後数ヶ月以内の乳児期早期にてんかん発作が始まります。早ければ生後まもなくから、遅くとも生後6ヶ月頃までには何らかの発作が見られることが一般的です。

発作のタイプ

発作の形は様々ですが、DEE31で最も特徴的なのはてんかん性スパズムと呼ばれる発作です。

これは、両手を広げてお辞儀をするような動作、あるいはカクンと頭を下げるような動作を、数秒おきに繰り返す発作です。シリーズ形成といって、一度始まると数分間にわたって何度も繰り返すのが特徴です。このタイプの発作が見られる場合、ウエスト症候群(点頭てんかん)という診断名がつけられることもあります。

そのほか、手足が突っ張って硬くなる強直発作や、体の一部がピクピク動く焦点発作、意識が曇って動作が止まる発作なども見られます。

レノックス・ガストー症候群への移行

成長とともに発作のタイプが変化することがあります。乳児期のウエスト症候群から、幼児期以降にレノックス・ガストー症候群と呼ばれる、複数の種類の難治性発作を持つてんかん症候群へ移行することもあります。

難治性

DEE31のてんかん発作は、一般的な抗てんかん薬が効きにくい難治性であることが多いです。複数の薬を組み合わせても発作を完全に止めることが難しい場合があり、発作の頻度を減らし、お子さんの苦痛を和らげ、生活の質を維持することを目標に治療が進められます。

2. 発達と神経の症状

発作と並んで、重度の発達の遅れが見られます。これは、発作によるダメージだけでなく、DNM1遺伝子の変異自体が脳の発達に影響しているためです。

重度の発達遅滞

首がすわる、目でものを追う、お座りをする、歩くといった運動面の発達と、あやすと笑う、言葉を理解するといった精神面の発達の両方が、一般的なペースよりもかなりゆっくりになります。

多くの場合、最重度の知的障害を伴います。言葉による会話は難しいことがほとんどですが、声のトーンや表情、全身の動きで快・不快などの感情を伝えることができるお子さんもいます。歩行に関しては、つかまり立ちや伝い歩きができるようになるお子さんもいれば、車椅子での生活が中心となるお子さんもおり、個人差があります。

筋緊張低下

赤ちゃんの頃は、体がふにゃふにゃとして柔らかい筋緊張低下が見られることが非常に多いです。抱っこした時にずっしりと重く感じたり、関節が柔らかすぎたりします。

成長とともに、逆に手足の筋肉が突っ張って硬くなる痙縮(けいしゅく)が見られるようになることもあります。

皮質視覚障害

目そのものの構造には問題がなくても、脳が映像を処理することが苦手なために、おもちゃを目で追わなかったり、視線が合いにくかったりすることがあります。これを皮質視覚障害といいます。見えていないように見えても、光や動くものには反応することがあります。

退行現象

発作が頻発している時期や、感染症などで体調を崩した時に、それまで出来ていたこと(例えば、笑顔を見せる、首がしっかりするなど)ができなくなってしまう退行という現象が見られることがあります。発作が落ち着くと、少しずつ回復することもあります。

3. その他の身体症状

DEE31のお子さんには、神経以外の身体的な課題も見られることがあります。

哺乳障害と摂食障害

生まれた直後から、おっぱいやミルクを飲む力が弱い哺乳障害が見られることがあります。また、離乳食が始まっても、食べ物を飲み込むのが苦手な嚥下障害が見られることがあります。

不随意運動

自分の意思とは関係なく体が動いてしまうことがあります。手足がくねくね動いたり、筋肉が勝手に収縮したりする症状です。

顔つきの特徴

DEE31に特有の顔つきというのは明確には定義されていませんが、おでこが傾斜している、目が大きいなどのお顔立ちの特徴が報告されることもあります。しかし、これらは非常に個人差があり、ご両親に似た可愛らしいお顔をしているお子さんがほとんどです。

原因

なぜ、てんかんが起きたり、発達が遅れたりするのでしょうか。その原因は、脳の神経細胞が情報を伝えるための「リサイクルシステム」の故障にあります。

DNM1遺伝子の役割

DEE31の原因は、第9番染色体にあるDNM1(ディー・エヌ・エム・ワン)という遺伝子の変異です。

この遺伝子は、ダイナミン1というタンパク質を作るための設計図です。

私たちの脳は、神経細胞同士が複雑なネットワークを作って情報をやり取りしています。神経細胞と神経細胞のつなぎ目であるシナプスという場所で、情報伝達物質というボールのような物質を受け渡すことで、信号が伝わります。

この情報伝達物質は、細胞の中でシナプス小胞という小さな袋に入って待機しています。信号が来ると、この袋が細胞の膜と融合して開き、中の物質を放出します。

ここで重要なのが、使い終わった袋を回収して、また使えるようにする作業です。これをエンドサイトーシスといいます。

一度開いてしまった膜を、再び袋の形にくびり切って回収し、新しい情報伝達物質を詰めるための空の袋としてリサイクルする必要があります。

ダイナミン1は、この「膜をくびり切って袋を回収する」ために不可欠なハサミのような役割をしているタンパク質です。

遺伝子の変化による影響

DNM1遺伝子に変異が起きると、このダイナミン1タンパク質がうまく作られなかったり、ハサミとしての機能が弱くなったりします。

すると、使い終わった袋を回収するリサイクル作業が追いつかなくなります。

結果として、次に投げるための情報のボール(シナプス小胞)が足りなくなってしまい、神経細胞同士の情報のやり取りがスムーズにいかなくなります。

特に、脳の中で興奮を抑えるブレーキ役の神経細胞などでこのリサイクルが滞ると、脳全体のバランスが崩れて過剰に興奮しやすくなり、難治性のてんかん発作が引き起こされます。

また、神経細胞同士のコミュニケーションは脳の発達そのものに必要不可欠であるため、これがうまくいかないことで、重度の発達遅滞が生じると考えられています。

遺伝について

多くのご家族が、親から遺伝したのか、妊娠中の生活に問題があったのかとご自身を責めてしまわれます。

しかし、DEE31のほとんどのケースは、新生突然変異(de novo変異)によるものです。

これは、ご両親の遺伝子には全く異常がなく、精子や卵子が作られる過程、あるいは受精した直後の細胞分裂の段階で、偶然にDNM1遺伝子に変化が起きたことを意味します。

つまり、ご両親のどちらかのせいで遺伝したわけではありません。また、妊娠中のお母さんの食事、お薬、ストレス、環境などが原因で起きるものでも決してありません。誰にでも起こりうる、生命の誕生における偶然の現象なのです。

診断と検査

診断は、症状の観察、脳波検査、画像検査、そして遺伝子検査を組み合わせて行われます。

1. 脳波検査

てんかん発作の診断や、脳の活動状態を調べるために不可欠な検査です。

DEE31のお子さんの脳波では、ヒプスアリスミアと呼ばれる点頭てんかんに特徴的な乱れた波形が見られることが非常に多いです。これは、脳全体がカオスな電気活動状態になっていることを示しています。

また、サプレッション・バーストと呼ばれる、脳波が平坦になる時期と激しい波が出る時期を交互に繰り返す重篤なパターンや、多焦点性スパイクといって脳のあちこちからてんかん波が出ている状態が見られることもあります。

2. 画像検査(MRI)

脳の形や構造を詳しく調べるためにMRI検査が行われます。

発症初期(生後数ヶ月)には、脳の形に明らかな異常は見られないことが多いです。しかし、発作が長く続いた後や、年齢が進んでくると、脳全体が少し萎縮して小さくなっている様子や、髄鞘化(神経の伝達速度を上げるための被覆)が遅れている様子が見られることがあります。これは、病気の進行や脳の発達の遅れを反映していると考えられます。

3. 遺伝学的検査

確定診断のためには、血液を採取してDNAを調べる検査が必要です。

DEE31は症状や脳波、MRI所見だけでは、他の発達性てんかん性脳症(例えばSTXBP1異常症やKCNQ2脳症など)と区別がつかないことが多いです。

そのため、近年普及してきた次世代シーケンサーという技術を用いた全エクソーム解析(WES)や、てんかん関連遺伝子パネル検査が行われます。

これは、遺伝子のうちタンパク質を作る重要な部分を網羅的にすべて解読する検査です。この網羅的な遺伝子検査を行って初めてDNM1遺伝子の変異が見つかり、診断に至るケースがほとんどです。

治療と管理

現在の医学では、遺伝子の変化そのものを修復して病気を根本から治す治療法はまだ確立されていません。

しかし、それぞれの症状に対して適切な治療(対症療法)とサポート(療育)を行うことで、お子さんの苦痛を和らげ、持っている力を最大限に引き出し、生活の質(QOL)を高めることは十分に可能です。

1. てんかんの治療

てんかん発作を減らすために、抗てんかん薬による治療を行います。

DNM1変異に対する特効薬というものはまだ確立されていませんが、発作のタイプに合わせて様々なお薬が試されます。

バルプロ酸、クロバザム、レベチラセタム、トピラマート、ゾニサミドなどが使われることが多いです。

点頭てんかん(ウエスト症候群)のパターンを示す場合は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)療法という注射の治療や、ビガバトリンなどの特殊な薬剤が検討されることもあります。

また、お薬でコントロールが難しい場合は、ケトン食療法という、脂肪分を多くし糖質を極端に少なくした特殊な食事療法が選択肢に入ることがあります。DEE31の患者さんでケトン食療法が有効だったという報告もあります。

2. 発達支援と療育(リハビリテーション)

早期からの療育が、お子さんの成長と生活の安定にとって非常に重要です。

理学療法(PT)

体の柔らかさ(筋緊張低下)や、逆に筋肉の突っ張り(痙縮)に対してアプローチします。

関節が硬くならないようなマッサージやストレッチを行ったり、楽な姿勢が取れるようにクッションを調整したりします。

座位保持装置(座るための椅子)や車椅子、バギー、足底板(インソール)など、お子さんの体に合った福祉用具を作る際にも専門的なアドバイスを受けます。適切な姿勢を保つことは、呼吸や食事をスムーズにするためにも大切です。

作業療法(OT)

手先の感覚を養ったり、光や音などの刺激を使った遊びを通じて外界への興味を引き出したりします。また、入浴や着替えの介助方法など、日常生活をスムーズにするための工夫を学びます。

言語聴覚療法(ST)

言葉の理解を促すだけでなく、コミュニケーションの方法(スイッチやおもちゃ、絵カードなど)を探ります。また、食べる機能(摂食嚥下)の訓練も行います。飲み込みが難しい場合は、食事の形態(とろみの調整など)や介助の姿勢について指導を受けます。

3. 栄養と生活面の管理

摂食・嚥下管理

飲み込む力が弱く、口から十分に栄養が摂れない場合は、鼻からチューブを入れたり、お腹に小さな穴を開けて直接胃に栄養を入れる胃ろうを作ったりして、十分な栄養を確保します。胃ろうは、誤嚥のリスクを減らし、お子さんとご家族の食事時間のストレスを軽減するための有効な手段です。十分な栄養は、脳の発達や感染症への抵抗力をつけるために不可欠です。

呼吸管理

呼吸が弱い場合や、痰が出しにくい場合は、吸引器を使用したり、吸入を行ったりします。夜間の呼吸状態を見守るためにモニターを使用することもあります。

感染症対策

筋緊張が弱く、呼吸の力が弱いお子さんは、風邪をこじらせて肺炎になりやすい傾向があります。

手洗いなどの基本的な感染対策に加え、流行期には人混みを避ける、インフルエンザなどの予防接種を計画的に受けるなどの対策が大切です。

まとめ

発達性およびてんかん性脳症31型(DEE31)についての重要なポイントを振り返ります。

病気の本質

DNM1遺伝子の変異により、神経細胞が情報を伝える物質をリサイクルする仕組み(エンドサイトーシス)に不具合が生じ、脳のネットワーク形成や機能に影響が出る先天性の疾患です。

主な特徴

乳児期早期に始まる難治性てんかん(点頭てんかんなど)、重度の発達遅滞、筋緊張低下、皮質視覚障害などが特徴です。

てんかん

難治性であることが多いですが、ACTH療法や様々なお薬の調整、ケトン食療法などでコントロールを目指します。

原因

多くは突然変異によるもので、親のせいではありません。

ケアの要点

発作のコントロールだけでなく、リハビリ、栄養管理、呼吸管理、感染症予防など、全身をトータルでケアすることが大切です。

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