概要
進行性家族性肝内胆汁うっ滞症2型(Progressive familial intrahepatic cholestasis type 2・PFIC2)は、肝臓で作られた胆汁が流れにくくなり、赤ちゃんのころから黄疸や強いかゆみが現れて、肝臓の障害が少しずつ進んでいく病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、ABCB11 遺伝子の変化が原因となります。
原因
ABCB11 遺伝子は、BSEP(胆汁酸を汲み出すポンプ)というたんぱく質の設計図です。BSEPは、肝臓の細胞から胆汁のなかへ胆汁酸を送り出すはたらきをしています。
この遺伝子の両方に変化があるとポンプがはたらかず、胆汁酸が肝臓の細胞のなかにたまります。たまった胆汁酸が細胞を傷つけ、炎症と線維化が進んで、肝硬変へと至ります。
症状
- 生後数か月までに現れる黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
- 眠れないほどの強いかゆみ
- 体重が増えにくく、成長がゆっくりになる
- 脂肪や脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収が悪くなる
- 肝臓や脾臓が大きくなる
- 進行すると肝硬変、門脈圧亢進症、肝不全に至る
- 幼いうちに肝細胞がんを発症することがある
検査・診断
血液検査(ビリルビン、胆汁酸、γ-GTP)、腹部の超音波検査、肝生検などで胆汁うっ滞の原因を調べます。胆汁うっ滞があるのに γ-GTPが正常か低い ことがこの病気の特徴で、3型(ABCB4が原因)と見分ける手がかりになります。ABCB11 遺伝子の解析によって確定します。
治療
- ウルソデオキシコール酸の内服
- かゆみをやわらげる薬(回腸胆汁酸トランスポーター阻害薬など)
- 脂溶性ビタミンの補充と栄養の管理
- 胆汁分流術(体外胆汁瘻造設術など)
- 肝硬変や肝不全に進んだ場合は肝移植
肝細胞がんのリスクがあるため、定期的に画像検査と血液検査を受けて経過をみていくことが大切です。
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる ABCB11 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、ABCB11 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
キャリアスクリーニングテスト(228種類)
常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。
検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。
専門的な解説
PFIC2は ABCB11(2q31.1)がコードする bile salt export pump(BSEP, ABCB11)の機能喪失により生じる。BSEPは肝細胞の毛細胆管側膜に局在するATP依存性トランスポーターで、胆汁酸の胆汁中への排泄における律速段階を担う。
BSEPの欠損により肝細胞内に胆汁酸が蓄積し、ミトコンドリア障害とアポトーシスを介して進行性の肝細胞障害をきたす。血清γ-GTPが正常〜低値を示す点はPFIC1(ATP8B1)と共通し、γ-GTP高値を示すPFIC3(ABCB4)との鑑別点となる。
肝生検の免疫染色でBSEPの毛細胆管側膜における発現消失を認めることが診断の支持所見となる。PFIC2は幼少期からの肝細胞癌および胆管癌のリスクが高いことが知られ、定期的なサーベイランスを要する。また、軽症型として良性反復性肝内胆汁うっ滞2型(BRIC2)や妊娠性肝内胆汁うっ滞との対立遺伝子疾患の関係が報告されている。
治療はウルソデオキシコール酸、部分的外胆汁瘻造設術(PEBD)などの胆汁分流術、近年は回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害薬が用いられる。進行例では肝移植が適応となるが、移植後にBSEPに対する同種抗体による再発が報告されている。’),
よくある質問
Q. この病気は遺伝しますか?
A. 常染色体潜性(劣性)遺伝の形式で受け継がれます。ご両親がどちらもキャリア(保因者)である場合、お子さまが発症する確率は4分の1です。
Q. 検査で調べることはできますか?
A. できます。原因となる ABCB11 遺伝子を、エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)で調べられます。またキャリアスクリーニングテストで、ご夫婦がキャリアかどうかを事前に確認できます。
Q. かゆみはどうすればやわらぎますか?
A. ウルソデオキシコール酸の内服や、かゆみをやわらげる薬(回腸胆汁酸トランスポーター阻害薬など)が用いられます。効果が十分でない場合には、胆汁の流れを変える手術(胆汁分流術)が検討されます。
Q. 肝移植が必要になりますか?
A. 肝硬変や肝不全に進んだ場合には、肝移植が検討されます。早い時期から治療と経過観察を続けることで、進行をゆるやかにできる場合があります。
Q. がんのリスクがあると聞きました。
A. 幼いうちに肝細胞がんを発症することが報告されています。そのため、定期的に画像検査と血液検査を受けて経過をみていくことが大切です。
参考文献
- Strautnieks SS, Bull LN, Knisely AS, et al. A gene encoding a liver-specific ABC transporter is mutated in progressive familial intrahepatic cholestasis. Nat Genet. 1998;20(3):233-238.
- Jansen PL, Strautnieks SS, Jacquemin E, et al. Hepatocanalicular bile salt export pump deficiency in patients with progressive familial intrahepatic cholestasis. Gastroenterology. 1999;117(6):1370-1379.
- Knisely AS, Strautnieks SS, Meier Y, et al. Hepatocellular carcinoma in ten children under five years of age with bile salt export pump deficiency. Hepatology. 2006;44(2):478-486.
- Bull LN, Thompson RJ. Progressive Familial Intrahepatic Cholestasis. Clin Liver Dis. 2018;22(4):657-669.
- OMIM #601847 Cholestasis, progressive familial intrahepatic, 2
