概要
ムコ多糖症IVA型(モルキオA症候群)は、体のなかで不要になった糖の鎖(ムコ多糖)を分解できず、とくに骨と軟骨にたまっていく病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、GALNS 遺伝子の変化が原因となります。
低身長と骨格の変形が主な症状で、知的な発達は保たれます。首の骨(頸椎)が不安定になりやすく、脊髄が圧迫されるのを防ぐことが、この病気の管理でもっとも大切な点です。
原因
GALNS 遺伝子は、N-アセチルガラクトサミン-6-硫酸スルファターゼという酵素の設計図です。この酵素は、ライソゾームでケラタン硫酸とコンドロイチン-6-硫酸を分解しています。
酵素がはたらかないとケラタン硫酸が分解されず、骨・軟骨・角膜・心臓の弁にたまります。骨や軟骨は体の骨組みを作る組織なので、成長とともに変形が目立ってきます。
症状
- 著しい低身長(成人身長は100〜140cm程度のことが多い)
- 胸が前に突き出る変形(鳩胸)、脊柱の後弯・側弯
- 頸椎(歯突起)の低形成による首の不安定さ → 脊髄の圧迫
- がに股・X脚、関節がゆるい(他のムコ多糖症と異なり関節が硬くならない)
- 角膜の濁り、難聴
- 心臓の弁の異常
- 呼吸機能の低下、睡眠時無呼吸
- 知的な発達は保たれます
検査・診断
尿中のケラタン硫酸の増加を調べ、白血球や培養した皮膚の細胞でGALNSの酵素活性を測定して診断します。GALNS 遺伝子の解析によって確定します。骨のX線検査(多発性異骨症)も診断の助けになります。
治療
- 酵素補充療法(エロスルファーゼ アルファ/ビミジム®の点滴。国内でも使用できます)
- 頸椎の評価と、必要に応じた後頭骨頸椎固定術(脊髄の圧迫を防ぐため、もっとも重要な治療のひとつです)
- 脊柱・下肢の変形に対する整形外科的手術
- 呼吸のサポート(睡眠時無呼吸に対するCPAPなど)
- 定期的な頸椎MRI、心エコー、聴力検査、眼科の診察
- 頸部に負担のかかる運動や、頸部を強く後屈させる姿勢を避ける
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる GALNS 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、GALNS 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
キャリアスクリーニングテスト(228種類)
常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。
検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。
専門的な解説
ムコ多糖症IVA型は GALNS(16q24.3)の両アレル変異により生じる。N-acetylgalactosamine-6-sulfate sulfatase の欠損によりケラタン硫酸およびコンドロイチン-6-硫酸が蓄積する。
他のムコ多糖症と異なり、関節は拘縮せずむしろ弛緩性を示す点、中枢神経の実質病変を欠き知能が正常である点が特徴的である。骨系統病変(dysostosis multiplex)が前景に立ち、成人身長は著しく低い。
歯突起低形成(odontoid hypoplasia)による環軸椎不安定性は本症の最重要合併症で、軽微な外傷や頸部後屈で脊髄損傷をきたしうる。麻酔・挿管時の頸部操作はとくに危険であり、周術期には fiberoptic 挿管など頸部を動かさない方法が推奨される。
治療はエロスルファーゼ アルファによる酵素補充療法で、6分間歩行距離の改善が第3相試験で示されている。ただし骨・軟骨への到達性は限定的で、整形外科的介入との併用が必要である。造血幹細胞移植の有効性については議論がある。
よくある質問
Q. 首の骨に注意が必要と聞きました。
A. はい。首の骨(歯突起)が育ちにくく、首が不安定になりやすい病気です。脊髄が圧迫されると重い障害が残るため、定期的なMRIと、必要に応じた固定術が大切です。
Q. 知的な発達に影響はありますか?
A. この型では知的な発達は保たれます。学業や就労をされている方が多くいらっしゃいます。
Q. スポーツはできますか?
A. 首に負担のかかる運動(マット運動、柔道、飛び込みなど)は避けてください。どこまで可能かは担当の先生とご相談ください。
Q. 手術のときの注意はありますか?
A. 首を動かさない挿管方法が必要です。必ず病名と頸椎の状態を麻酔科の先生にお伝えください。
Q. 治療法はありますか?
A. 酵素を点滴で補う「酵素補充療法」が国内でも使用できます。あわせて整形外科的な治療を組み合わせます。
参考文献
- Tomatsu S, Montaño AM, Oikawa H, et al. Mucopolysaccharidosis type IVA (Morquio A disease): clinical review and current treatment. Curr Pharm Biotechnol. 2011;12(6):931-945.
- Hendriksz CJ, Burton B, Fleming TR, et al. Efficacy and safety of enzyme replacement therapy with BMN 110 (elosulfase alfa) for Morquio A syndrome (mucopolysaccharidosis IVA): a phase 3 randomised placebo-controlled study. J Inherit Metab Dis. 2014;37(6):979-990.
- Solanki GA, Martin KW, Theroux MC, et al. Spinal involvement in mucopolysaccharidosis IVA (Morquio-Brailsford or Morquio A syndrome): presentation, diagnosis and management. J Inherit Metab Dis. 2013;36(2):339-355.
- Regier DS, Oetgen M, Tanpaiboon P. Mucopolysaccharidosis Type IVA. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle.
- OMIM #253000 Mucopolysaccharidosis type IVA
