G6PD欠損症による溶血性貧血(ソラマメ中毒)

Hemolytic anemia, G6PD deficient (favism), G6PD

概要

G6PD欠損症は、赤血球を酸化のストレスから守る酵素が足りないために、特定の薬や食べ物、感染をきっかけに赤血球が壊れてしまう(溶血)病気です。X連鎖という形式で遺伝し、G6PD 遺伝子の変化が原因となります。

世界でもっとも多い酵素の欠損症で、世界に約4億人いると推定されます。ふだんは無症状で、引き金となるものを避けていれば通常の生活が送れます。ソラマメで溶血を起こすことから「ソラマメ中毒(favism)」とも呼ばれます。

原因

G6PD 遺伝子は、グルコース-6-リン酸脱水素酵素の設計図です。この酵素は、細胞のなかでNADPHという物質を作り出し、酸化のストレスから細胞を守っています。

赤血球にはNADPHを作る他の経路がないため、この酵素が足りないと、酸化ストレスを受けたときに赤血球の膜が壊れて溶血が起こります。X染色体にある遺伝子なので、男性に症状が出やすいのが特徴です。

症状

  • ふだんは無症状
  • 引き金にさらされた1〜3日後に起こる急性溶血:顔色が悪くなる、だるさ、黄疸、濃い茶色の尿
  • 新生児期の重い黄疸(核黄疸のリスク)
  • まれに、引き金がなくても慢性的に溶血が続く型がある
  • 引き金となるもの:ソラマメ、感染症、一部の薬(プリマキンなどの抗マラリア薬、サルファ剤、ニトロフラントイン、ラスブリカーゼ、ナフタレンなど)

検査・診断

血液検査でG6PDの酵素活性を測定します。溶血の直後は若い赤血球が増えて酵素活性が高めに出るため、発作から2〜3か月あけて測り直すことがありますG6PD 遺伝子の解析によって確定します。

治療

  • 引き金となるものを避けることが最大の治療です(薬の一覧をお渡しし、受診のたびに提示していただきます)
  • 溶血が起きたときは安静と輸液、重い場合は輸血
  • 新生児期の黄疸には光線療法、必要に応じて交換輸血
  • ソラマメおよびソラマメを含む食品を避ける

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる G6PD 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、G6PD 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

この疾患はX連鎖で遺伝します。お母さまが保因者の場合、息子さんの2分の1が発症し、娘さんの2分の1が保因者になります。キャリアスクリーニングテストでは、お母さまが保因者かどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

G6PD欠損症は G6PD(Xq28)の変異によるX連鎖疾患で、400種類以上の変異が報告されている。WHOは残存酵素活性により class I〜V に分類する(class I:慢性非球状赤血球性溶血性貧血、class II:10%未満、class III:10〜60%)。

G6PDはペントースリン酸経路の律速酵素で、NADPHを介してグルタチオンを還元型に保つ。赤血球は解糖系以外にNADPH産生系を持たないため、酸化ストレス下でヘモグロビンが変性しHeinz小体を形成、血管内・血管外溶血をきたす。

X連鎖のため半接合体の男性で顕性化するが、女性ヘテロ接合体でもライオニゼーションの偏りにより溶血しうる。マラリア流行地域で高頻度に分布し、ヘテロ接合体がマラリアに抵抗性を示すこと(バランス多型)が知られる。日本人では頻度は低い。

臨床上とくに重要なのは ラスブリカーゼ(腫瘍崩壊症候群に使用)およびプリマキン・タフェノキン(マラリア治療)投与前のG6PD活性測定である。これらは重篤な溶血やメトヘモグロビン血症を起こしうる。

よくある質問

Q. ふだんの生活で気をつけることは?

A. ソラマメを避けること、そして新しい薬を処方されるときに必ずこの病気であることを伝えることです。避けるべき薬の一覧をお持ちいただくと安心です。

Q. 茶色い尿が出ました。

A. 溶血が起きているサインの可能性があります。すぐに受診してください。

Q. 女性でも症状が出ますか?

A. X染色体にある遺伝子のため男性に多いのですが、女性でも溶血を起こすことがあります。

Q. 子どもに遺伝しますか?

A. X連鎖遺伝です。お母さまが保因者の場合、息子さんの2分の1が発症し、娘さんの2分の1が保因者になります。お父さまが患者の場合、娘さんは全員保因者になります。

Q. 普通に生活できますか?

A. はい。引き金となるものを避けていれば、ほとんどの方が通常の生活を送れます。

参考文献

  • Beutler E. G6PD deficiency. Blood. 1994;84(11):3613-3636.
  • Cappellini MD, Fiorelli G. Glucose-6-phosphate dehydrogenase deficiency. Lancet. 2008;371(9606):64-74.
  • Luzzatto L, Ally M, Notaro R. Glucose-6-phosphate dehydrogenase deficiency. Blood. 2020;136(11):1225-1240.
  • WHO Working Group. Glucose-6-phosphate dehydrogenase deficiency. Bull World Health Organ. 1989;67(6):601-611.
  • OMIM #300908 Hemolytic anemia due to G6PD deficiency
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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