概要
レーバー先天黒内障2型(LCA2)は、生まれたときから、あるいは生後まもなくから重い視力障害が現れる網膜の病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、RPE65 遺伝子の変化が原因となります。
この病気は、世界で初めて遺伝子治療が承認された網膜疾患です。国内でも遺伝子治療薬が使用できるようになり、視機能の改善が期待できる場合があります。
原因
RPE65 遺伝子は、網膜色素上皮という細胞ではたらく酵素の設計図です。この酵素は、光を受け取ったあとのビタミンA由来の物質(レチノイド)を、再び光を感じられる形に戻す「視覚サイクル」の中心を担っています。
この酵素がはたらかないと、光を感じるための材料が再生されず、光を受け取れなくなります。網膜の細胞は最初のうち生き残っているため、早い時期に治療すれば機能を取り戻せる可能性がある点が重要です。
症状
- 生後数か月からの著しい視力低下
- 夜盲(暗いところで極端に見えにくい):早期から現れる特徴的な症状
- 眼振(目が細かくゆれる)
- 瞳孔の反応が弱い
- 目を指で押す・こする動作(指眼徴候)
- 網膜電図(ERG)で反応がほとんど記録されない
- 加齢とともに視野が狭くなり、視力もさらに低下する
検査・診断
乳児期からの視力障害、眼振、網膜電図(ERG)の平坦化から診断します。レーバー先天黒内障には30近い原因遺伝子があるため、どの遺伝子が原因かを調べることが治療方針に直結します。RPE65 遺伝子の解析によって2型と確定します。
治療
- ボレチゲン ネパルボベク(ラクスターナ®):網膜下に注射する遺伝子治療薬。両アレルにRPE65変異があり、生存している網膜細胞が十分にある方が対象です
- ロービジョンケア(拡大読書器、遮光眼鏡、白杖の訓練など)
- 定期的な眼科の診察による経過観察
- 教育面での支援(点字、音声教材など)
- 治療の対象になるかどうかを確かめるため、遺伝学的検査を早めに受けることが勧められます
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる RPE65 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、RPE65 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
キャリアスクリーニングテスト(228種類)
常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。
検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。
専門的な解説
レーバー先天黒内障2型は RPE65(1p31.2)の両アレル変異による。RPE65は網膜色素上皮に発現する all-trans-retinyl ester isomerohydrolase で、視覚サイクルにおいて all-trans-retinyl ester を 11-cis-retinol へ異性化する。
本症では11-cis-retinal の供給が絶たれ、視細胞は形態的に保たれながら機能を失う。この「細胞は生きているが機能していない」という病態が、遺伝子補充療法の理論的根拠となった。
ボレチゲン ネパルボベク(voretigene neparvovec、AAV2ベクター)は2017年にFDA、2018年にEMA、日本でも2023年に承認された。第3相試験では multi-luminance mobility test(MLMT)で有意な改善が示され、暗所での移動能力が向上した。適応には両アレル変異の確認と、十分な生存視細胞(OCTでの網膜厚)が必要である。
RPE65変異は、より軽症の網膜色素変性(RP20)としても表現される。LCAは遺伝的異質性が高く(CEP290、GUCY2D、CRB1、AIPL1 など)、治療可能な型を同定する意義から遺伝学的検査が必須である。
よくある質問
Q. 遺伝子治療が受けられると聞きました。
A. RPE65 の両方の遺伝子に変化があり、網膜の細胞が十分に残っている方が対象です。まず遺伝学的検査と網膜の状態の評価が必要になります。
Q. 治療で視力はどのくらい戻りますか?
A. 暗いところでの移動のしやすさが改善したという報告があります。効果には個人差があり、視力が完全に戻るわけではありません。
Q. いつ治療を受けるのがよいですか?
A. 網膜の細胞が残っているうちが望ましいとされます。早めに眼科と遺伝学的検査をお受けください。
Q. レーバー先天黒内障には種類があるのですか?
A. はい。30近い原因遺伝子が知られています。治療の対象になるのは RPE65 が原因の型ですので、遺伝子を調べることが大切です。
Q. 次の子も同じ病気になりますか?
A. 常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がどちらもキャリア(保因者)の場合、妊娠のたびに4分の1の確率です。
参考文献
- Marlhens F, Bareil C, Griffoin JM, et al. Mutations in RPE65 cause Leber congenital amaurosis. Nat Genet. 1997;17(2):139-141.
- Maguire AM, Simonelli F, Pierce EA, et al. Safety and efficacy of gene transfer for Leber congenital amaurosis. N Engl J Med. 2008;358(21):2240-2248.
- Russell S, Bennett J, Wellman JA, et al. Efficacy and safety of voretigene neparvovec (AAV2-hRPE65v2) in patients with RPE65-mediated inherited retinal dystrophy: a randomised, controlled, open-label, phase 3 trial. Lancet. 2017;390(10097):849-860.
- Kumaran N, Moore AT, Weleber RG, Michaelides M. Leber congenital amaurosis/early-onset severe retinal dystrophy: clinical features, molecular genetics and therapeutic interventions. Br J Ophthalmol. 2017;101(9):1147-1154.
- OMIM #204100 Leber congenital amaurosis 2
