カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI欠損症

Carnitine Palmitoyltransferase I Deficiency, CPT1A

概要

カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI欠損症(CPT1欠損症)は、脂肪をエネルギーに変えるために必要な「入り口」の酵素がはたらかない病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、CPT1A 遺伝子の変化が原因となります。

食事がとれないときや感染症のときに、低血糖の発作を起こします。日本では新生児マススクリーニングの対象で、絶食を避けることで発作をよく防げます

原因

CPT1A 遺伝子は、肝臓ではたらくカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼIという酵素の設計図です。この酵素は、長鎖脂肪酸をカルニチンと結びつけ、ミトコンドリアのなかへ運び込む「入り口」の役目をしています。

この酵素がはたらかないと、絶食時に脂肪をエネルギーとして使えず、肝臓でケトン体も作れないため、重い低血糖になります。

症状

  • 低ケトン性低血糖の発作(意識がもうろうとする、けいれん、昏睡)
  • 肝臓が大きくなる、肝機能の異常(急性肝不全に至ることがある)
  • 発作は感染症、嘔吐や下痢、長時間の絶食をきっかけに起こります
  • 心筋症や骨格筋の症状は伴いません(CPT2欠損症との違いです)
  • 発作を起こしていないときは無症状で、発達も正常です
  • 母親が妊娠中に急性脂肪肝やHELLP症候群を起こすことがある

検査・診断

新生児マススクリーニングで、遊離カルニチン(C0)が高く長鎖アシルカルニチンが低い(C0/(C16+C18)比の上昇)ことから疑われます。CPT1A 遺伝子の解析や、培養した皮膚の細胞での酵素活性の測定によって確定します。

治療

  • 絶食を避ける(年齢に応じた間隔で必ず食事をとる。夜間に生でんぷんを用いることがあります)
  • シックデイ対応:食事がとれないときは早めに受診し、ブドウ糖の点滴を受ける
  • 長鎖脂肪を控え、中鎖脂肪酸(MCT)を用いた食事療法
  • 発作時はブドウ糖輸液
  • カルニチンの補充は原則行いません(この病気ではカルニチンはむしろ高値です)

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる CPT1A 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、CPT1A 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

CPT1欠損症は CPT1A(11q13.3)の両アレル変異による。CPT1Aは肝臓・腎臓に発現するアイソフォームで、ミトコンドリア外膜において長鎖アシルCoAをアシルカルニチンへ変換し、カルニチンシャトルの律速段階を担う。

アシルカルニチン分析では遊離カルニチン(C0)高値と長鎖アシルカルニチン低値という、他の脂肪酸酸化異常症と逆のパターンを示す。C0/(C16+C18) 比が診断指標となる。

CPT1Aは筋肉には発現しない(筋肉はCPT1Bを使う)ため、横紋筋融解症や心筋症を伴わない点が、CPT2欠損症やVLCAD欠損症との重要な鑑別点である。臨床像は肝型(低血糖発作、肝腫大、Reye様症候群)に限られる。

北米先住民・イヌイットに高頻度のp.Pro479Leu変異が知られ、乳児突然死との関連が議論されている。母体がヘテロ接合体である場合の妊娠合併症(AFLP、HELLP症候群)も報告されている。

よくある質問

Q. どんなときに気をつければよいですか?

A. 食事がとれないとき、熱が出たとき、嘔吐や下痢が続くときです。早めに糖分をとり、難しければ受診してください。

Q. 夜間の絶食も避けるべきですか?

A. 年齢によって安全に空けられる時間が決まっています。夜間に生でんぷんを使う方法が指示されることもあります。担当の先生の指示に従ってください。

Q. カルニチンを飲む必要はありますか?

A. この病気では、カルニチンはむしろ高くなります。原則として補充は行いません。

Q. 運動しても大丈夫ですか?

A. 筋肉の症状は伴わない病気なので、通常の運動は可能です。ただし長時間の空腹を伴う運動は避けてください。

Q. 発作を起こさなければ普通に成長しますか?

A. はい。発作を防げていれば、発達は正常に経過することが多いとされています。

参考文献

  • IJlst L, Mandel H, Oostheim W, et al. Molecular basis of hepatic carnitine palmitoyltransferase I deficiency. J Clin Invest. 1998;102(3):527-531.
  • Bennett MJ, Santani AB. Carnitine Palmitoyltransferase 1A Deficiency. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle.
  • Gessner BD, Gillingham MB, Birch S, et al. Evidence for an association between infant mortality and a carnitine palmitoyltransferase 1A genetic variant. Pediatrics. 2010;126(5):945-951.
  • OMIM #255120 CPT deficiency, hepatic, type IA
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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