概要
バーター症候群1型は、腎臓で塩分を再吸収するしくみがうまくはたらかず、血液中のカリウムが不足する病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、SLC12A1 遺伝子の変化が原因となります。
ループ利尿薬(フロセミド)を飲み続けているのと同じ状態になる病気です。1型は「新生児型(出生前型)」で、妊娠中の羊水過多と早産、生まれてからの多尿・脱水として現れます。
原因
SLC12A1 遺伝子は、腎臓のヘンレ係蹄上行脚にあるNKCC2(Na-K-2Cl共輸送体)の設計図です。この輸送体は、尿から塩分を体に戻す役目をしており、ループ利尿薬の標的でもあります。
はたらかないと大量の塩分と水分が尿へ失われ、脱水と電解質の異常が起こります。カルシウムも一緒に失われるため、腎臓に石灰がたまりやすくなります。
症状
- 妊娠中の羊水過多と早産(胎児の多尿によります)
- 生後まもなくからの多尿・脱水・体重が増えない
- 低カリウム血症、代謝性アルカローシス
- 高カルシウム尿と腎石灰化(ギッテルマン症候群との違いです)
- 塩分を欲しがる、発熱をくり返す
- 血圧は正常か低め
- 成長の遅れ
検査・診断
妊娠中の羊水過多と、生後の多尿・低カリウム血症・代謝性アルカローシスから疑います。尿中カルシウムの増加と腎臓の超音波検査での石灰化が特徴です。SLC12A1 遺伝子の解析によって確定し、他の型(2〜5型)と区別します。
治療
- 水分と電解質(ナトリウム・カリウム)の十分な補給
- 非ステロイド性抗炎症薬(インドメタシンなど):尿量を減らし、成長を改善します
- カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトンなど)
- 成長と腎機能の定期的な確認
- 腎石灰化の経過観察
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる SLC12A1 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、SLC12A1 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
キャリアスクリーニングテスト(228種類)
常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。
検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。
専門的な解説
バーター症候群1型は SLC12A1(15q21.1)の両アレル変異による。NKCC2はヘンレ係蹄太い上行脚(TAL)に局在し、ループ利尿薬の標的である。機能喪失により慢性的なフロセミド投与状態となる。
TALでのNaCl再吸収障害は、傍細胞路を介したCa2+・Mg2+再吸収の駆動力(lumen-positive電位)も失わせるため、高カルシウム尿と腎石灰化をきたす。この点がギッテルマン症候群(低カルシウム尿)との決定的な鑑別点である。
1型・2型(KCNJ1)は出生前型(antenatal Bartter syndrome)を呈し、胎児多尿による羊水過多と早産を特徴とする。3型(CLCNKB)はより軽症で幅広い年齢での発症、4型(BSND)は感音難聴を伴う。
プロスタグランジンE2の産生亢進が病態を修飾しており、インドメタシンなどのCOX阻害薬が尿量減少と成長改善に有効である。長期予後は慢性腎臓病への進展が問題となる。
よくある質問
Q. 妊娠中に羊水が多いと言われました。
A. この病気では胎児の尿が多くなるため、羊水過多になることがあります。原因の特定には出生後の検査が必要です。
Q. ギッテルマン症候群とどう違うのですか?
A. バーター症候群では尿へのカルシウム排泄が多く、腎臓に石灰がたまりやすい点が異なります。発症も早く、新生児期から症状が出ます。
Q. 塩分は控えるべきですか?
A. いいえ。塩分と水分が尿へ失われるため、十分に補っていただく必要があります。
Q. インドメタシンはなぜ使うのですか?
A. この病気では腎臓でプロスタグランジンが多く作られており、これを抑えることで尿量が減り、成長が改善します。
Q. 将来、腎臓のはたらきはどうなりますか?
A. 腎石灰化や脱水のくり返しにより、腎機能が低下することがあります。定期的な検査を続けることが大切です。
参考文献
- Simon DB, Karet FE, Hamdan JM, et al. Bartter syndrome, hypokalaemic alkalosis with hypercalciuria, is caused by mutations in the Na-K-2Cl cotransporter NKCC2. Nat Genet. 1996;13(2):183-188.
- Konrad M, Nijenhuis T, Ariceta G, et al. Diagnosis and management of Bartter syndrome: executive summary of the consensus and recommendations from the ERKNet Working Group for Tubular Disorders. Kidney Int. 2021;99(2):324-335.
- Seyberth HW, Schlingmann KP. Bartter- and Gitelman-like syndromes: salt-losing tubulopathies with loop or DCT defects. Pediatr Nephrol. 2011;26(10):1789-1802.
- OMIM #601678 Bartter syndrome type 1
