チロシン血症II型

Tyrosinemia Type II, TAT

概要

チロシン血症II型(リヒナー・ハンハルト症候群)は、アミノ酸のひとつであるチロシンを分解できず、血液中にたまってしまう病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、TAT 遺伝子の変化が原因となります。

目と手足の皮膚に症状が出るのが特徴で、I型のような重い肝臓の障害はありません。チロシンとフェニルアラニンを控えた食事によって、症状はよく改善します

原因

TAT 遺伝子は、肝臓ではたらくチロシンアミノトランスフェラーゼという酵素の設計図です。この酵素は、チロシンを分解する経路の最初の段階を担当しています。

酵素がはたらかないとチロシンが血液中にたまり、角膜や皮膚のなかでチロシンの結晶が作られて、炎症を起こすと考えられています。

症状

  • 眼の症状(多くは最初に現れます):涙が出る、まぶしい、目が赤い、痛み。樹枝状角膜潰瘍(ヘルペス性角膜炎とまちがえられることがあります)
  • 皮膚の症状:手のひらと足の裏に、痛みを伴う角化した水疱やびらん
  • 知的な発達の遅れ(治療をしない場合に、一部の方でみられます)
  • 肝臓と腎臓の障害はありません(I型との大きな違いです)

検査・診断

血液中のチロシンの著明な高値(通常1,000 μmol/Lを超えます)で診断します。尿中にチロシン代謝物が増えます。I型と異なりスクシニルアセトンは検出されませんTAT 遺伝子の解析によって確定します。

治療

  • チロシンとフェニルアラニンを制限した食事療法(治療の中心です。眼と皮膚の症状はよく改善します)
  • 専用の治療用ミルク・フォーミュラの使用
  • 眼科での治療(角膜の症状に対して)
  • 血中チロシン濃度を目標範囲に保つための定期的な検査
  • 栄養士による食事の管理

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる TAT 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、TAT 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

チロシン血症II型(Richner-Hanhart症候群)は TAT(16q22.2)の両アレル変異による。細胞質型チロシンアミノトランスフェラーゼの欠損により、チロシン異化の初発段階が障害される。

血中チロシンは著明高値(1,200〜2,500 μmol/L)を示す。I型(FAH欠損)と異なりスクシニルアセトンは産生されず、肝腎障害を伴わない。この点が診断と予後の両面で決定的である。

眼病変は角膜上皮内のチロシン結晶沈着による偽樹枝状角膜炎で、単純ヘルペス角膜炎と誤診されやすい。抗ウイルス薬に反応しない両側性の樹枝状角膜病変では本症を疑う。掌蹠の有痛性角化症も特徴的である。

食事療法により血中チロシンを500 μmol/L以下に保てば、眼・皮膚症状は数週間で改善する。神経学的転帰も食事療法の開始時期に依存すると考えられている。

よくある質問

Q. 目の症状が最初に出ると聞きました。

A. はい。涙目、まぶしさ、目の痛みが最初の症状であることが多く、乳幼児期から現れます。ヘルペスの角膜炎とまちがえられることがあります。

Q. 食事療法で治りますか?

A. チロシンとフェニルアラニンを控えることで、眼と皮膚の症状は数週間でよく改善します。継続することが大切です。

Q. 肝臓は大丈夫ですか?

A. この型では肝臓と腎臓の障害はありません。I型(肝臓の障害が主体の型)とは異なる病気です。

Q. 手足の痛みはどうすればよいですか?

A. 食事療法によって改善します。角化した部分のケアも並行して行います。

Q. 知的な発達に影響しますか?

A. 治療をしない場合に、一部の方で発達の遅れが報告されています。早く食事療法を始めることが大切です。

参考文献

  • Natt E, Kida K, Odievre M, et al. Point mutations in the tyrosine aminotransferase gene in tyrosinemia type II. Proc Natl Acad Sci U S A. 1992;89(19):9297-9301.
  • Macsai MS, Schwartz TL, Hinkle D, et al. Tyrosinemia type II: nine cases of ocular signs and symptoms. Am J Ophthalmol. 2001;132(4):522-527.
  • Chakrapani A, Gissen P, McKiernan P. Disorders of Tyrosine Metabolism. In: Saudubray JM, et al., eds. Inborn Metabolic Diseases. Springer; 2016.
  • OMIM #276600 Tyrosinemia, type II
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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