大理石骨病 常染色体潜性1型

Osteopetrosis, autosomal recessive 1, TCIRG1

概要

大理石骨病 常染色体潜性1型(悪性大理石骨病)は、古くなった骨を溶かして作り替える細胞(破骨細胞)がはたらかず、骨が硬く厚くなりすぎる病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、TCIRG1 遺伝子の変化が原因となります。

骨は硬いのにもろくて折れやすく、また骨のなかの空間が狭くなるため、血液を作る場所が失われ、神経が圧迫されます。造血幹細胞移植によって治療できる病気で、早期の診断がきわめて重要です。

原因

TCIRG1 遺伝子は、破骨細胞にあるプロトンポンプ(V-ATPase)の一部(a3サブユニット)の設計図です。破骨細胞は、このポンプで酸を出して骨を溶かしています。

ポンプがはたらかないと骨を溶かせず、新しく作られる骨だけが積み重なって、骨が異常に厚く硬くなります。その結果、骨髄の空間が狭くなり、頭蓋骨の孔を通る神経が圧迫されます。

症状

  • 汎血球減少(貧血、出血しやすい、感染しやすい):骨髄の空間が失われるため
  • 肝臓や脾臓が大きくなる(骨髄の代わりに血液を作るため)
  • 視神経の圧迫による視力障害・失明(早期から起こります)
  • 顔面神経麻痺、難聴
  • 骨がもろく、折れやすい
  • 歯が生えにくい、顎の骨の感染(骨髄炎)
  • 低カルシウム血症、けいれん
  • 治療をしない場合、多くは10歳までに命にかかわります

検査・診断

X線検査で全身の骨が著しく硬く白く写る(骨硬化)ことから診断します。血液検査で汎血球減少を確認し、TCIRG1 遺伝子の解析によって確定します。TCIRG1 は悪性大理石骨病の原因の約50%を占めます。

治療

  • 造血幹細胞移植:正常な破骨細胞を供給する唯一の根治的治療です。できるだけ早く行うことが重要で、視力障害が進む前の実施が望まれます
  • 輸血、感染症の予防と治療
  • カルシウム・ビタミンDの管理
  • 視神経の圧迫に対する減圧術が検討されることがあります
  • 定期的な眼科・耳鼻科・血液検査による評価
  • 移植で骨髄の症状は改善しますが、すでに生じた視神経の障害は戻りません

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる TCIRG1 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、TCIRG1 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

悪性(乳児型)大理石骨病は TCIRG1(11q13.2)の両アレル変異により生じ、本症の約50%を占める。TCIRG1は破骨細胞の波状縁に局在するV型H+-ATPaseのa3サブユニットをコードし、骨吸収窩への酸分泌を担う。

破骨細胞は存在するが機能しない(osteoclast-rich型)ため、骨基質の吸収が停止し骨硬化をきたす。骨髄腔の狭小化により髄外造血と汎血球減少が生じ、頭蓋孔の狭窄が視神経萎縮・顔面神経麻痺・難聴を招く。

造血幹細胞移植(HSCT)がドナー由来の破骨細胞を供給する唯一の根治療法である。生後3か月以内の移植で予後が良好とされ、視神経障害は不可逆であるため、視力が保たれているうちの移植が推奨される

鑑別として、CLCN7変異による中間型・常染色体顕性型(Albers-Schönberg病)、RANKL(TNFSF11)変異による osteoclast-poor 型(この型はHSCTが無効)がある。RANKL型では移植の適応がないため、遺伝子診断が治療方針を決定づける。

よくある質問

Q. 移植はいつ行うのがよいですか?

A. できるだけ早くです。生後3か月以内の移植で予後が良好とされ、視神経の障害が進む前の実施が望まれます。

Q. 視力は移植で戻りますか?

A. すでに生じた視神経の障害は戻りません。だからこそ、視力が保たれているうちの移植が大切です。

Q. 骨が硬いのに折れやすいのはなぜですか?

A. 古い骨が作り替えられないため、硬くても質の悪い骨になり、かえって折れやすくなります。

Q. すべての大理石骨病で移植ができますか?

A. いいえ。原因となる遺伝子によっては移植が効かない型(RANKL型)があります。遺伝子検査で確かめることが治療方針を決めます。

Q. 次の子も同じ病気になりますか?

A. 常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がどちらもキャリア(保因者)の場合、妊娠のたびに4分の1の確率です。

参考文献

  • Frattini A, Orchard PJ, Sobacchi C, et al. Defects in TCIRG1 subunit of the vacuolar proton pump are responsible for a subset of human autosomal recessive osteopetrosis. Nat Genet. 2000;25(3):343-346.
  • Sobacchi C, Schulz A, Coxon FP, et al. Osteopetrosis: genetics, treatment and new insights into osteoclast function. Nat Rev Endocrinol. 2013;9(9):522-536.
  • Orchard PJ, Fasth AL, Le Rademacher J, et al. Hematopoietic stem cell transplantation for infantile osteopetrosis. Blood. 2015;126(2):270-276.
  • Stark Z, Savarirayan R. Osteopetrosis. Orphanet J Rare Dis. 2009;4:5.
  • OMIM #259700 Osteopetrosis, autosomal recessive 1
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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