概要
シアリドーシスは、体のなかで不要になった糖たんぱく質を分解できず、細胞のなかにたまっていく病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、NEU1 遺伝子の変化が原因となります。
症状の重さによってI型(軽症・思春期以降に発症)とII型(重症・乳児期から発症)に分けられます。眼底に見られる「チェリーレッドスポット」が診断の手がかりになります。
原因
NEU1 遺伝子は、ライソゾームではたらくα-N-アセチルノイラミニダーゼ(シアリダーゼ)という酵素の設計図です。この酵素は、糖たんぱく質の末端についているシアル酸を切り離す役目をしています。
酵素がはたらかないと、シアル酸のついた糖鎖(シアリルオリゴ糖)が細胞のなかにたまり、神経や骨、目などのはたらきをそこないます。
症状
- I型(チェリーレッドスポット・ミオクローヌス症候群):10〜30代に発症。視力低下、ミオクローヌス(体がぴくつく不随意運動)、けいれん、歩行のふらつき。知能は保たれることが多い
- II型:乳児期から発症。特徴的な顔つき、骨の変形(多発性異骨症)、肝脾腫、発達の遅れ、難聴
- 眼底のチェリーレッドスポット(両型に共通する特徴的所見)
- II型の重症型では、胎児水腫として現れることがある
検査・診断
尿中のシアリルオリゴ糖の増加を調べ、培養した皮膚の細胞でノイラミニダーゼの酵素活性を測定して診断します。眼底検査でのチェリーレッドスポットが重要な手がかりです。NEU1 遺伝子の解析によって確定します。
治療
- 根本的に治す方法は確立していません
- ミオクローヌスとけいれんに対する抗てんかん薬(クロナゼパム、レベチラセタム、バルプロ酸など)
- 理学療法・作業療法
- 視力低下に対するロービジョンケア
- II型では、呼吸・栄養の管理と合併症の予防
- 定期的な神経学的評価
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる NEU1 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、NEU1 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
キャリアスクリーニングテスト(228種類)
常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。
検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。
専門的な解説
シアリドーシスは NEU1(6p21.33)の両アレル変異による。NEU1がコードするライソゾーム性シアリダーゼは、カテプシンA(PPCA、CTSA遺伝子産物)およびβ-ガラクトシダーゼと多酵素複合体を形成してはじめて安定に機能する。
このためCTSA変異ではNEU1活性も二次的に低下し、ガラクトシアリドーシスという別の疾患を生じる。シアリドーシスとガラクトシアリドーシスの鑑別には、両酵素活性の測定が必要である。
I型(正常型シアリドーシス)は残存活性があり、青年期発症のミオクローヌスてんかんと視力障害を呈する。進行性ミオクローヌスてんかんの鑑別診断に必ず含めるべき疾患である。II型(異型)は残存活性が乏しく、乳児期から骨系統病変と発達遅滞を伴う。
ミオクローヌスは薬物治療抵抗性のことが多く、QOLを大きく損なう。バルプロ酸、クロナゼパム、レベチラセタム、ピラセタムの併用が試みられる。
よくある質問
Q. チェリーレッドスポットとは何ですか?
A. 眼底の中心部が赤いさくらんぼのように見える所見です。この病気を含む一部のライソゾーム病に共通してみられ、診断の手がかりになります。
Q. I型とII型はどう違うのですか?
A. 酵素の残っているはたらきの量が違います。I型は思春期以降に発症し知能は保たれることが多く、II型は乳児期から発症して骨や発達にも影響します。
Q. ミオクローヌスは治りますか?
A. 薬が効きにくいことが多いのですが、複数の薬を組み合わせて症状をやわらげることを目指します。
Q. ガラクトシアリドーシスと言われることもあるのですか?
A. よく似た病気ですが、原因となる遺伝子が違います(CTSA)。酵素の検査で区別します。
Q. 知的な発達に影響しますか?
A. I型では保たれることが多く、II型では影響します。型によって経過が大きく異なります。
参考文献
- Bonten E, van der Spoel A, Fornerod M, et al. Characterization of human lysosomal neuraminidase defines the molecular basis of the metabolic storage disorder sialidosis. Genes Dev. 1996;10(24):3156-3169.
- Seyrantepe V, Poupetova H, Froissart R, et al. Molecular pathology of NEU1 gene in sialidosis. Hum Mutat. 2003;22(5):343-352.
- Canafoglia L, Robbiano A, Pareyson D, et al. Expanding sialidosis spectrum by genome-wide screening: NEU1 mutations in adult-onset myoclonus. Neurology. 2014;82(22):2003-2006.
- OMIM #256550 Sialidosis, type I / #256550 type II
