概要
ガラクトシアリドーシスは、ライソゾームという細胞のなかの分解工場で、2つの酵素が同時にはたらかなくなるために、糖たんぱく質がたまっていく病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、CTSA 遺伝子の変化が原因となります。
日本人に比較的多く報告されている病気で、とくに成人型(若年・成人型)の報告が日本に集中しています。眼底のチェリーレッドスポットが診断の手がかりになります。
原因
CTSA 遺伝子は、カテプシンA(保護タンパク質/PPCA)の設計図です。このたんぱく質自体も酵素ですが、それ以上に大切な役目として、ノイラミニダーゼとβ-ガラクトシダーゼという2つの酵素を守り、安定させるはたらきをしています。
カテプシンAがはたらかないと、この2つの酵素も一緒に不安定になって失われます。そのため、シアリドーシスとGM1ガングリオシドーシスの両方の性質をあわせ持つ症状が現れます。
症状
- 早期乳児型:胎児水腫、全身のむくみ、肝脾腫、骨の変形、心臓の障害。予後は不良です
- 後期乳児型:特徴的な顔つき、骨の変形、肝脾腫、心臓弁の異常、軽度の発達の遅れ
- 若年・成人型(日本人に多い):10〜30代に発症。ミオクローヌス、けいれん、歩行のふらつき、視力低下、血管角化腫(皮膚の赤い点)、軽度〜中等度の知的障害
- 眼底のチェリーレッドスポット
- 難聴
検査・診断
尿中のシアリルオリゴ糖の増加を調べ、培養した皮膚の細胞でノイラミニダーゼとβ-ガラクトシダーゼの両方の活性が低下していることを確認します。この「両方の低下」がこの病気の決め手です。CTSA 遺伝子の解析によって確定します。
治療
- 根本的に治す方法は確立していません
- ミオクローヌスとけいれんに対する抗てんかん薬
- 造血幹細胞移植が試みられた報告がありますが、効果は限定的です
- 理学療法・作業療法、ロービジョンケア
- 心臓・骨・聴力の定期的な評価
- 早期乳児型では、呼吸・栄養の管理と合併症の予防
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる CTSA 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、CTSA 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
キャリアスクリーニングテスト(228種類)
常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。
検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。
専門的な解説
ガラクトシアリドーシスは CTSA(20q13.12)の両アレル変異による。CTSAがコードするカテプシンA(protective protein/cathepsin A, PPCA)は、NEU1(ノイラミニダーゼ)とGLB1(β-ガラクトシダーゼ)と高分子複合体を形成し、両酵素を分解から保護するシャペロン様の機能を持つ。
したがってCTSA欠損ではノイラミニダーゼとβ-ガラクトシダーゼの二次的な複合欠損が生じ、シアリドーシスとGM1ガングリオシドーシスの中間的な表現型をとる。二酵素同時低下の確認が診断の要である。
臨床型は早期乳児型・後期乳児型・若年成人型に分けられる。若年成人型は日本人症例が世界の報告の大半を占め、日本人特有のスプライス変異(c.746+3A>G、いわゆるJapanese founder mutation)の関与が知られている。
若年成人型では、進行性ミオクローヌスてんかん、小脳失調、血管角化腫、チェリーレッドスポットを呈する。血管角化腫はファブリー病でもみられるため鑑別を要する。
よくある質問
Q. シアリドーシスとどう違うのですか?
A. 原因となる遺伝子が違います。ガラクトシアリドーシスでは、2つの酵素が同時に低下するのが特徴で、酵素の検査で区別できます。
Q. 日本人に多いと聞きました。
A. はい。とくに若年・成人型は、日本人の報告が世界の大半を占めています。日本人に特有の遺伝子変化が知られています。
Q. 皮膚に赤い点が出ています。
A. 血管角化腫といい、この病気の特徴のひとつです。ファブリー病でもみられるため、検査で区別します。
Q. 治療法はありますか?
A. 根本的な治療は確立していません。ミオクローヌスやけいれんに対する薬で、症状をやわらげることを目指します。
Q. 次の子も同じ病気になりますか?
A. 常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がどちらもキャリア(保因者)の場合、妊娠のたびに4分の1の確率です。
参考文献
- Galjart NJ, Gillemans N, Harris A, et al. Expression of cDNA encoding the human “protective protein” associated with lysosomal beta-galactosidase and neuraminidase: homology to yeast proteases. Cell. 1988;54(6):755-764.
- Takano T, Shimmoto M, Fukuhara Y, et al. Galactosialidosis: clinical and molecular analysis of 19 Japanese patients. Brain Dysfunct. 1991;4:271-280.
- Caciotti A, Catarzi S, Tonin R, et al. Galactosialidosis: review and analysis of CTSA gene mutations. Orphanet J Rare Dis. 2013;8:114.
- OMIM #256540 Galactosialidosis
