概要
β-マンノシドーシスは、体のなかで不要になった糖たんぱく質を分解できず、細胞のなかにたまっていく病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、MANBA 遺伝子の変化が原因となります。
きわめてまれな病気で、世界でも報告例は限られています。症状の幅が広く、知的障害と難聴が中心ですが、成人になってから軽い症状で見つかる方もいます。
原因
MANBA 遺伝子は、ライソゾームではたらくβ-マンノシダーゼという酵素の設計図です。この酵素は、糖たんぱく質の分解の最後の段階で、マンノースを切り離す役目をしています。
酵素がはたらかないと、小さな糖鎖(二糖)が細胞のなかにたまります。α-マンノシドーシスに比べて、たまる物質が小さく、症状が軽いことが多いと考えられています。
症状
- 知的な発達の遅れ(軽度〜重度まで幅があります)
- 難聴
- ことばの発達の遅れ
- 血管角化腫(皮膚の赤い点)がみられることがある
- くり返す感染症
- 行動の問題(多動、攻撃性など)
- 顔つきの特徴は目立たないことが多い(他のオリゴ糖蓄積症との違いです)
- 骨の変形は軽度か認めない
検査・診断
尿中のマンノースを含む二糖の増加を調べ、白血球や培養した皮膚の細胞でβ-マンノシダーゼの酵素活性を測定して診断します。MANBA 遺伝子の解析によって確定します。症状が非特異的なため、診断が遅れやすい病気です。
治療
- 根本的に治す方法は確立していません
- 補聴器による聴覚の支援
- 療育・教育面での支援、言語療法
- 感染症の予防と早期治療
- 行動の問題に対する支援
- 定期的な聴力検査と発達の評価
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる MANBA 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、MANBA 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
キャリアスクリーニングテスト(228種類)
常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。
検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。
専門的な解説
β-マンノシドーシスは MANBA(4q24)の両アレル変異による。ライソゾーム性β-マンノシダーゼは、N結合型糖鎖の分解の最終段階で Man-β(1,4)-GlcNAc 二糖を加水分解する。
ヒトでの報告例は世界で数十例にとどまるきわめてまれな疾患である。ヤギやウシでは重篤な神経疾患として知られるが、ヒトの表現型は概して軽く、この種差は蓄積物質の性状の違いによると考えられている。
臨床像は非特異的で、知的障害・難聴・言語発達遅滞が中心である。α-マンノシドーシスに比べ、顔貌の特徴・骨系統病変・肝脾腫を欠くことが多く、これが診断の遅れにつながる。原因不明の知的障害と難聴の組み合わせでは鑑別に加えるべきである。
血管角化腫の合併が報告されており、ファブリー病、ガラクトシアリドーシス、フコシドーシスと共通する所見である。治療法は確立しておらず、対症療法と支援が中心となる。
よくある質問
Q. どんなきっかけで見つかりますか?
A. 知的な発達の遅れと難聴があり、原因がはっきりしないときに、尿の検査や酵素の検査で見つかることがあります。
Q. α-マンノシドーシスとどう違うのですか?
A. 原因となる酵素が違います。β-マンノシドーシスのほうが、顔つきの特徴や骨の変形が目立たず、症状が軽いことが多いとされます。
Q. 治療法はありますか?
A. 根本的な治療は確立していません。補聴器や療育など、症状に応じた支援が中心になります。
Q. 皮膚に赤い点があります。
A. 血管角化腫といい、この病気でみられることがあります。ほかの病気でもみられるため、検査で確かめます。
Q. 次の子も同じ病気になりますか?
A. 常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がどちらもキャリア(保因者)の場合、妊娠のたびに4分の1の確率です。
参考文献
- Alkhayat AH, Kraemer SA, Leipprandt JR, et al. Human beta-mannosidase cDNA characterization and first identification of a mutation associated with human beta-mannosidosis. Hum Mol Genet. 1998;7(1):75-83.
- Bedilu R, Nummy KA, Cooper A, et al. Variable clinical presentation of lysosomal beta-mannosidosis in patients with null mutations. Mol Genet Metab. 2002;77(4):282-290.
- Sabourdy F, Labauge P, Stensland HM, et al. A MANBA mutation resulting in residual beta-mannosidase activity associated with severe leukoencephalopathy: a possible pseudodeficiency variant. BMC Med Genet. 2009;10:84.
- OMIM #248510 Mannosidosis, beta
