常染色体潜性原発性小頭症17型

Primary Autosomal Recessive Microcephaly 17, CIT

概要

常染色体潜性原発性小頭症17型は、生まれつき頭が小さく(小頭症)、脳、とくに大脳皮質が十分に大きくならないために、知的な発達に影響が出る病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、CIT 遺伝子の変化が原因となります。

「原発性」とは、脳の作られ方そのものに原因があるという意味です。感染症や酸素不足など、あとから加わった原因による小頭症とは区別されます。脳の形は保たれたまま全体が小さいのが特徴で、進行性に悪くなる病気ではありません。

原因

CIT 遺伝子は、脳が作られる時期に、神経のもとになる細胞(神経前駆細胞)が分裂するときのはたらきに関わるたんぱく質の設計図です。

胎児の脳では、神経前駆細胞が正確に分裂をくり返すことで、必要な数の神経細胞が作られます。この遺伝子に変化があると分裂がうまくいかず、作られる神経細胞の数が少なくなるため、大脳皮質が小さくなります。

CIT(シトロンキナーゼ)は、細胞分裂の最後に細胞が2つに分かれる段階(細胞質分裂)で、くびれを作るはたらきをしています。この型では症状が重く、小脳の低形成を伴うことが報告されています。

症状

  • 生まれたときからの小頭症(頭囲が標準より著しく小さい。−3SD以下が目安)
  • 知的障害(軽度から重度まで幅がありますが、多くは軽度〜中等度です)
  • ことばの発達の遅れ
  • 脳の構造そのものは保たれている(脳回の形は正常か、やや単純化する程度)
  • けいれん(伴わないことも多い)
  • 身長・体重は正常なことが多い
  • 顔つきに大きな特徴はなく、進行性の悪化もありません

検査・診断

頭囲の計測(出生時から−3SD以下が目安)と頭部MRIによる評価を行います。感染症(TORCH)、代謝性疾患、染色体異常など、ほかの原因による小頭症を除外することが大切です。原因遺伝子が18以上知られているため、CIT 遺伝子を含む遺伝学的検査によって常染色体潜性原発性小頭症17型と確定します。

治療

  • 根本的に治す方法は確立していません
  • 療育・教育面での支援(早期からの介入が有効です)
  • 言語療法、作業療法
  • けいれんがある場合は抗てんかん薬
  • 定期的な発達の評価と、成長の記録
  • ご家族への支援と、次のお子さまについての遺伝カウンセリング

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる CIT 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、CIT 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

常染色体潜性原発性小頭症17型(MCPH)は CIT の両アレル変異により生じる。MCPHは頭囲−3SD以下(多くは−4〜−7SD)の先天性小頭症と非進行性の知的障害を特徴とし、脳の構築は概ね保たれる。

責任遺伝子産物の大半は中心体・紡錘体極・キネトコアに局在する。胎生期の神経前駆細胞では、分裂軸の向きが「対称分裂(前駆細胞を増やす)」と「非対称分裂(神経細胞を作る)」を決める。中心体機能の異常により分裂軸の制御が破綻すると、前駆細胞プールが早期に枯渇し、産生される神経細胞数が減少して大脳皮質が小さくなる。

CIT(12q24.23、citron rho-interacting kinase)は細胞質分裂の分裂溝で中央体(midbody)の形成と最終的な分離を制御する。欠損により細胞質分裂の失敗と多核化・アポトーシスが生じる。ラットのflathead変異体のオルソログで、MCPH17は重症で、小脳低形成・脳幹低形成を伴う「microcephaly with cerebellar hypoplasia」の表現型をとり、予後不良である。

MCPHはヒトの脳容積の進化を理解する手がかりとしても注目され、ASPMやMCPH1には霊長類系統での正の選択の痕跡が報告されている。臨床的には、頭部MRIで脳の構築が保たれる点が、滑脳症・多小脳回・小頭症を伴う脳形成異常(MCPH以外)との鑑別点である。

よくある質問

Q. 進行して悪くなりますか?

A. 進行性の病気ではありません。生まれつき脳が小さいことによる症状で、時間とともに悪化していくものではありません。

Q. 知的な発達はどのくらいですか?

A. 軽度から重度まで幅がありますが、多くは軽度〜中等度とされています。早くから療育を続けることで、できることを増やしていけます。

Q. けいれんは起こりますか?

A. 起こる方と起こらない方がいます。この病気では、てんかんを伴わないことも少なくありません。

Q. なぜ遺伝子を調べるのですか?

A. 18以上の原因遺伝子が知られており、型によって合併症や経過がわずかに異なります。また、次のお子さまについて考えるうえでも役立ちます。

Q. 小脳も小さいと言われました。

A. この型では、大脳だけでなく小脳の低形成を伴うことが報告されています。バランスの障害を伴うことがあり、理学療法での支援を行います。

参考文献

  • Li H, Bielas SL, Zaki MS, et al. Biallelic Mutations in Citron Kinase Link Mitotic Cytokinesis to Human Primary Microcephaly. Am J Hum Genet. 2016;99(2):501-510.
  • Woods CG, Bond J, Enard W. Autosomal recessive primary microcephaly (MCPH): a review of clinical, molecular, and evolutionary findings. Am J Hum Genet. 2005;76(5):717-728.
  • Jayaraman D, Bae BI, Walsh CA. The Genetics of Primary Microcephaly. Annu Rev Genomics Hum Genet. 2018;19:177-200.
  • Faheem M, Naseer MI, Rasool M, et al. Molecular genetics of human primary microcephaly: an overview. BMC Med Genomics. 2015;8 Suppl 1:S4.
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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