概要
レーバー先天黒内障12型は、生まれたときから、あるいは生後まもなくから強い視力障害があらわれる網膜の病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、RD3(1q32.3)遺伝子の変化が原因となります。
レーバー先天黒内障は、生まれつきの重い視覚障害の原因としてもっとも多い遺伝性の網膜疾患で、およそ3万人から8万人に1人とされています。原因となる遺伝子は30種類近く知られており、どの遺伝子かによって、進行の速さ・眼底の見え方・治療の可能性が異なります。
レーバー先天黒内障12型では、非常にまれな型で、生後まもなくからの強い視力障害を示します。GUCY2Dのはたらきが間接的に失われるため、1型とよく似た経過をとります。
原因
RD3 は、GUCY2D(1型の原因遺伝子)を視細胞の正しい場所へ運ぶためのたんぱく質です。
目の奥にある網膜には、光を感じる「視細胞」が並んでいます。視細胞が光を感じるためには、①ビタミンAを材料にした色素を用意すること、②光を受けた信号を電気の信号に変えること、③信号を送ったあと元の状態に戻ること、そして④これらに必要な部品を細胞の先端まで運ぶことが必要です。レーバー先天黒内障は、このいずれかの段階がうまくいかないことで起こります。
お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。
症状
- 生後まもなくからの強い視力障害:目が合わない、動くものを目で追わないことで気づかれます
- 眼球のふるえ(眼振):生後2〜3か月ごろから現れます
- 光への瞳の反応が乏しい
- 目を指で押す・こするしぐさ(眼指徴候):この病気に特徴的な行動です
- まぶしさを強く感じる(羞明)、または暗いところで見えにくい(夜盲)
- 遠視が強いことが多い
- 眼底の変化:初期には目立たず、経過とともに色素沈着や萎縮が現れます
知的発達や全身の状態は、多くの場合ふつうに保たれます。ただし、原因遺伝子によっては腎臓や脳の症状を伴う症候群の一部として現れることがあるため、全身の評価も行います。
検査・診断
網膜電図(ERG)で網膜の反応が著しく低下または記録できないことが、診断の決め手になります。光干渉断層計(OCT)で網膜の層構造を、眼底検査で色素沈着や萎縮の有無を確認します。確定診断は遺伝学的検査で行い、レーバー先天黒内障12型では RD3 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。
原因遺伝子を確定することには、大きな意味があります。進行の見通しが分かること、遺伝カウンセリングに必要なこと、そして治療の対象になるかどうかが遺伝子によって決まるためです。
治療
多くの型では、現時点で視力を回復させる治療は確立していません。ただし、原因遺伝子によっては治療の選択肢があります。
- RPE65遺伝子による型(2型)に対しては、国内でも遺伝子治療が承認されています。他の遺伝子による型は現時点で対象になりません
- 複数の遺伝子について、遺伝子補充療法や薬物療法の臨床試験が進められています
- ロービジョンケア:拡大読書器、遮光眼鏡、白杖の訓練、点字や音声教材
- 就学・就労に向けた環境の調整と、視覚特別支援学校などとの連携
- 屈折異常(強い遠視)に対する眼鏡の処方
- 定期的な眼科受診による経過の確認
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる RD3 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、RD3 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
キャリアスクリーニングテスト(228種類)
常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。
検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。
専門的な解説
レーバー先天黒内障(LCA)は、生後1年以内に発症する重度の網膜ジストロフィーと定義され、早期発症重症網膜ジストロフィー(EOSRD)と連続した疾患概念をなす。原因遺伝子は病態機序から、①視覚サイクル(RPE65、LRAT、RDH12)、②光伝達(GUCY2D、AIPL1)、③繊毛内輸送(CEP290、SPATA7、RPGRIP1、TULP1、LCA5、IQCB1)、④視細胞の形態形成(CRB1、CRX)、⑤代謝(NMNAT1、IMPDH1)に大別できる。この分類は、治療可能性を考えるうえで実際的な意味をもつ。
RD3(1q32.3)は195アミノ酸の小さなたんぱく質で、グアニル酸シクラーゼ(GUCY2D/GUCY2F)と結合して小胞体からの搬出と外節への輸送を仲介し、同時にその活性を抑制する。RD3欠損ではGUCY2Dが外節に到達できず、結果としてLCA1と共通の生化学的帰結をもたらす。rd3マウスは古典的な網膜変性モデルとして知られる。ヒトでの報告例は限られ、重症のLCAとして記載されている。
鑑別としては、先天停止性夜盲、無虹彩症、皮質性視覚障害、全身症状を伴う繊毛病(ジュベール症候群=CEP290、シニア・ローケン症候群=IQCB1/NPHP1、バルデー・ビードル症候群)が重要である。CEP290やIQCB1による症例では、後年に腎障害が顕在化しうるため、診断時から腎機能のフォローを組み込む。
よくある質問
Q. 視力はどのくらい残りますか。
A. 原因となる遺伝子と変化の種類によって大きく異なります。光を感じる程度にとどまる方から、拡大鏡を使って文字を読める方までさまざまです。見通しについては、原因遺伝子が分かったうえで眼科の専門医にご相談ください。
Q. 目をこするしぐさが気になります。
A. 眼指徴候と呼ばれ、この病気に特徴的な行動です。目を押すことで光の感覚が得られるためと考えられています。強くこすり続けると眼球や眼窩に影響することがあるため、眼科で相談しながら、別の刺激で気をそらす工夫をすることがあります。
Q. 知的な発達に影響はありますか。
A. 多くの場合、知的発達そのものには影響しません。ただし、見えにくさが発達の機会を減らすことがあるため、早期からの視覚支援と療育が大切です。
Q. 1型と同じ治療が使えますか。
A. 1型で研究されている治療をそのまま使えるとは限りません。この型ではGUCY2Dが運ばれないことが問題のため、別の方法が必要と考えられています。研究段階の情報は主治医にご確認ください。
Q. 次のお子さまへの影響はありますか。
A. ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。正確な見通しは遺伝カウンセリングでご確認ください。
参考文献
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