概要
骨形成不全症VI型は、骨がもろく、わずかな力でも折れやすくなる病気(骨形成不全症)のひとつです。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、SERPINF1(17p13.3)遺伝子の変化が原因となります。
骨形成不全症の大部分は、骨の柱となる1型コラーゲンそのものの遺伝子(COL1A1・COL1A2)の変化により、親から子へ受け継がれる形(常染色体顕性遺伝)で起こります。一方、全体の1割ほどは、コラーゲンを仕上げたり骨をつくったりする周辺のはたらきの異常によって起こり、これらはご両親がキャリアであることで発症する常染色体潜性遺伝の形をとります。骨形成不全症VI型はこの潜性型にあたります。
骨形成不全症VI型では、生まれたときには骨折がなく、生後6か月から2歳ごろになって骨折が始まるのが特徴です。白目の青みはみられず、骨の組織を調べると「魚のうろこ」のような石灰化されていない層が重なった像がみられます。他の型と違い、ビスホスホネート製剤の効きが乏しいことが知られています。
原因
SERPINF1(PEDF)は、骨のなかでできあがったコラーゲンの土台にカルシウムを沈着させる(石灰化する)はたらきを調節するたんぱく質です。コラーゲンそのものをつくる遺伝子ではありません。
骨は、コラーゲンでできた「鉄筋」に、カルシウムという「コンクリート」が沈着してできた鉄筋コンクリートのような構造をしています。鉄筋そのものが足りない・質が悪い場合も、コンクリートの沈着がうまくいかない場合も、骨はもろくなります。
お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。ご両親には骨の症状がないことがほとんどです。
症状
- わずかな力での骨折を繰り返す:型により、生まれる前から折れている場合もあります
- 低身長、四肢の変形(曲がった長管骨)
- 脊柱の変形(側弯・後弯)、胸郭の変形による呼吸機能の低下
- 白目が青く見える(青色強膜):型によってはみられません
- 歯の形成不全(象牙質形成不全症):歯が黄褐色〜灰色に見え、欠けやすくなります
- 難聴:思春期以降に現れることが多く、定期的な聴力検査が必要です
- 関節がやわらかい(靭帯のゆるみ)、あざができやすい
- 頭蓋底の陥入(重症例)による頭痛・神経症状
検査・診断
骨折の経過、X線検査(骨の菲薄化、変形、ワーム骨(縫合間骨)と呼ばれる頭蓋の縫合部の小骨)、骨密度測定(DXA)、聴力検査、歯科的評価から総合的に診断します。確定診断は遺伝学的検査で行い、骨形成不全症VI型では SERPINF1 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。
虐待による骨折との鑑別が問題になることがあります。骨形成不全症では、家族歴、青色強膜、歯の異常、骨密度の低下、X線での特徴的な所見が手がかりになりますが、潜性型では家族歴がなく青色強膜も伴わないことがあるため、遺伝学的検査が診断の決め手になります。
治療
病気そのものを治す治療はありませんが、骨折を減らし運動能力を保つための治療があります。
- ビスホスホネート製剤:骨の吸収を抑え、骨密度と骨折頻度を改善します。ただし型によって効果に差があります
- 整形外科的治療:骨折の治療、変形に対する矯正骨切り術、髄内釘(ロッド)の挿入
- リハビリテーション:筋力とバランスを保つことが骨折の予防につながります。水中運動が勧められることがあります
- 定期的な聴力検査と補聴器・手術
- 歯科的管理(象牙質形成不全症への対応)
- 呼吸機能の評価、脊柱変形への対応
- カルシウム・ビタミンDの充足
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる SERPINF1 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、SERPINF1 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
キャリアスクリーニングテスト(228種類)
常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。
検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。
専門的な解説
骨形成不全症(OI)はI型コラーゲンの量的・質的異常、あるいはその翻訳後修飾・分泌・骨基質石灰化の異常による骨脆弱性疾患群である。古典的なSillence分類(I〜IV型)は臨床的重症度に基づくが、現在は原因遺伝子に基づく分類が20型以上に拡張されている。約85〜90%はCOL1A1/COL1A2のヘテロ接合変異による常染色体顕性型で、ハプロ不全(量的異常)は軽症のI型を、グリシン置換(質的異常)はII〜IV型を生じる。
SERPINF1(17p13.3)は色素上皮由来因子PEDFをコードし、骨基質の石灰化を制御する(コラーゲン合成そのものは正常)。このため類骨(osteoid)の過剰蓄積を伴う石灰化障害を呈し、骨生検では偏光顕微鏡下で特徴的なfish-scale様の層板構造がみられる。ビスホスホネート治療への反応が他型に比べ不良であることが繰り返し報告されており、抗RANKL抗体(デノスマブ)の有効性が検討されているが、中止後の反跳性高カルシウム血症に注意を要する。本型はPEDFが血中で測定可能なため、生化学的スクリーニングが可能な数少ないOIである。
潜性型OIの原因遺伝子は機能的に、①3-水酸化複合体(CRTAP、P3H1、PPIB)、②シャペロン・折りたたみ(SERPINH1、FKBP10)、③架橋形成(PLOD2、BMP1)、④石灰化(SERPINF1)、⑤骨芽細胞の分化(SP7、WNT1、CREB3L1、MBTPS2)に整理できる。鑑別としては、低ホスファターゼ症(ALPL:血清ALP低値が決め手)、Bruck症候群(先天性関節拘縮を伴う)、骨粗鬆症偽性グリオーマ症候群(LRP5)、そして非事故性外傷(虐待)が重要である。
よくある質問
Q. どのくらいの頻度で起こる病気ですか。
A. 骨形成不全症全体では、出生1万5千人から2万人に1人程度とされます。そのうち常染色体潜性型は1割ほどで、この型はさらにまれです。
Q. 運動はしてもよいのでしょうか。
A. 安静にしすぎると筋力と骨量がさらに落ち、かえって骨折しやすくなります。衝突のない運動、とくに水中運動が勧められることが多く、主治医・理学療法士と相談しながら、その方に合った運動を続けることが大切です。
Q. 大人になっても骨折は続きますか。
A. 多くの型では、思春期を過ぎると骨折の頻度が減ることが知られています。ただし女性では閉経後に再び増えることがあり、生涯にわたる管理が必要です。また難聴は成人期に進むことが多いため、聴力の確認を続けてください。
Q. 薬が効きにくいと言われました。
A. この型では、骨を強くする一般的な薬(ビスホスホネート製剤)の効果が乏しいことが知られています。別の治療が検討されることがありますので、専門施設にご相談ください。
Q. 次のお子さまへの影響はありますか。
A. この型は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。多くの骨形成不全症は親から子へ受け継がれる形(顕性遺伝)ですが、この型は仕組みが異なります。遺伝カウンセリングでご確認ください。
参考文献
- Marini JC, Forlino A, Bächinger HP, et al. Osteogenesis imperfecta. Nat Rev Dis Primers. 2017;3:17052.
- Forlino A, Marini JC. Osteogenesis imperfecta. Lancet. 2016;387(10028):1657-1671.
- Van Dijk FS, Sillence DO. Osteogenesis imperfecta: clinical diagnosis, nomenclature and severity assessment. Am J Med Genet A. 2014;164A(6):1470-1481.
- Becker J, Semler O, Gilissen C, et al. Exome sequencing identifies truncating mutations in human SERPINF1 in autosomal-recessive osteogenesis imperfecta. Am J Hum Genet. 2011;88(3):362-371.
