概要
マイヤー・ゴーリン症候群1型は、小さな耳・膝のお皿(膝蓋骨)の欠損・低身長という3つの特徴を示す病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、ORC1(1p32.3)遺伝子の変化が原因となります。
この病気は、細胞がDNAをコピーする準備の段階(複製ライセンシング)に関わる遺伝子の変化によって起こります。準備が遅れると細胞の分裂そのものがゆっくりになるため、体全体が小さくつくられます。ただし、知的発達は多くの場合、年齢相応に保たれます。
マイヤー・ゴーリン症候群1型では、この型は、身長の伸びの制限がもっとも強いとされます。お母さまのおなかのなかにいるときからすでに小さく(子宮内発育不全)、生まれたあとも身長が伸びにくい状態が続きます。小さな耳、膝のお皿の欠損、小さなあごという特徴がそろいます。腎臓の形の異常を伴う報告があります。
原因
ORC1 は、細胞がDNAを複製する前に「ここから複製を始めます」という目印をDNAに置く複合体の中心部品です。
細胞が分裂するとき、DNAは正確に1回だけコピーされなければなりません。そのため「ここから複製を始める」という目印をあらかじめDNAに置いておく(ライセンシング)というしくみがあります。この目印を置く作業が滞ると、細胞が増えるスピードが落ち、体をつくる材料が足りなくなります。
この遺伝子のはたらきが完全に失われると、細胞は生きられません。そのため、この病気の患者さまでは必ず一部のはたらきが残っています。これが、症状の重さに幅がある理由のひとつです。
お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。
症状
診断の目安となる3つの特徴(三徴)は次のとおりです。
- 小耳症:耳が小さい。生まれたときから目立ち、診断のきっかけになることが多い特徴です
- 膝蓋骨(膝のお皿)の欠損または低形成:歩き始めの遅れや、膝が抜けるような感じ(膝の不安定さ)で気づかれます
- 低身長:お母さまのおなかのなかにいるときから小さく、生まれたあとも身長が伸びにくい状態が続きます
このほか、次のような症状がみられることがあります。
- 小さなあご(小顎症)と、それによる哺乳の困難・呼吸のしにくさ
- 繰り返す中耳炎、伝音難聴
- 関節のゆるみ、脱臼しやすさ
- 女性の乳房の低形成、男性の外性器の異常
- 肺の気腫性変化、気管支拡張
- 腎臓・尿路の形の異常
- 知的発達は多くの場合、正常範囲に保たれます
検査・診断
三徴がそろえば臨床的に診断できます。膝蓋骨は3歳ごろまでレントゲンに写らないため、乳幼児期には超音波検査やMRIで確認します。成長曲線での評価、聴力検査、腎臓の超音波検査を行います。
確定診断は遺伝学的検査で行い、マイヤー・ゴーリン症候群1型では ORC1 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。
治療
病気そのものを治す治療はありませんが、症状ごとの対応で生活の質を大きく改善できます。
- 乳幼児期の栄養管理:哺乳が難しい場合は経管栄養を検討します。この時期をしっかり支えることが大切です
- 呼吸の評価:小顎による気道の狭さ、睡眠時無呼吸の確認。必要に応じて下顎骨延長術などを検討します
- 膝の管理:装具、理学療法。膝蓋骨がなくても歩行できる方が多いですが、不安定さへの対応が必要です
- 定期的な聴力検査と中耳炎の管理
- 成長ホルモン治療:効果は限定的とされますが、個別に内分泌専門医と相談します
- 耳の形に対する形成外科的治療(希望に応じて)
- 思春期以降の内分泌評価
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる ORC1 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、ORC1 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
キャリアスクリーニングテスト(228種類)
常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。
検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。
専門的な解説
マイヤー・ゴーリン症候群(MGORS)は原発性小人症(primordial dwarfism)のひとつで、DNA複製前複合体(pre-replication complex, pre-RC)の構成因子の両アレル性低形態性変異により生じる。原因遺伝子はORC1、ORC4、ORC6、CDT1、CDC6、CDC45、MCM5で、GMNN(ジェミニン)のみ常染色体顕性形式をとる。これらは総称して「レプリソモパチー(replisomopathy)」と呼ばれる。
ORC1(1p32.3)は複製起点認識複合体(ORC)の最大サブユニットで、G1期にDNA複製起点へ最初に結合し、CDC6・CDT1・MCM2-7を順次呼び込んで複製前複合体(pre-RC)を形成する。4型のマイヤー・ゴーリン症候群のなかで成長障害が最も高度で、出生前から発育制限が明らかである。ORC1は中心体複製と一次繊毛形成にも関与するため、本症候群を「複製異常症(replisomopathy)」であると同時に繊毛病的側面をもつ疾患として理解する見方がある。知的発達は多くの症例で正常範囲である。
鑑別としては、セッケル症候群(ATR、ATRIP など:小頭症と知的障害が前景)、MOPD II型(PCNT:小頭症・脳血管異常・糖尿病)、Silver-Russell症候群(身体の左右差・11p15インプリンティング異常)、ならびに小耳症を伴う症候群(Treacher Collins症候群、Goldenhar症候群)が挙がる。マイヤー・ゴーリン症候群は小頭症と知的障害を伴わない点で他の原発性小人症と区別されることが多く、この点は家族への説明において重要である。
よくある質問
Q. どのくらいの頻度で起こる病気ですか。
A. 世界で百数十例ほどが報告されている非常にまれな病気です。正確な頻度は分かっていません。
Q. 膝のお皿がないと歩けませんか。
A. 膝蓋骨がなくても歩行できる方がほとんどです。ただし膝の安定性が低く、歩き始めが遅れたり、転びやすかったりすることがあります。理学療法や装具で対応します。
Q. 身長はどのくらいになりますか。
A. 成人身長は平均より低くなりますが、原因遺伝子と変化の種類によって幅があります。成長ホルモン治療の効果は限定的とされており、内分泌の専門医と個別にご相談ください。
Q. 身長は伸びますか。
A. この型では身長の伸びが制限されますが、成長ホルモンの効果は限定的とされています。内分泌の専門医と相談しながら方針を決めてください。
Q. 次のお子さまへの影響はありますか。
A. ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。正確な見通しは遺伝カウンセリングでご確認ください。
参考文献
- de Munnik SA, Hoefsloot EH, Roukema J, et al. Meier-Gorlin syndrome. Orphanet J Rare Dis. 2015;10:114.
- Bicknell LS, Walker S, Klingseisen A, et al. Mutations in the pre-replication complex cause Meier-Gorlin syndrome. Nat Genet. 2011;43(4):356-359.
- Klingseisen A, Jackson AP. Mechanisms and pathways of growth failure in primordial dwarfism. Genes Dev. 2011;25(19):2011-2024.
- Bicknell LS, Walker S, Klingseisen A, et al. Mutations in ORC1, encoding the largest subunit of the origin recognition complex, cause microcephalic primordial dwarfism resembling Meier-Gorlin syndrome. Nat Genet. 2011;43(4):350-355.
