この記事でわかること
- ISO/IEC 17025が何を保証するための国際規格か
- 「管理要件」と「技術的要件」という2本柱の中身
- 認定を取得するまでの具体的なプロセス
- NIPTの検査精度とISO/IEC 17025認定との関係
- ヒロクリニックの検査機関「東京衛生検査所」の役割
ISO/IEC 17025は、試験所や校正機関が正確な結果を出せているかを判断するための国際規格です。NIPT(新型出生前診断)のように検査精度が結果に直結する分野では、この規格への適合が信頼性の土台になります。実際に私が検査室の運用を確認したところ、書類の整備状況ひとつで印象が大きく変わると気づきました。本記事では、規格の中身から認定プロセス、そしてNIPTとの関わりまでを整理してお伝えします。
ISO/IEC 17025とは何か
ISO/IEC 17025とは、試験所と校正機関の技術的な能力を国際的な基準で評価するための規格です。品質だけでなく、結果の正確さそのものを対象にしている点が特徴です。
適用範囲は幅広く、食品検査や環境測定、産業分野の校正機関のほか、医療・遺伝子検査を行う試験所も対象に含まれます。分野は違っても、求められる考え方の骨格は共通しています。
正式名称と適用範囲
正式名称は「試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項」です。対象となるのは、試験や校正を専門に行う機関全般になります。
- 正式名称:試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項
- 適用範囲:試験所および校正機関
- 目的:技術的能力を評価し、信頼できる結果を提供するための指針を示すこと
規格が求められる理由
試験結果は、それを使う人がいて初めて意味を持ちます。医療や品質保証の現場では、誤った結果が重大な判断ミスにつながりかねません。ISO/IEC 17025は、そうした事態を防ぐための共通言語といえます。
身元確認や親子鑑定を扱う法科学の分野でも、検査結果の正確さと再現性は同じように重視されています。DNA分析と遺伝の関わりについては、法医学と遺伝子の関係を解説した記事で詳しく触れていますので、あわせて参考にしてください。分野は違っても、求められる姿勢には共通点があります。
ISO/IEC 17025の2本柱ー管理要件と技術的要件
ISO/IEC 17025の要件は、組織運営を扱う管理要件と、検査業務そのものを扱う技術的要件の2つに大きく分かれます。
管理要件
管理要件は、試験所が組織として安定的に機能するための仕組みを定めています。運営の土台となる部分です。
- 品質管理システム:品質方針や品質目標を文書化し、定期的な管理レビューを行うこと
- 記録の管理:試験・校正データや報告書の保存期間と保護方法を定めること
- 顧客対応:顧客からの要望や苦情に応じるプロセスを整えること
これらは一見すると事務的な項目に見えるかもしれません。しかし、誰が何を判断し、どこに記録が残るのかを明確にしておくことは、後から結果を検証する際の拠り所になります。担当者が変わっても品質を保てる仕組みでもあります。
技術的要件
技術的要件は、検査そのものの正確さを支える項目です。人・設備・方法のすべてが対象になります。
- 人員の能力:検査を担当する人員が、必要な教育・訓練・経験を備えていること
- 設備および環境条件:機器が適切に設置・維持され、環境が結果に影響しないよう管理されていること
- 方法の妥当性確認:検査手法を選定し、標準操作手順(SOP)に沿って妥当性を確認すること
- 測定のトレーサビリティ:測定結果が国際的に認められた基準にたどれること
- 不確かさの見積もり:結果に伴う誤差の範囲を見積もり、報告すること
- 結果の報告:必要な情報を漏れなく、明確に報告書へまとめること
特に測定のトレーサビリティと不確かさの見積もりは、専門用語だけを見ると分かりにくい項目です。簡単に言えば、結果が「どの基準に沿って測られたか」「どこまで誤差の幅を見込んでいるか」を明らかにする作業です。この2点があいまいなままだと、同じ検体を測っても施設によって答えがずれてしまう恐れがあります。

ISO/IEC 17025認定を取得するまでのプロセス
認定を取得するには、自己評価から審査、是正措置を経て認定機関の判断を待つという段階を踏みます。
自己評価と申請
まず試験所自身が、品質管理システムと技術的能力を規格に照らして点検します。その上で、認定機関へ申請を行います。
日本国内では、主に日本適合性認定協会(JAB)がこの認定を担っています。計量分野の校正では、NITE傘下のIAJapanが認定を行うこともあります。
審査・是正措置・認定
審査では、書類審査に加えて現地での実地審査が行われます。指摘があれば是正措置を行い、再確認を経て正式な認定に至ります。
是正措置と聞くと、不備を隠さず正直に報告する姿勢が問われる場面だと分かります。指摘をその場しのぎで終わらせず、原因まで遡って手順を見直すことが、次の審査での再発防止につながります。
- 自己評価:規格要件との適合状況を点検する
- 申請:認定機関へ申請書を提出する
- 審査:文書審査と現地審査を実施する
- 是正措置:指摘事項へ対応する
- 認定:要件充足が確認され次第、認定が付与される
認定は取得して終わりではありません。認定後も一定の周期で更新審査を受け続ける仕組みになっており、日々の運用が規格からずれていないかを繰り返し確認します。いわば、資格ではなく習慣を評価する制度に近いといえます。
NIPTの精度とISO/IEC 17025認定の関係
NIPTの結果は、検査を担う施設がISO/IEC 17025のような認定基準を満たしているかどうかで、信頼度が変わります。
検査機関「東京衛生検査所」という選択
ヒロクリニックNIPTは、外部の検査会社に委託せず、検査機関である東京衛生検査所で検査を行っています。院内で工程を管理できるため、結果は2〜5日で判明します。
私はこの体制を確認した際、検体の受け渡しにかかる時間が短いことが、結果の速さに直結していると実感しました。外部委託が多い業界のなかでは珍しい体制です。
血液検体は、採血から検査、結果の判定まで複数の工程を経ます。工程が増えるほど、受け渡しのたびに時間と管理の手間がかかるものです。院内で完結させることは、単なるスピードの話ではなく、途中で何が起きたかを追跡しやすくする意味も持っています。
そもそもNIPTがどのような仕組みで胎児の染色体情報を調べるのか気になる方は、NIPTの原理を解説した記事もあわせてご覧ください。検査の全体像はNIPT(新型出生前診断)の基礎情報で確認できます。
認定を受けた検査所を選ぶ意味
検査費用だけで検査所を選ぶと、精度や体制の面で見えにくいリスクを抱えることになります。ISO/IEC 17025や、関連するISO 18385(法科学分野の規格)のような認定の有無は、選択の判断材料になります。価格の比較だけで決めてしまうと、後になって体制面の不安が残りかねません。
検査費用の内訳を知りたい方は出生前検査の費用を解説した記事を参考にしてください。検査結果の解釈には専門知識も欠かせません。詳しくは遺伝カウンセラーの役割を紹介した記事をご覧ください。
認定の有無を確認するときは、証明書の発行元と有効期限だけでなく、どの検査項目が認定範囲に含まれているかまで見ておくと安心です。認定は施設単位ではなく、検査項目ごとに範囲が定められているためです。細部まで確認する姿勢が、結果的に自分自身を守ることにつながります。
ISO/IEC 17025認定を受けるメリット
認定を受けることで、結果の信頼性・国際的な通用力・受診者からの信頼という3つの利点が同時に得られます。裏を返せば、これらは認定を受けていない施設では得にくい利点でもあります。
認定取得は目的ではなく、日々の検査品質を維持するための手段です。得られる利点は多岐にわたります。
- 信頼性の向上:第三者機関の確認を経ることで、結果の信頼度が高まる
- 国際的な通用力:海外の医療機関や研究機関との連携でも通用する基準になる
- 受診者の安心:検査を受ける方にとって、施設選びの明確な判断材料になる
さらに、認定の維持には定期的な審査が伴います。品質は一度きりで終わらず、継続的に確認され続ける仕組みです。
受診者の立場からすると、認定の話は少し遠く感じるかもしれません。ですが、結果の紙一枚の裏側にどれだけの体制があるかを知っておくと、施設選びの視点が変わってきます。数字だけを比べるのではなく、その数字を支える仕組みまで見る習慣を持ってください。
よくある質問(FAQ)
ISO/IEC 17025とNIPTの検査体制について、よく寄せられる質問をまとめました。
ISO/IEC 17025とISO 9001はどう違いますか。
ISO 9001は組織全体の品質マネジメントを対象とする規格です。一方でISO/IEC 17025は、試験所・校正機関の技術的な能力に特化しています。
ヒロクリニックNIPTの検査はどこで行われますか。
検査機関の東京衛生検査所で検査を行っており、外部への委託は行っていません。院内で一貫して工程を管理しています。
結果が出るまでどのくらいかかりますか。
検査機関での一貫した工程管理により、結果は2〜5日でお届けしています。委託先を挟まない分、日数の見通しが立てやすくなっています。
日本国内でISO/IEC 17025の認定を行っているのはどこですか。
主に日本適合性認定協会(JAB)が認定を担っており、分野によってはNITE傘下のIAJapanが担当することもあります。
認定を受けていない検査所は信頼できませんか。
認定の有無だけで判断するのは早計です。検査体制や実績もあわせて確認してください。
ISO/IEC 17025の認定は一度取得すれば終わりですか。
いいえ、終わりではありません。認定の維持には定期的な審査が必要で、品質は継続的に確認されます。
ISO/IEC 17025以外に検査所が満たすべき基準はありますか。
分野によって異なりますが、法科学領域のDNA分析ではISO 18385のように、汚染防止に特化した基準が別途定められています。検査項目ごとに、関連する基準をあわせて確認してください。
ISO/IEC 17025は、検査の背景にある品質管理の仕組みを映す規格です。数値や結果だけでなく、それを支える体制まで確認する視点が、検査所選びでは欠かせません。気になる点があれば、遠慮せずスタッフへ質問してください。制度の名前を覚えるより、その裏側にある姿勢を知ることのほうが、実は役に立ちます。
監修者:岡博史
医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長 / Labo Director
NIPTをはじめとする出生前検査全般の品質管理を統括し、検査機関「東京衛生検査所」の運営にも携わっています。
日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医
この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。
