エチルマロン酸脳症

エチルマロン酸脳症エチルマロン酸脳症

概要

メチルマロン酸血症は、メチルマロニルCoA(MM-CoA)ムターゼ(EC5.4.99.2;MCM) の活性低下によって、メチルマロン酸をはじめとする有機酸が蓄積し、代謝性アシドーシスに伴う各種の症状を呈する疾患です。メチルマロニルCoA の代謝に障害を来す原因としては、(1)MCM 欠損症(MIM#251000)と、(2)ビタミンB12の摂取・腸管での吸収・輸送から、MCMの活性型補酵素アデノシルコバラミン(コバマミド)合成までの諸段階における障害が知られています。コバラミン代謝異常は相補性解析からcblA~cblGに分類され、cblA、cblBはアデノシルコバラミン合成だけに障害を来してMCM欠損症と同様の症状を呈するのに対し、メチオニン合成酵素に必要なメチルコバラミンの合成に共通する経路の障害であるcblC、cblE、cblF、cblGはホモシステイン増加を伴い、臨床像を異にします。cblDは、責任分子MMADHCがcblCの責任分子MMACHCによる修飾を受けたコバラミン代謝中間体の細胞内局在(ミトコンドリア又は細胞質)の振り分けを担っており、遺伝子変異の位置によって、メチルマロン酸血症単独型/ホモシスチン尿症単独型/混合型に分かれます。本診断基準では、MCM欠損症、cblA、cblB、及びcblDのうちホモシステイン増加を伴わない病型を対象として取り扱います。いずれも常染色体劣性遺伝性疾患です。

疫学

新生児マス・スクリーニング検査(生まれて5日目前後で行うスクリーニング検査)の国内統計からは、約12万人に1名の割合と報告されています。症状を示す患者様の割合は、有機酸血症のなかで一番多いとされています。国内には約300名の患者様がいると推定されています。現在、先天代謝異常症患者登録制度(JaSMln & MC-Bank)が作られて情報が集められています。

原因

メチルマロニルCoAの代謝に障害を来す原因としては、(1)MCM 欠損症(MIM#251000)と、(2)ビタミンB12の摂取・腸管での吸収・輸送から、MCMの活性型補酵素アデノシルコバラミン(コバマミド)合成までの諸段階における障害が知られています。タンデムマス新生児スクリーニング試験研究(1997年~2011年,被検者数157万人)による国内での頻度は1/12万人で、これはプロピオン酸血症の1/5万人に次ぐ数字です。発症後診断例の全国調査では、メチルマロン酸血症が国内最多の有機酸代謝異常症と報告されています。

ETHE1遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。

症状

典型的には新生児期から乳児期にかけて、ケトアシドーシス・高アンモニア血症などが出現し、哺乳不良・嘔吐・呼吸障害・筋緊張低下などから嗜眠~昏睡など急性脳症の症状へ進展します。初発時以降も同様の急性増悪を繰り返しやすく、特に感染症罹患などが契機となることが多いです。コントロール困難例では経口摂取不良が続き、身体発育が遅延する。呼吸障害、意識障害・けいれん、食思不振・嘔吐、中枢神経障害、腎障害などが主な症状として認められます。

【参考文献】

難病情報センター – エチルマロン酸脳症