男性不妊の真実 – 精子の質を高める生活習慣と高齢出産の知られざる影響【YouTube動画解説】

こんにちは。未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする、おかひろしです。

このコラムでは、NIPT(新型出生前診断)を中心に、医学的根拠に基づいた情報を、感情論ではなくデータで分かりやすくお届けしています。

最近、40代で妊娠・出産された芸能人のニュースをよく目にします。パートナーが年下である場合など、「若い精子があれば、女性が40代でも妊娠できるのではないか?」と期待を抱く方も多いでしょう。

結論から言うと、**精子の若さと健康は確かに大切ですが、それだけで妊娠が保証されるわけではありません。妊娠は「夫婦の年齢」「両性の健康状態」**の掛け合わせであり、男性が若いからと安心してしまうと、不妊原因を見過ごすリスクがあります。

夫婦にとって「子どもが欲しい」という願いは共通です。そのためにも、男性も主体的に妊活に関わるための正しい知識を持つことが大切です。

今日は、【精子が若ければ40代女性でも妊娠できるのか】というテーマで、精子の老化の真実、若年男性に潜む問題、そして男性が早期から関わるべき重要性について解説します。


男性の精子も加齢で質が低下する


【質問者】
先生、よく『男性は何歳になっても子どもが作れる』って聞きますけど、本当なんですか?芸能人のニュースを見ても、やっぱりそう思う人が多いと思うんですけど…。
【先生】
残念ながら、それは大きな誤解です。女性の卵子の老化はよく知られていますが、男性の精子も、加齢によってその質が影響を受けるんです。
一般に「男性はいくつになっても子どもを作れる」というイメージがあります。これは、男性が思春期以降もずっと精子を作り続けるために生じる誤解です。
しかし実際には、年齢を重ねるごとに精子の数や運動率が低下し、さらにDNAの損傷率が上がることが明らかになっています。精子DNAが傷つくと、受精卵が分割しにくくなったり、妊娠しても流産に至るリスクが高まることが分かっています。
獨協医科大学の岡田医師らによる研究では、表のとおり特に不妊患者では35歳を境に受精卵を分割させる「精子力」が低下する男性の割合が増えることが示されています。横軸は年齢、縦軸は精子の機能的な能力です。子どもありの赤線は自然妊娠で子どもがいる男性を対象にした精子力の平均を示しています。どの年齢層でもおおむね 70~80% の高い水準を維持しています。
黄色の線は不妊で悩む男性の精子力を示しています。30代から急激に下降し、特に45~49歳では50%を下回っています。
つまり、女性と同様に、男性にとっても「加齢」は妊娠に影響する要素なのです。

疾患父親の年齢(目安)リスク上昇(20代父親との比較)
自閉スペクトラム症(ASD)45歳以上約3.5倍
統合失調症50歳以上約2倍
ADHD学習障害年齢が高くなるにつれて上昇傾向

若年男性に潜む精子問題と早期治療

【質問】
でも、まだ35歳になっていない若い男性なら、何も心配ないってことですか?

【先生】
いえ、そうとも言い切れないんです。実は、若くても自覚症状がないまま、精子に問題があるケースは少なくありません。
若年男性に多い精子の問題のひとつが精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)です。
これは精巣の周囲の静脈に血液が溜まりやすくなる病気で、精巣の温度が上昇するために精子の数や運動率の低下、さらにはDNA損傷を引き起こします。放置すれば徐々に悪化する進行性の病気で、男性不妊の原因の約3〜4割を占めるとも言われています。

例えば32歳の男性で精索静脈瘤の手術を受けたケースでは、術後に精子の数が10倍に増加し、精子の運動率も20%改善しました。その結果、治療後まもなく妻が自然妊娠に至ったという報告もあります。
このように、若いうちから問題に気づき、適切な治療を受けることが、妊娠の可能性を大きく高めるカギになるのです。

【質問者】
若くても、自分に原因があるかもしれないと考えることが大切なんですね。

不妊治療における男性の早期関与

【質問】
不妊の原因って、女性側にあると思われがちですよね。なかなか男性が専門医にかかるのって、抵抗があるんじゃないでしょうか?

【先生】
はい、おっしゃる通りです。不妊治療における男性の関与は、非常にデリケートな問題です。しかし、実は不妊原因の約半数は男性側にあることがわかっています。

WHOの国際調査では、グラフのとおり不妊の原因の48%は男性に起因すると報告されています。それにもかかわらず、日本では「不妊は女性側の問題」という誤解が根強く、女性ばかりが検査や治療に追われてしまう現状があります。

さらに深刻なのは、男性不妊を専門的に診られる泌尿器科医が全国にわずかしかいないことです。地域によっては男性が適切な診察を受けられる機会が限られているのが現状で、社会的な課題にもなっています。

実際に治療を受けた男性の中には「もっと早く自分が検査を受けていれば、妻に不必要な苦労をさせなかったかもしれない」「早く動いていたら授かれていたかもしれない」と後悔の声をあげる方も少なくありません。
だからこそ、男性が早い段階で自分にも原因があるかもしれないと認識し、主体的に検査を受けることがとても大切なのです。

【質問者】
不妊の原因が半分も男性側にあるなんて…知りませんでした。パートナーを苦しませないためにも、男性自身が早く行動することが大切ですね。

検査の種類目的とわかること
① 精液検査**最も基本的。**精子の数、運動率、形態の正常さなどを調べ、WHO基準(濃度1,500万/ml以上、運動率40%以上)と比較する。
② ホルモン検査血液検査でテストステロンなどの値を測定し、精子を作るためのホルモンバランスに異常がないかを調べる。
③ 超音波検査男性不妊の代表的な原因である精索静脈瘤の有無をチェックし、早期発見につなげる。
④ 感染症検査クラミジアなどの性感染症が不妊の原因になることがあるため、必要に応じて検査を行う。

男性の年齢と子どもの健康リスク

【質問者】
先生、女性が高齢出産になるとダウン症などのリスクが高まるというのはよく聞きます。男性の年齢が子どもに与える影響ってあるんですか?

【先生】
実は、男性の年齢が上がることも、赤ちゃんの健康に関わってくるんです。最近の研究では、父親が高齢になると子供の疾患リスクが高まることがわかってきました。

代表的なのは、ダウン症自閉スペクトラム症(ASD)、統合失調症、注意欠如・多動症(ADHD)といった神経発達や精神に関わる病気です。これは、加齢によって精子のDNAに傷が入りやすくなり、それが受精卵を通じて子どもに影響するためだと考えられています。

【質問者】
女性と同じように、男性にも“年齢の壁”があるってことなんですね…。でも、どのくらいリスクが上がるんでしょうか?

【先生】
例えば、スウェーデンで行われた大規模研究では、父親が45歳以上の場合、子どもの自閉スペクトラム症のリスクは20代の父親と比べて約3.5倍に上がるというデータがあります。統合失調症に関しては、父親が50歳以上だとリスクが約2倍になるという報告もあります。さらに、ADHDや学習障害のリスクも、父親の年齢が高くなるにつれて上昇することが示されています。

疾患父親年齢リスク上昇
自閉スペクトラム症(ASD)45歳以上約3.5倍
統合失調症50歳以上約2倍

もちろん、必ず病気になるという意味ではありません。多くのお子さんは健康に育ちますし、生活習慣や遺伝子の組み合わせなど他の要因も関わります。
ただ、“男性にも原因がある”ということは確かなんです。ですから、『子どもを授かりたい』と思ったら、女性だけでなく男性も早めに妊活を意識することがとても大切なんです。

【質問者】
これまで妊活の話題はどうしても女性が中心になりがちですが、男性の年齢や健康管理も、子どもの未来に直結しているんですね。

精子の質を守る生活習慣

【質問】
精子の質を保つにはどうすればよいですか?

【先生】
ここまでお話ししてきたように、精子の質には年齢や病気が関わりますが、実は生活習慣も大きな影響を与えます。毎日の過ごし方を見直すことで、精子の状態を改善できる可能性があるんです。
①食事の工夫②適度な運動③禁煙・節酒④睡眠とストレス管理⑤体を冷やしすぎない/温めすぎないです。

①食事の工夫
 精子の形成やDNAには栄養バランスが欠かせません。特に牡蠣、牛肉、ナッツ類などの亜鉛、魚介類、卵のセレン、抗酸化作用を持つ果物、野菜、ナッツなどのビタミンC・Eは精子の質を保つうえで重要です。
逆に、過剰な脂質や加工食品、糖質の摂りすぎは精子の運動率低下と関連があるとされています。

適度な運動
有酸素運動や筋力トレーニングはホルモンバランスを整え、精子形成を助けます。ただし、極端な過度運動やマラソンのように精巣に負担がかかる運動は逆効果になることもあります。「週に数回の軽めの運動」が最も効果的です。

③禁煙・節酒
喫煙は精子の数や運動率を大きく下げ、DNA損傷率を高めることが多数の研究で明らかになっています。禁煙は精子の質改善に直結します。
またアルコールの過剰摂取はホルモンの分泌を乱すため、飲むなら「1日ビール中瓶1本程度まで」が目安です。

④睡眠とストレス管理
精子は作られるのに約74日かかるとされます。この間に十分な睡眠をとることで男性ホルモンが正常に分泌され、質の良い精子が育ちます。
一方で慢性的なストレスは、ホルモンバランスを乱し、精子形成を阻害します。趣味や運動、リラクゼーションを取り入れることが予防につながります。

⑤体を冷やしすぎない/温めすぎない
精巣は体温より2〜3度低い環境で最もよく働きます。長時間のサウナや熱いお風呂などは精子の質を下げる要因になります。
逆に冷えも血流を悪くするため、バランスが大切です。

精子は毎日新しく作られているので、生活習慣を見直すことで改善のチャンスが十分にあります。

夫婦で協力して体調を整えながら妊活に向き合うことが、赤ちゃんを迎える第一歩になるのです。

男性ができる検査・チェックリスト

【質問者】
不妊治療って、どうしても女性がいろいろ検査したり治療を受けたりするイメージが強いんですが、男性ができる検査ってあるんですか?

【先生】
もちろんありますよ。実は、不妊原因の約半分は男性側にあると言われています。ですから、まず最初に“男性の検査”を受けることが、妊活を効率的に進めるためにはとても重要なんです。

主に精液検査、ホルモン検査、超音波検査、性感染症検査があります。

・”精液検査”
 最も基本的で大切な検査です。精液量、精子の数、精子の動き、形の正常さなどを調べます。
WHOの基準では、精子濃度は1mlあたり1,500万以上、運動率は40%以上が目安とされています。

・”ホルモン検査(血液検査)”
精子を作るにはホルモンの働きが必要です。血液検査で卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、テストステロンなどの値を測定し、ホルモンの異常がないかを調べます。

・”超音波検査(精索静脈瘤チェック)”
男性不妊の代表的な原因である「精索静脈瘤」は、超音波で調べることができます。気づかずに進行しているケースも多いため、早期発見が大切です。

・”感染症検査”
クラミジアなどの性感染症が不妊の原因になることがあります。必要に応じて尿検査や血液検査を行います。

最近では、自宅でできる“セルフ精子検査キット”も増えてきました。精子の数や動きがスマートフォンのアプリで簡単にチェックできるものもあります。あくまで簡易的なスクリーニングではありますが、『自分に問題があるかもしれない』と気づくきっかけになるのは大きなメリットです。

【質問者】
スマホで精子の動きを見られるなんて、すごい時代ですね!

💡 まとめ:妊娠は「夫婦で乗り越える年齢の壁」

今日は、【精子が若ければ40代女性でもすぐ妊娠できるのか】というテーマについてお話ししました。

  • 男性にも年齢の壁がある: 精子の質は35歳頃から低下し、DNA損傷率の上昇は流産や子どもの疾患リスクにも関わります。
  • 主体的な早期関与が鍵: 不妊原因の約半分は男性側にあります。パートナーを不必要な苦労から守るためにも、男性が早く精液検査などの基本検査を受けることが大切です。
  • 生活習慣で改善可能: 精子は毎日作られているため、禁煙、栄養、適度な運動といった生活習慣を見直すことで、質を改善できる可能性があります。

「子どもを授かりたい」という願いは、夫婦共通のものです。女性だけでなく、男性も主体的に健康管理に取り組み、夫婦で協力して年齢の壁を乗り越えることが、赤ちゃんを迎えるための最良の準備になるのです。