症例報告12q(12q24.31-q24.33)欠失に伴う自閉症:非常に稀な疾患の追加報告

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この記事のまとめ

12q24.31-q24.33欠失は、12番染色体の長腕のいちばん端に近い部分が欠けることで起こる、非常に稀な染色体の部分欠失です。報告されている主な特徴は、発達の遅れ・知的障害・自閉スペクトラム的な特性・特徴的な顔立ちなどです。原因は染色体の一部が失われること(多くは新しく生じたde novo)で、診断は染色体マイクロアレイという検査で行われます。こうした微小な欠失や部分欠失は、一般的なNIPT(主に13・18・21トリソミーを調べる非確定的検査)の対象には含まれません。確定診断は羊水検査絨毛検査に染色体マイクロアレイを組み合わせて進めます。気になることがあれば、自己判断せず、産婦人科や遺伝カウンセリングの窓口へ相談してください。

この記事でわかること

  • 12q24.31-q24.33欠失とは何か、なぜ非常に稀といわれるのか
  • 報告されている発達の遅れ・知的障害・自閉スペクトラム的な特性・顔立ちの特徴
  • 原因(多くはde novo)と、染色体マイクロアレイによる診断の流れ
  • NIPTで微小欠失部分欠失は分かるのか、確定診断や遺伝相談との関係

12q24.31-q24.33欠失とは|長腕の末端に近い部分の欠失

12q24.31-q24.33欠失は、12番染色体の長腕の末端側にある一部分が欠けて起こる、報告例がごくわずかしかない稀な染色体の部分欠失です。「q」は染色体の長い腕(長腕)を指し、数字はその中の位置を表します。まずは、どこがどう欠けているのかを整理します。

人の染色体には、短い腕(p)と長い腕(q)があります。12番染色体の長腕のうち、末端に近い24.31から24.33までの範囲が失われた状態が、今回のテーマです。この領域には50を超える遺伝子が含まれると報告されており、その一部が足りなくなることで、体や発達にさまざまな影響が出ると考えられています。

この欠失は、文献をたどってもごく限られた数しか報告がありません。ある症例報告では、12q24.31-q24.33の範囲が欠けた例はわずか4例ほどとされ、そこにさらに新しい1例が加えられました。数えるほどしか記録がない疾患。それが、この欠失の大きな特徴です。

12番染色体で欠けている位置 短い腕(p) 長い腕(q) 中央 この末端側が欠ける (12q24.31〜q24.33)
12番染色体の長腕の末端に近い部分が欠けるイメージ(点線が欠けている範囲)

「非常に稀」とはどのくらいなのか

希少疾患のなかでも、この欠失は特に報告が少ない部類です。世界の医学文献を探しても、症例報告として記録されているのは数例から十数例ほど。だからこそ、一例ずつの丁寧な記録が、診断や見通しを立てるための貴重な手がかりになります。

数が少ないと、症状の幅もまだ十分には分かっていません。同じ12q24.31付近の欠失でも、欠けている範囲の広さによって現れ方が変わると報告されています。だからこそ「必ずこうなる」とは言い切れず、「こう報告されている」という形で理解することが大切です。難病全般の情報は難病情報センターもあわせて参考にしてください。

報告されている主な特徴と症状

この欠失で報告されている主な特徴は、発達の遅れ・知的障害・自閉スペクトラム的な特性・特徴的な顔立ちで、そこに体の合併症が加わることがあります。あくまで報告されている傾向であり、一人ひとりで現れ方は異なります。代表的なものから順に見ていきます。

いちばん多く記されているのが、発達の遅れです。首がすわる、座る、歩く、言葉を話すといった節目が、平均より遅れて進む傾向があります。あわせて知的障害を伴う例や、人との関わりにくさなど自閉スペクトラム的な特性が報告される例もあります。行動面では、落ち着きにくさが記録された症例もあります。

顔立ちの特徴もよく挙げられます。報告例では、前頭部の泉門(頭の骨のすき間)が大きい、鼻が短い、歯ぐきが厚い、といった記述が見られます。手足では、指が重なるように曲がる斜指や、指が多い多指症が記録された例もあります。下の写真は、実際に報告された症例の身体的な特徴です。

図1:報告された多発性の身体的特徴(顔立ち・手・足)

報告例の顔立ちの特徴。鼻が短く鼻孔がやや前を向き、耳の位置や大きさは正常と記録されている
顔立ちのわずかな特徴(鼻が短く鼻孔が前向き)
報告例の手の特徴。第5指が重なるように曲がる斜指がみられる
手の第5指の斜指
報告例の足の特徴。左足に指が多い多指症がみられる
左足の多指症

知的障害を伴う場合、成長にあわせた療育や支援が支えになります。妊娠期からできることや相談先については、知的障害のリスクと妊娠中にできることの記事もあわせて読んでみてください。早くから相談先を知っておくと、いざというときに動きやすくなります。

ある症例報告からわかること

報告された2歳男児の例では、発達の遅れ・成長のゆっくりさ・顔立ちや手足の特徴・脳の画像所見が記録され、染色体マイクロアレイで12q欠失症候群と診断されました。一例ずつの記録が、この疾患を理解する土台になります。実際の経過を、順を追って見ていきます。

この男の子は、複数の生まれつきの特徴に加えて、全体的な発達の遅れがあり、小児神経の診察を受けました。妊娠中の経過では、妊娠5か月ごろの超音波で脳室の拡大が見つかっています。妊娠7か月での早産となり、帝王切開で生まれました。生まれたときの体重は1,720グラムで、身長も頭のサイズも小さめでした。

生後は、肺の感染症などで入院を繰り返しました。足の余分な指を取り除く手術や、生後8か月には脳にたまった水を逃がすための手術も受けています。発達の節目もゆっくりで、首がすわったのが生後12か月ごろ、座れたのが16か月ごろでした。24か月の時点でも、体重の増えがゆっくりで、一人で歩いたり話したりするのは難しい状態と記されています。

脳の画像検査(MRI)では、脳室の拡張や、左右の脳をつなぐ脳梁が薄いことなどが確認されました。下の画像は、その脳の所見を示したものです。専門的な内容ですが、こうした記録の積み重ねが、同じ欠失を持つ子どもの理解につながっていきます。

図2:脳の磁気共鳴画像(MRI)で確認された所見

脳のMRI矢状断像。脳室の拡張と脳梁が薄いことが記録されている
脳室の拡張と、視交叉付近のふくらみ(矢印)
脳のMRI軸位断像。左右の脳室の状態を横から輪切りにして示している
輪切りにした断面の画像
脳のMRI画像。側脳室と第3脳室の拡張、透明中隔の欠損(矢印)がみられる
側脳室・第3脳室の拡張と透明中隔の欠損(矢印)

診断は、ヒトゲノムのCGHマイクロアレイという検査で確定しました。12番染色体の長腕、位置でいうと24.31から24.33にあたる範囲が欠けていることが分かり、12q欠失症候群と判断されています。私はこの記録を読んで、一つの検査が診断名をはっきりさせ、家族の次の一歩を支える様子に、遺伝学的な検査の意味を改めて感じました。

原因と診断|多くはde novoの欠失

12q24.31-q24.33欠失の原因は染色体の一部が失われることで、その多くは親から受け継いだのではなく、新しく生じたde novo(デノボ)の変化と報告されています。診断は染色体マイクロアレイで行います。原因と調べ方を、やさしく整理します。

「de novo」とは、両親の染色体にはなく、その子で新しく起きた変化を指す言葉です。多くのケースで、この欠失は親の体質を受け継いだものではありません。つまり、親の育て方や妊娠中の過ごし方が原因ではないと理解して差し支えありません。偶発的に生じる、まれな出来事なのです。

診断の中心になるのが、染色体マイクロアレイという検査です。染色体のどこが、どれくらいの範囲で欠けている(あるいは増えている)かを、細かく調べられます。通常の染色体検査では見つけにくい小さな過不足も捉えられるため、こうした部分欠失の診断に使われます。

部分欠失を調べるおおまかな流れ 気づきのきっかけ 超音波や 発達の様子など 確定検査 羊水検査 絨毛検査 詳しく分析 染色体 マイクロアレイ 確定診断は羊水検査絨毛検査に染色体マイクロアレイを組み合わせて行います
部分欠失を調べるおおまかな流れのイメージ

微小欠失部分欠失の全体像を知りたい方は、微小欠失のリスクを解説した記事もあわせて読んでみてください。似た仕組みで起こる別の欠失についても整理しています。発達に関わる支援情報は国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センターも参考になります。

これまでの報告例を比べてわかる傾向

これまでに報告された12q末端付近の欠失の例を並べると、発達の遅れ・知的障害・顔立ちの特徴が共通して多く、欠けている範囲によって症状の幅が変わることが見えてきます。数少ない記録を比べることが、理解を深める手がかりになります。主な報告例を表にまとめました。

遺伝学的な記述報告者報告された主な特徴
12q24.31-q24.33のモザイク欠失Al-Zahraniら重い成長の遅れ、発達の遅れ、顔立ちの特徴、耳の位置が低い、停留精巣など
12qの末端付近の欠失(約4.5Mb)Niyazovら言葉の遅れ、注意が続きにくい特性、腎臓の異常、中程度の知的障害など
12q24.31-q24.32の欠失Plotnerら粗い顔立ち、大きな前頭部の泉門、全体的な発達の遅れ、筋肉の緊張の低さなど
12q24.31-q24.33の欠失Sathyaら発達の遅れ、小頭症、心臓の異常、顔立ちの特徴(大きめの鼻など)
12q24.31の欠失Bapleら自閉スペクトラム的な特性、中〜重度の知的障害、強い不安、口蓋の特徴など
12q24.31-q24.33の欠失(約9Mb・今回の症例)今回の報告発達の遅れ、自立した歩行や会話が難しい、成長のゆっくりさ、顔立ちや手足の特徴、けいれん傾向
表1:12番染色体の末端付近の欠失で報告された主な特徴の比較(一部を抜粋・要約)

表を見ると、発達の遅れと顔立ちの特徴は多くの例で共通しています。一方で、心臓や腎臓の合併、けいれんの有無などは例によってさまざま。欠けた範囲が広いほど症状が重くなりやすい傾向も指摘されています。だからこそ、一人ひとりを丁寧に診ることが欠かせません。

NIPTで微小欠失・部分欠失は分かる?確定診断との違い

12q24.31-q24.33欠失のような微小な欠失・部分欠失は、一般的なNIPTの対象(主に13・18・21トリソミー)には含まれず、確定診断は羊水検査絨毛検査に染色体マイクロアレイを組み合わせて行います。検査で分かる範囲には限りがあります。その線引きを、落ち着いて確認しておきます。

NIPTは、お母さんの血液を使って赤ちゃんの染色体の状態を調べる、非確定的な検査です。主に調べるのは、13・18・21番染色体の数の変化(トリソミー)。陽性でも確定ではなく、確定診断には羊水検査絨毛検査が必要になります。まずこの前提を押さえておくと、結果の受け止め方が変わります。

今回のような小さな部分欠失は、基本のNIPTでは分かりません。詳しく調べたい場合は、羊水などから採った細胞を染色体マイクロアレイで分析します。検査には「どこまで調べられるか」という範囲があること。この限界を知っておくと、何を受けるかを冷静に選べます。

この「どこまで調べるか」で迷う気持ちは、多くの妊婦さんに共通します。Xでも@komamatsunaさんが、NIPTは陰性だったけれど胎児ドックも受けるか悩んでいて、仮に何か見つかってもお腹の中で治療できることがあるのか迷う、とつづっていました。検査で分かる範囲と、その先にできることを整理したうえで選びたい。とても自然な悩みだと感じます。

NIPTで調べられる項目や、確定検査との位置づけは自閉症・発達障害とNIPTの関係を解説した記事で詳しくまとめています。自閉スペクトラムそのものを出生前の検査で判定できるわけではない点も、あわせて確認してください。羊水検査の実際は羊水検査についての記事が参考になります。

稀な疾患こそ専門家に相談する意義

報告が少ない稀な疾患ほど、遺伝カウンセリングなど専門家への相談が、正確な情報と気持ちの整理の両方を支えてくれます。ひとりで抱え込まず、専門の窓口を頼ってください。相談することで見えてくるものを整理します。

遺伝カウンセリングでは、検査の内容や結果の意味、家族への影響などを、専門家と一緒に確認できます。稀な疾患は情報がまとまっておらず、ネットの断片的な情報だけでは不安が募りがちです。専門家と話すことで、何が分かっていて何がまだ分からないのかを、落ち着いて線引きできます。

実際に、検査を受ける前から相談の場を活用する方もいます。Xでも@Tamago_1003さんが、NIPTを受けるつもりで、その日に遺伝カウンセリングも受けてきたとつづっていました。年齢のことも踏まえて、専門家に直接確認しながら進める姿勢は、とても心強いものだと感じます。迷いがあるときこそ、相談が一歩を後押ししてくれます。

ヒロクリニックNIPTでは、産婦人科・小児科・臨床遺伝の専門医が連携し、医師による遺伝カウンセリングを行っています。妊娠期の検査に関する情報は日本産科婦人科学会の発信も参考になります。信頼できる情報にあたりながら、納得して進めてください。

よくある質問

Q. 12q24.31-q24.33欠失はどのくらい稀ですか?

非常に稀な染色体の部分欠失です。医学文献をたどっても、この範囲の欠失として報告されているのは数例から十数例ほどしかありません。数が少ないため症状の幅もまだ十分には分かっておらず、一例ずつの記録が診断や見通しの手がかりになります。気になる場合は、遺伝の専門家に相談してください。

Q. どんな特徴や症状が報告されていますか?

報告されている主な特徴は、発達の遅れ・知的障害・自閉スペクトラム的な特性・特徴的な顔立ちです。加えて、心臓や腎臓の合併、けいれん傾向などが記録された例もあります。ただし現れ方は一人ひとり異なり、必ずこうなるわけではありません。「こう報告されている」という形で受け止めてください。

Q. 原因は親から遺伝したものですか?

多くの場合、親から受け継いだものではなく、その子で新しく生じたde novo(デノボ)の変化と報告されています。つまり、親の体質や妊娠中の過ごし方が原因ではないと理解して差し支えありません。まれに家族内で関連する例もあるため、詳しくは遺伝カウンセリングで確認してください。

Q. どうやって診断されますか?

診断の中心は、染色体マイクロアレイという検査です。染色体のどこが、どれくらいの範囲で欠けているかを細かく調べられます。妊娠中に確定診断を行う場合は、羊水検査絨毛検査で採った細胞を、この染色体マイクロアレイで分析します。通常の染色体検査では見つけにくい小さな過不足も捉えられます。

Q. NIPTでこの欠失は分かりますか?

一般的なNIPTの対象は主に13・18・21トリソミーで、このような微小な欠失・部分欠失は基本の検査では分かりません。NIPT自体も非確定的な検査で、陽性でも確定ではなく、確定診断には羊水検査絨毛検査が必要です。部分欠失を詳しく調べるには、染色体マイクロアレイを組み合わせます。

Q. 不安なとき、どこに相談すればよいですか?

まずはかかりつけの産婦人科や、遺伝カウンセリングの窓口へ相談してください。稀な疾患は情報がまとまっておらず、断片的な情報だけでは不安が募りがちです。専門家と話すことで、何が分かっていて何がまだ分からないのかを整理できます。最終的な判断は、ご本人と家族の気持ちが尊重されます。

著者・監修

岡 博史(おか ひろし)/医療法人社団福美会 ヒロクリニック統括院長・Labo Director(ラボディレクター)。慶應義塾大学医学部卒業後、日本と米国の医師国家試験に合格し、医学博士を取得。日本に約20人しかいないラボディレクター資格を保有。YouTube「ひろし先生の正しいエビデンス妊娠ch」などで、エビデンスにもとづく妊娠・出生前診断の情報を発信しています。

医師監修 監修日:2021年10月18日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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