こんにちは、未来のあなたと赤ちゃんを笑顔にする「おかひろし」です。
結婚や妊娠を考えたとき、ふと不安になることはありませんか?
「もし、自分たちが気づいていない病気を、赤ちゃんに遺伝させてしまったらどうしよう…」
そんな不安を解消するための検査として、近年注目されているのが**「キャリアスクリーニング(保因者スクリーニング)」**です。
しかし、「遺伝子検査」と聞くと、「怖い結果が出たらどうしよう」「自分は健康だから関係ない」と思われる方も多いかもしれません。
実は、私たち人間は誰でも、自分では気づかない遺伝子の変化(変異)をいくつか持っているのが普通です。
今回は、メンデルの法則などの基礎知識から、キャリアスクリーニングで分かること、そして未来の赤ちゃんのために今できる準備について、医師の視点で分かりやすく解説します。
まず、誤解を解いておきたい重要な事実があります。
それは、**「健康な人であっても、誰もが5〜10個以上の遺伝子変異(病気の因子)を持っている」**ということです。
私たちの体を作る設計図(遺伝子)は、父親由来と母親由来の2本がペアになって存在しています。
多くの遺伝性疾患(常染色体潜性遺伝など)は、このペアの**「両方」**に異常がある場合にのみ発症します。
つまり、「キャリア」であること自体は病気ではありませんし、珍しいことでもありません。私たち全員が何らかのキャリアである可能性が高いのです。

問題となるのは、**「夫婦の組み合わせ」です。
もし、あなたとパートナーが、偶然にも「同じ遺伝子疾患のキャリア」**だった場合、お子さんに遺伝する確率は以下のようになります。
「25%(4人に1人)」という数字をどう捉えるでしょうか?
決して低い確率ではありません。日本人でも、約40人に1人は特定の遺伝性疾患のキャリアだと言われています。
「健康な夫婦から、ある日突然、重い病気を持つ赤ちゃんが生まれる」という出来事は、この25%の確率が偶然重なった時に起こるのです。
この遺伝の仕組みを150年以上前に発見したのが、オーストリアの修道士、グレゴール・メンデルです。
彼はエンドウ豆の実験(丸い豆としわの豆、黄色と緑色など)を通じて、親の特徴がどのように子へ伝わるかを解明しました。
メンデルが発見した「潜性遺伝(劣性遺伝)」の法則は、現代のキャリアスクリーニングの基礎となっています。
「隠れている形質(遺伝子変異)」同士が出会った時だけ、その特徴が現れる。
このシンプルなルールが、人間の2万個以上の遺伝子にも当てはまるのです。
かつては「運命」としか言えなかったこの遺伝の法則を、科学の力で事前にチェックできるようになったのが、現代のキャリアスクリーニングなのです。

「ヒトゲノム計画」の完了により、私たちは全遺伝子の配列を知ることができました。
現在のキャリアスクリーニングでは、次世代シーケンサー(NGS)という最新技術を使い、一度の検査で200種類以上の遺伝性疾患リスクを調べることが可能です。
代表的な疾患をいくつかご紹介します。
筋肉を作る遺伝子の異常により、全身の筋力が徐々に低下する病気です。
特定の栄養素(フェニルアラニン)を分解できず、脳にダメージを与える病気です。
知的障害や自閉スペクトラム症(ASD)の原因となる遺伝子変異です。
粘り気のある分泌物が肺や消化器に詰まり、呼吸障害などを起こす病気です。
近年、特に注目されているのがSMAです。かつては乳児期に亡くなることも多い難病でしたが、画期的な**遺伝子治療薬(ゾルゲンスマなど)**が登場しました。
発症前に発見し、早期に投与できれば、劇的な効果が期待できます。キャリアスクリーニングの意義が、単なる「予測」から「治療への架け橋」へと進化しているのです。
「遺伝子検査」と聞くと大掛かりな手術などをイメージされるかもしれませんが、方法は驚くほど簡単です。
クリニックで少量の採血をするか、専用のキットに唾液を入れるだけ。
痛みや体への負担はほとんどありません。結果は通常2〜3週間ほどで分かります。
もし、ご夫婦ともに陽性(同じ遺伝子のキャリア)だと分かったら。
ショックを受けるかもしれませんが、それは**「絶望」ではありません。**
事前にリスクを知ることで、多くの選択肢と対策が生まれます。
「知らずに産んで、発症してから慌てる」のと、「知った上で、最善の準備をして迎える」のとでは、ご家族と赤ちゃんの未来は大きく変わります。
今回のポイントをまとめます。
キャリアスクリーニングは、決して「悪い結果を探す検査」ではありません。
**「自分たちの体の情報を正しく知り、赤ちゃんを迎えるための“地図”を手に入れる検査」**だと考えてください。
「病気のタネ」があるかどうかを知ることは、決してパンドラの箱を開けることではありません。
それは、未来の家族を守るための、愛ある選択の一つです。
当クリニックでは、検査前の遺伝カウンセリングから、結果に基づいたフォローアップまで、専門医が丁寧サポートいたします。
少しでも気になった方は、ぜひ一度ご相談ください。
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