脳皮質異形成と他の脳奇形を伴う複合体6型(CDCBM6)

医師からCortical Dysplasia, Complex, with Other Brain Malformations 6という非常に長く、難解な診断名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。

生まれたばかりの赤ちゃん、あるいは乳幼児期のお子様に、日本語の定まった呼び方もまだ浸透していないような難病の診断が下り、計り知れないショックと不安の中にいらっしゃることと思います。特に、この病気は世界的に見ても報告数が少なく、希少疾患の一つに数えられるため、日本語で書かれた詳しい情報はインターネット上でもほとんど見当たりません。医師であっても、小児神経や遺伝の専門家でなければ詳しく知らないことも珍しくない疾患概念です。

この長い診断名を日本語に訳すと、脳皮質異形成と他の脳奇形を伴う複合体6型となります。医療現場や医学論文では、頭文字をとってCDCBM6(シー・ディー・シー・ビー・エム・シックス)と呼ばれることが一般的です。

この病気は、お母さんのお腹の中で脳が作られる過程において、神経細胞の並び方や脳の構造の形成に何らかの変化が生じた状態です。その原因として、ZIC1という特定の遺伝子に変化が起きていることが分かっています。

脳奇形という言葉や6型という数字に圧倒されてしまうかもしれませんが、この数字は発見された順番や遺伝子の種類を区別するための番号であり、単に重症度を表す数字ではありません。

また、原因が遺伝子にあることが分かったということは、これから起こりうることへの対策が立てやすくなり、お子さんに合った療育やケアのプランを考えるための地図を手に入れたということでもあります。

概要:どのような病気か

脳皮質異形成と他の脳奇形を伴う複合体6型(CDCBM6)は、生まれつきの遺伝子の変化によって、脳の形成、特に大脳皮質と呼ばれる脳の表面部分や、小脳と呼ばれるバランスを司る部分の形成に影響が出る疾患です。

まず、この長い病名の意味を分解して理解していきましょう。

脳皮質異形成とは

脳の表面には、神経細胞が整然と層をなして並んでいます。これを大脳皮質といいます。脳が発達する過程で、神経細胞は脳の深部で生まれ、表面に向かって移動し、正しい場所に整列します。このプロセスを神経細胞移動といいます。

この移動や整列がうまくいかず、層構造が乱れたり、脳のしわが厚くなったり、あるいはしわがなくなってつるつるになったりする状態を、脳皮質異形成といいます。

他の脳奇形を伴うとは

CDCBM6では、大脳皮質だけでなく、他の部分にも構造的な特徴が見られます。特によく見られるのが、ダンディー・ウォーカー奇形と呼ばれる小脳の形成不全や、右脳と左脳をつなぐ脳梁の形成不全です。

複合体とは

これらの症状が組み合わさって現れる症候群であることを意味しています。

6型とは

CDCBMには原因となる遺伝子によっていくつかのタイプがあり、ZIC1という遺伝子の変異によるものが6型と分類されています。

つまり、CDCBM6はZIC1遺伝子の変化により、大脳や小脳の形や構造がうまく作られず、それによって発達の遅れやてんかんなどの症状が現れる病気です。

この病気は非常に稀で、正確な頻度は分かっていませんが、世界でも報告例は限られています。

主な症状

CDCBM6の症状は、脳の構造的な特徴、神経学的な症状、そして発達の特徴に大きく分けられます。お子さんによって症状の重さや出方は異なりますが、これまでに報告されている代表的な特徴について詳しく見ていきましょう。

1. 脳の構造的な特徴(画像検査で見つかるもの)

MRI検査などで分かる脳の形の特徴は、この病気の診断の決め手となる重要な要素です。

ダンディー・ウォーカー奇形

CDCBM6の最も特徴的な所見の一つです。小脳の中央部にある小脳虫部という部分が小さかったり欠けていたりして、その周りに脳脊髄液がたまる嚢胞(のうほう)ができる状態です。これにより、運動のバランスや協調運動に影響が出ることがあります。また、水頭症を合併しやすくなります。

脳梁の欠損・低形成

右脳と左脳をつないで情報をやり取りする架け橋である脳梁が、薄かったり、部分的に欠けていたり、完全になかったりすることがあります。

大脳皮質の形成異常

脳の表面のしわが少なく平坦に近い滑脳症(かつのうしょう)のような状態や、しわが少なく分厚くなる多小脳回(たしょうのうかい)や厚脳回(こうのうかい)といった状態が見られます。これにより、脳の機能全体に影響が及びます。

脳室拡大

脳の中にある脳室という部屋が大きくなっていることがあります。

2. 神経学的な症状

脳の構造の変化に伴って、様々な神経症状が現れます。

筋緊張の異常

赤ちゃんの頃は、体がふにゃふにゃとして柔らかい筋緊張低下が見られることが非常に多いです。抱っこした時にずっしりと重く感じたり、首のすわりが遅れたりする原因になります。

成長とともに、逆に手足の筋肉が突っ張って硬くなる痙縮(けいしゅく)が見られるようになり、手足の自由が利きにくくなることもあります。

てんかん発作

多くの患者さんでてんかん発作が見られます。発症時期は乳児期から幼児期と幅広いです。発作のタイプも様々で、体の一部がピクつく発作や、意識がぼんやりする発作、全身がガクガクする発作などがあります。

薬でコントロールできる場合もありますが、中には複数の薬を使っても発作が止まりにくい難治性てんかんとなることもあります。

小頭症または大頭症

頭の大きさが年齢の平均よりも極端に小さい小頭症が見られることがあります。一方で、水頭症などを合併している場合は、逆に頭が大きくなる大頭症となることもあり、個人差があります。

3. 発達と知能の症状

脳全体の形成に関わる病気であるため、発達への影響は避けられません。

重度の発達遅滞

首がすわる、お座りをする、ハイハイをする、歩くといった運動面の発達が、一般的なペースよりもかなりゆっくりになります。

多くの場合、歩行の獲得には長い時間がかかるか、あるいは車椅子などの補助具が必要になることがあります。

知的障害

言葉の理解や発語など、知的な発達にも遅れが見られます。重度の知的障害を伴うことが一般的です。言葉によるコミュニケーションが難しい場合もありますが、表情や声のトーン、身振りなどで感情を伝えることは可能です。

4. その他の身体症状

顔つきの特徴

おでこが広い、耳の位置が低い、鼻が短いなど、いくつかのお顔立ちの特徴が報告されていますが、これらは個人差が大きく、CDCBM6特有のものと一目で分かるほどではありません。

視覚・聴覚の問題

脳の機能に関連して、目で見ているものを脳で処理するのが苦手な皮質視覚障害や、難聴が見られることがあります。

原因

なぜ、脳の形が変わったり、発達が遅れたりするのでしょうか。その原因は、脳の設計図の一部である遺伝子の働きにあります。

ZIC1遺伝子の役割

CDCBM6の原因は、第3番染色体にあるZIC1(ジック・ワン)という遺伝子の変異です。

この遺伝子は、ジンクフィンガータンパク質という種類のタンパク質を作るための設計図です。

ZIC1遺伝子は、お母さんのお腹の中で赤ちゃんが育つ初期段階において、非常に重要な司令塔の役割を果たしています。

具体的には、以下のような役割があります。

小脳の形成:小脳が正しい形に作られるように指令を出します。

神経細胞の移動と配置:大脳皮質の神経細胞が正しい場所に移動し、整列するように調整します。

骨格の形成:頭蓋骨や背骨の形成にも関わっています。

遺伝子の変化による影響

ZIC1遺伝子に変異が起きると、この司令塔としての機能が失われたり、誤った指令を出したりしてしまいます。

すると、小脳が十分に育たずにダンディー・ウォーカー奇形になったり、神経細胞が途中で迷子になって脳のしわがうまく作れなかったりします。

家を建てることに例えるなら、設計図の重要なページが書き換わってしまったために、柱の位置がずれたり、部屋の壁が作られなかったりするような状態です。

その結果、脳の構造が変化し、様々な症状が引き起こされるのです。

遺伝について

多くのご家族が、親から遺伝したのか、妊娠中の生活に問題があったのかとご自身を責めてしまわれます。

しかし、CDCBM6のほとんどのケースは、新生突然変異(de novo変異)によるものです。

これは、ご両親の遺伝子には全く異常がなく、精子や卵子が作られる過程、あるいは受精した直後の細胞分裂の段階で、偶然にZIC1遺伝子に変化が起きたことを意味します。

つまり、ご両親のどちらかのせいで遺伝したわけではありません。また、妊娠中のお母さんの食事、お薬、ストレス、環境などが原因で起きるものでも決してありません。誰にでも起こりうる、生命の誕生における偶然の現象なのです。

診断と検査

診断は、症状の観察、画像検査、そして遺伝子検査を組み合わせて行われます。

1. 画像検査(MRI)

CDCBM6を疑う上で、MRI検査は最も重要な検査です。

脳の断層写真を撮ることで、以下のような特徴がないかを詳しく調べます。

小脳の形(ダンディー・ウォーカー奇形や小脳虫部低形成がないか)

脳梁の有無や形

脳の表面のしわの状態(厚脳回や多小脳回などがないか)

脳室の大きさ

これらの複数の特徴が組み合わさって見られる場合、CDCBM6などの遺伝子疾患が疑われます。

2. 脳波検査

てんかん発作がある場合や、発作が疑われるような動作が見られる場合に行われます。

脳の電気活動を記録し、てんかん性の波(スパイク)が出ていないかを確認します。発作のタイプを特定し、治療薬を決めるために不可欠な検査です。

3. 遺伝学的検査

確定診断のためには、血液を採取してDNAを調べる検査が必要です。

MRIで特徴的な脳の形が見つかっても、それだけでCDCBM6と断定することはできません。他の遺伝子(TUBA1Aなど)でも似たような脳の形になることがあるからです。

近年急速に普及してきた次世代シーケンサーという技術を用いた全エクソーム解析(WES)や、脳奇形に関連する遺伝子パネル検査が行われることが一般的です。

これにより、ZIC1遺伝子に変異があることが確認されれば、CDCBM6という確定診断に至ります。

治療と管理

現在の医学では、遺伝子の変化そのものを修復して脳の形を元に戻すような根本的な治療法はまだ確立されていません。

しかし、それぞれの症状に対して適切な治療(対症療法)とサポート(療育)を行うことで、お子さんの苦痛を和らげ、持っている力を最大限に引き出し、生活の質(QOL)を高めることは十分に可能です。

1. てんかんの治療

てんかん発作をコントロールすることは、脳の発達を守るためにも非常に重要です。

抗てんかん薬による治療が中心となります。発作のタイプに合わせて、バルプロ酸、レベチラセタム、クロバザム、トピラマートなど、様々なお薬が試されます。

一つのお薬で止まらない場合は、複数を組み合わせたりします。難治性の場合は、ケトン食療法などの食事療法が検討されることもあります。

2. 水頭症の治療

ダンディー・ウォーカー奇形に伴って水頭症(脳室に水がたまりすぎて脳を圧迫する状態)が進行した場合は、脳神経外科的な手術が必要になることがあります。

余分な脳脊髄液をお腹の中に流すシャント手術などが行われます。これにより、脳への圧迫を防ぎ、頭痛や吐き気などの症状を改善します。

3. 発達支援と療育(リハビリテーション)

早期からの療育が、お子さんの成長と生活の安定にとって非常に重要です。

理学療法(PT)

体の柔らかさ(筋緊張低下)や、逆に筋肉の突っ張り(痙縮)に対してアプローチします。

首すわりやお座りの練習、関節が硬くならないようなマッサージやストレッチを行います。

歩行が難しい場合は、座位保持装置(座るための椅子)や車椅子、バギー、立位台など、お子さんの体に合った福祉用具を作る際にも専門的なアドバイスを受けます。適切な姿勢を保つことは、呼吸や食事をスムーズにするためにも大切です。

作業療法(OT)

手先の感覚を養ったり、遊びを通じて外界への興味を引き出したりします。また、食事や着替えの介助方法など、日常生活をスムーズにするための工夫を学びます。

言語聴覚療法(ST)

言葉の理解を促すだけでなく、コミュニケーションの方法を探ります。言葉が出にくい場合でも、絵カードやスイッチ、視線入力装置などを使うことで意思疎通ができるようになることがあります。

また、食べる機能(摂食嚥下)の訓練も行います。飲み込みが難しい場合は、食事の形態(とろみの調整など)や介助の姿勢について指導を受けます。

4. 栄養と呼吸の管理

摂食・嚥下管理

飲み込む力が弱く、口から十分に栄養が摂れない場合は、鼻からチューブを入れたり、お腹に小さな穴を開けて直接胃に栄養を入れる胃ろうを作ったりして、十分な栄養を確保します。胃ろうは、誤嚥のリスクを減らし、お子さんとご家族の食事時間のストレスを軽減するための有効な手段です。

呼吸管理

筋緊張が弱いと呼吸をする力も弱くなることがあります。風邪を引いたときに痰が出しにくかったり、睡眠中に呼吸が浅くなったりすることがあります。必要に応じて吸引器を使用したり、在宅酸素療法を行ったりします。

まとめ

脳皮質異形成と他の脳奇形を伴う複合体6型(CDCBM6)についての重要なポイントを振り返ります。

病気の本質

ZIC1遺伝子の変異により、脳の形成段階で設計図の調整がうまくいかず、大脳や小脳の構造に変化が生じる先天性の疾患です。

主な特徴

ダンディー・ウォーカー奇形(小脳の異常)、脳梁欠損、大脳皮質の形成異常(しわの異常)などの画像所見と、重度の発達遅滞、てんかん、筋緊張異常が特徴です。

治療の方針

てんかん発作のコントロール、水頭症への対応、そしてリハビリテーションによる発達支援が治療の中心となります。

原因

多くは突然変異によるもので、親のせいではありません。

ケアの要点

医療的なケアだけでなく、お子さんの「できること」や「好きなこと」に目を向け、心地よい生活環境を整えることが大切です。

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