発達性およびてんかん性脳症7型(Developmental and epileptic encephalopathy 7)

親子

医師からDevelopmental and epileptic encephalopathy 7という非常に長く、聞き慣れない診断名を告げられ、情報を求めてこのページにたどり着いたご家族の皆様へ。

生まれたばかりの赤ちゃん、あるいは生後間もない時期に、日本語の定まった呼び方もまだ浸透していないような難病の診断が下り、計り知れないショックと不安の中にいらっしゃることと思います。特に、この病気は世界的に見ても希少疾患の一つに数えられるため、日本語で書かれた詳しい情報はインターネット上でもほとんど見当たりません。

この長い診断名を日本語に訳すと、発達性およびてんかん性脳症7型となります。医療現場では、頭文字をとってDEE7(ディー・イー・イー・セブン)と呼ばれることが一般的です。また、原因となる遺伝子の名前をとってKCNQ2脳症やKCNQ2関連てんかん性脳症と呼ばれることも増えています。

この病気は、生まれて数日という非常に早い時期にてんかん発作が始まり、それとともに全体的な発達の遅れが見られるという特徴があります。その原因として、KCNQ2という特定の遺伝子に変化が起きていることが分かっています。

脳症という言葉や7型という数字に圧倒されてしまうかもしれませんが、この数字は発見された順番や遺伝子の種類を区別するための番号であり、重症度を表す数字ではありません。

また、原因が遺伝子にあることが分かったということは、これから起こりうることへの対策が立てやすくなり、お子さんに合ったお薬選びや療育のプランを考えるための地図を手に入れたということでもあります。

概要:どのような病気か

発達性およびてんかん性脳症7型(DEE7)は、生まれつきの遺伝子の変化によって、脳の神経細胞の働きに影響が出る疾患です。

まず、この発達性およびてんかん性脳症という病名グループの意味を理解することが大切です。

発達性とは、生まれ持った遺伝子の変化そのものが、脳の発達や成長に影響を与えていることを意味します。つまり、てんかん発作があるから発達が遅れるだけでなく、発作がなくても発達に課題が生じる体質であることを示しています。

てんかん性とは、頻繁なてんかん発作や、脳波の激しい乱れが、脳の機能や発達にさらなる悪影響を与えている状態を指します。

脳症とは、脳全体の働きに広範な影響が出ている状態を指す医学用語です。

つまり、DEE7は遺伝子の影響による発達の遅れと、てんかん発作による脳への負担の二つの要素が合わさって、発達や神経の症状が現れる病気です。

この7型は、KCNQ2(ケー・シー・エヌ・キュー・ツー)という遺伝子の変異によって引き起こされることが明らかになっています。KCNQ2遺伝子の変異は、良性家族性新生児てんかんという、成長とともに自然に治る軽いてんかんの原因になることもありますが、DEE7はその中でも症状が重く出るタイプを指します。以前は、大田原症候群や早期乳児てんかん性脳症(EIEE)として診断されていたお子さんの中に、この遺伝子変異を持つ方が多く含まれていることがわかってきました。

主な症状

DEE7の症状は、特徴的なてんかん発作、発達の遅れ、そして身体的な特徴の三つに大きく分けられます。お子さんによって症状の重さや出方は異なりますが、これまでに報告されている代表的な特徴について詳しく見ていきましょう。

1. てんかん発作

DEE7の最大の特徴は、生後1週間以内、時には生後数時間という新生児期にてんかん発作が始まることです。

発症時期

多くの場合、生後2日から3日頃に発症します。赤ちゃんが産院にいる間に発作に気づかれることがほとんどです。

発作のタイプ

最も特徴的なのは強直発作と呼ばれるものです。これは、手足がピーンと突っ張って硬くなり、顔を赤くしたり青くしたりする発作です。

片方の手足だけが動く焦点発作が見られることもあります。

また、自律神経症状といって、発作中に呼吸が止まってしまう無呼吸や、顔色が悪くなるチアノーゼ、心拍数の変化などを伴うことがよくあります。そのため、最初は呼吸器の病気や心臓の病気を疑われることもあります。

発作の経過

新生児期から乳児期にかけては発作が頻繁に起きますが、数ヶ月から数年経つと、発作の回数は減ったり、消失したりすることもあります。しかし、発作が落ち着いた後も、次に述べる発達の課題は続くことが一般的です。

2. 発達と神経の症状

発作と並んで、重度の発達の遅れが見られます。これは、発作によるダメージだけでなく、遺伝子の変異自体が脳の発達に影響しているためです。

重度の発達遅滞

首がすわる、目でものを追う、お座りをする、歩くといった運動面の発達と、言葉を理解する、話すといった精神面の発達の両方が、一般的なペースよりもかなりゆっくりになります。

多くの場合、重度の知的障害を伴います。言葉による会話は難しいことが多いですが、声のトーンや表情、全身の動きで快・不快などの感情を伝えることができるお子さんもいます。

筋緊張の異常

生まれた直後は、体がふにゃふにゃとして柔らかい筋緊張低下が見られることが多いです。抱っこした時にずっしりと重く感じたり、関節が柔らかすぎたりします。

成長とともに、逆に手足の筋肉が突っ張って硬くなる痙縮や、筋肉が勝手に動いてしまう不随意運動が見られるようになることもあります。特に四肢麻痺といって、手足の自由が利きにくい状態になることも少なくありません。

視覚的な反応の乏しさ

目そのものの構造には問題がなくても、脳が映像を処理することが苦手なために、おもちゃを目で追わなかったり、視線が合いにくかったりすることがあります。これを皮質視覚障害と呼ぶこともあります。

3. その他の身体症状

DEE7のお子さんには、神経以外の身体的な課題も見られることがあります。

哺乳障害と摂食障害

生まれた直後から、おっぱいやミルクを飲む力が弱い哺乳障害が見られることがあります。また、離乳食が始まっても、食べ物を飲み込むのが苦手な嚥下障害が見られることがあります。

呼吸の問題

発作に伴って呼吸が止まることがあるほか、筋緊張が弱いために呼吸をする力が弱く、風邪を引いたときに痰が出しにくいこともあります。

原因

なぜ、生まれたばかりの頃からてんかんが起きたり、発達が遅れたりするのでしょうか。その原因は、脳の神経細胞にある電気信号の調整役の故障にあります。

KCNQ2遺伝子の役割

DEE7の原因は、第20番染色体にあるKCNQ2(ケー・シー・エヌ・キュー・ツー)という遺伝子の変異です。

この遺伝子は、カリウムチャネルという、脳の神経細胞の表面にある小さな穴(通り道)を作るための設計図です。

脳の神経細胞は、電気信号を使って情報をやり取りしています。この電気信号を発生させたり、止めたりするために、細胞の内外でナトリウムやカリウムといったイオンが出入りします。

KCNQ2遺伝子が作るカリウムチャネル(Kv7.2チャネルとも呼ばれます)は、興奮した神経細胞を鎮め、電気信号を止めるブレーキのような役割をしています。M電流という専門的な名前の電流を作り出し、神経が勝手に興奮しすぎないように調整しているのです。

遺伝子の変化による影響

KCNQ2遺伝子に変異が起きると、このカリウムチャネルの形が変わってしまったり、数が減ってしまったりします。

特にDEE7の場合、ドミナント・ネガティブ効果といって、変異したチャネルが正常なチャネルの働きまで邪魔をしてしまい、全体としてブレーキの効きが極端に悪くなってしまうような変化が起きていると考えられています。

その結果、神経細胞の興奮を抑えることができず、ほんの少しの刺激で神経が暴走してしまい、激しいてんかん発作が引き起こされます。

また、このカリウムチャネルは、脳が作られる時期の神経細胞の成長やネットワーク形成にも重要な役割を果たしているため、うまく働かないことで脳の発達そのものにも遅れが生じると考えられています。

遺伝について

多くのご家族が、親から遺伝したのか、妊娠中の生活に問題があったのかとご自身を責めてしまわれます。

しかし、重症型であるDEE7のほとんどのケースは、新生突然変異(de novo変異)によるものです。

これは、ご両親の遺伝子には全く異常がなく、精子や卵子が作られる過程、あるいは受精した直後の細胞分裂の段階で、偶然にKCNQ2遺伝子に変化が起きたことを意味します。

つまり、ご両親のどちらかのせいで遺伝したわけではありません。また、妊娠中のお母さんの食事、お薬、ストレス、環境などが原因で起きるものでも決してありません。誰にでも起こりうる、生命の誕生における偶然の現象なのです。

(※稀に、親御さんがごく軽度の症状を持っていて遺伝する場合や、性腺モザイクといって精子や卵子の一部にだけ変異がある場合もありますが、多くは突然変異です。)

診断と検査

診断は、症状の観察、脳波検査、画像検査、そして遺伝子検査を組み合わせて行われます。

1. 脳波検査

てんかん発作の診断や、脳の活動状態を調べるために不可欠な検査です。

DEE7のお子さんの脳波では、サプレッション・バーストと呼ばれる特徴的なパターンが見られることがよくあります。これは、脳波が平坦になる時期(サプレッション)と、激しい波が出る時期(バースト)を交互に繰り返すもので、脳の機能が重度に障害されていることを示すサインの一つです。また、多焦点性スパイクといって、脳のあちこちからてんかんの波が出ていることもあります。

2. 画像検査(MRI)

脳の形や構造を詳しく調べるためにMRI検査が行われます。

発症初期(生後数日〜数週間)には、脳の形に明らかな異常は見られないことが多いです。しかし、発作が長く続いた後や、年齢が進んでくると、脳が少し萎縮して小さくなっている様子や、脳梁(右脳と左脳をつなぐ部分)が薄くなっている様子、髄鞘化(神経の伝達速度を上げるための被覆)が遅れている様子が見られることがあります。

3. 遺伝学的検査

確定診断のためには、血液を採取してDNAを調べる検査が必要です。

KCNQ2遺伝子の変異は、新生児てんかんの主要な原因の一つであるため、新生児期に原因不明のけいれんがあった場合、比較的早い段階で疑われることがあります。

近年普及してきた次世代シーケンサーを用いた遺伝子パネル検査や全エクソーム解析を行うことで、KCNQ2遺伝子の変異が見つかり、診断が確定します。

治療と管理

現在の医学では、遺伝子の変化そのものを修復して病気を根本から治す治療法はまだ確立されていません。

しかし、それぞれの症状に対して適切な治療(対症療法)とサポート(療育)を行うことで、お子さんの苦痛を和らげ、持っている力を最大限に引き出し、生活の質(QOL)を高めることは十分に可能です。

1. てんかんの治療

てんかん発作を減らすために、抗てんかん薬による治療を行います。

ここで非常に重要なのが、KCNQ2脳症(DEE7)には相性の良い薬があるということです。

原因が「カリウムチャネルの不具合による過剰興奮」であるため、神経の興奮を抑えるナトリウムチャネル遮断薬と呼ばれるタイプのお薬が非常によく効くことが知られています。

具体的には、カルバマゼピン(テグレトール)、フェニトイン(アレビアチン)などです。

これらのお薬を使うことで、劇的に発作が減ったり、消失したりするケースが多く報告されています。これは、原因遺伝子が特定されたことによる大きなメリットの一つです。

もちろん、全ての方に効くわけではなく、他の抗てんかん薬(フェノバルビタール、レベチラセタムなど)を併用することもあります。

2. 発達支援と療育(リハビリテーション)

早期からの療育が、お子さんの成長と生活の安定にとって非常に重要です。

理学療法(PT)

体の柔らかさや、逆に筋肉の突っ張りに対して、楽な姿勢が取れるようにクッションを調整したり、関節が硬くならないようなマッサージやストレッチを行ったりします。座位保持装置(座るための椅子)や車椅子、バギーなど、お子さんの体に合った福祉用具を作る際にも専門的なアドバイスを受けます。

作業療法(OT)

手先の感覚を養ったり、遊びを通じて外界への興味を引き出したりします。また、入浴や着替えの介助方法など、日常生活をスムーズにするための工夫を学びます。

言語聴覚療法(ST)

言葉の理解を促すだけでなく、食べる機能(摂食嚥下)の訓練も行います。飲み込みが難しい場合は、食事の形態(とろみの調整など)や介助の姿勢について指導を受け、誤嚥性肺炎を防ぎながら少しでも口から食べる楽しみを持てるようにサポートします。

赤ちゃん

3. 栄養と呼吸の管理

飲み込む力が弱く、口から十分に栄養が摂れない場合は、鼻からチューブを入れたり、お腹に小さな穴を開けて直接胃に栄養を入れる胃ろうを作ったりして、十分な栄養を確保します。胃ろうは、誤嚥のリスクを減らし、お子さんとご家族の食事時間のストレスを軽減するための有効な手段です。

また、呼吸が弱い場合や、痰が出しにくい場合は、吸引器を使ったり、在宅酸素療法を行ったりすることもあります。夜間の呼吸状態を見守るためにモニターを使用することもあります。

4. 感染症対策

筋緊張が弱く、呼吸の力が弱いお子さんは、風邪をこじらせて肺炎になりやすい傾向があります。

手洗いなどの基本的な感染対策に加え、流行期には人混みを避ける、シナジス(RSウイルス予防薬)の適応があれば接種する、インフルエンザなどの予防接種を計画的に受けるなどの対策が大切です。

まとめ

発達性およびてんかん性脳症7型(DEE7)についての重要なポイントを振り返ります。

病気の本質

KCNQ2遺伝子の変異により、脳の神経細胞の興奮を鎮めるブレーキ(カリウムチャネル)が効かなくなり、過剰興奮と発達への影響が出る先天性の疾患です。

主な特徴

生後数日以内の新生児期に始まる強直発作などのてんかん、重度の発達遅滞、初期の筋緊張低下などが特徴です。

治療の鍵

ナトリウムチャネル遮断薬(カルバマゼピンなど)が特効薬的に効く場合があり、早期の診断と治療開始が重要です。

原因

多くは突然変異によるもので、親のせいではありません。

ケアの要点

発作のコントロールだけでなく、リハビリ、栄養管理、呼吸管理、感染症予防など、全身をトータルでケアすることが大切です。

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