MECP2変異による新生児重症脳症

Neonatal Severe Encephalopathy Due To MECP2 Mutations, MECP2

概要

MECP2変異による新生児重症脳症は、男の子に生後まもなくから重い脳の症状が現れる病気です。X連鎖という形式で遺伝し、MECP2 遺伝子の変化が原因となります。

同じ MECP2 遺伝子の変化は、女の子ではレット症候群を引き起こします。男の子はX染色体を1本しか持たないため、症状がはるかに重くなり、生後1〜2年以内に命にかかわることが多いとされています。

原因

MECP2 遺伝子は、MeCP2というたんぱく質の設計図です。MeCP2はDNAのメチル化された部分に結合し、多くの遺伝子のはたらきを調節しています。とくに神経細胞が成熟し、つながりを作るために重要です。

MECP2 はX染色体上にあります。女の子はX染色体を2本持つため、正常な遺伝子がはたらく細胞が残りますが(レット症候群)、男の子は1本しかないため、すべての細胞が影響を受けます

症状

  • 生後まもなくからの著しい筋緊張の低下(ぐったりしている)
  • 哺乳の困難、体重が増えない
  • 難治性のけいれん
  • 呼吸の異常(無呼吸、不規則な呼吸)
  • 運動発達がほとんど進まない
  • 頭囲の増加が止まる(後天性小頭症)
  • 不随意運動、四肢の硬直
  • 多くは生後1〜2年以内に、呼吸器の合併症などで命にかかわります

検査・診断

新生児期からの重い脳症で、他の原因が見つからない男児では、この病気を考えます。MECP2 遺伝子の解析によって確定します。母親が保因者である場合と、新たに生じた変異(de novo)である場合があります

治療

  • 根本的に治す方法は確立していません
  • 抗てんかん薬によるけいれんのコントロール
  • 呼吸のサポート(人工呼吸器を含む)
  • 経管栄養による栄養の管理
  • 理学療法、体位の管理による合併症の予防
  • ご家族への支援と、緩和ケアを含めた話し合い
  • 次のお子さまについての遺伝カウンセリング

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる MECP2 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、MECP2 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

この疾患はX連鎖で遺伝します。お母さまが保因者の場合、息子さんの2分の1が発症し、娘さんの2分の1が保因者になります。キャリアスクリーニングテストでは、お母さまが保因者かどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

MECP2関連の新生児重症脳症は、MECP2(Xq28)の変異を有する男児にみられる表現型である。女児のレット症候群と同一遺伝子でありながら、臨床像は大きく異なる。

レット症候群の女児はX染色体不活化のモザイクにより、正常MeCP2を発現する細胞が約半数存在するため、生後6〜18か月までは正常発達を示す。一方、半接合体の男児では全細胞がMeCP2を欠くため、出生直後から重度の脳症を呈し、通常2歳までに死亡する

男児で生存可能な MECP2 関連疾患としては、(1) 体細胞モザイク、(2) Klinefelter症候群(47,XXY)の合併、(3) 軽症変異(p.Ala140Val など、X連鎖知的障害として発症)がある。

変異の由来は約99%が父由来のde novo変異とされ、母が保因者である割合は低い。ただし母体の生殖細胞モザイクの可能性があるため、再発率は0とは言えず、次子の出生前診断が選択肢となる。遺伝カウンセリングにおいてこの点の説明は重要である。

よくある質問

Q. レット症候群と同じ病気ですか?

A. 原因となる遺伝子は同じ MECP2 ですが、症状の出方が大きく異なります。女の子ではレット症候群、男の子では新生児期からの重い脳症になります。

Q. なぜ男の子のほうが重いのですか?

A. MECP2 はX染色体にあります。女の子はX染色体が2本あり正常な遺伝子がはたらく細胞が残りますが、男の子は1本しかないため、すべての細胞が影響を受けます。

Q. 次の子も同じ病気になりますか?

A. 多くは新しく生じた変異(de novo)で、母親が保因者である割合は低いとされています。ただし、まれに母親の卵子にモザイクとして存在することがあるため、次のお子さまについては遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 治療法はありますか?

A. 現在のところ、根本的に治す治療はありません。けいれんや呼吸の管理、栄養のサポートを行い、ご家族を含めた支援を大切にします。

Q. 出生前に調べられますか?

A. ご家族の変異が分かっている場合には、次の妊娠で出生前診断を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

参考文献

  • Amir RE, Van den Veyver IB, Wan M, et al. Rett syndrome is caused by mutations in X-linked MECP2, encoding methyl-CpG-binding protein 2. Nat Genet. 1999;23(2):185-188.
  • Wan M, Lee SS, Zhang X, et al. Rett syndrome and beyond: recurrent spontaneous and familial MECP2 mutations at CpG hotspots. Am J Hum Genet. 1999;65(6):1520-1529.
  • Villard L. MECP2 mutations in males. J Med Genet. 2007;44(7):417-423.
  • Neul JL, Kaufmann WE, Glaze DG, et al. Rett syndrome: revised diagnostic criteria and nomenclature. Ann Neurol. 2010;68(6):944-950.
  • OMIM #300673 Mental retardation, X-linked, syndromic 13 / MECP2-related severe neonatal encephalopathy
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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