エリス・ヴァン・クレフェルド症候群

Ellis-van Creveld Syndrome, EVC2, EVC

概要

エリス・ヴァン・クレフェルド症候群は、手足の短縮、手の指が多い(多指症)、爪や歯の形成異常、生まれつきの心臓病を特徴とする骨系統疾患です。「軟骨外胚葉異形成症」とも呼ばれます。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、EVC2 遺伝子または EVC 遺伝子(いずれも 4p16)の変化が原因となります。

骨・爪・歯・心臓といくつもの臓器にまたがって症状が出るのが特徴で、およそ半数〜6割のお子さまに先天性の心臓病がみられます。乳児期には心臓と呼吸の問題が見通しを左右しますが、この時期を乗り越えると、多くの方は知的発達に問題がなく成人を迎えます。まれな病気ですが、北米のアーミッシュの集団では特に多いことが知られています。

EVC2・EVC 遺伝子の変化は、別の病気も起こします。片方の親から受け継いだ1つの変化だけで発症する「ワイヤーズ先端顔面異骨症」はずっと軽く、心臓病や目立つ低身長を伴わないのが一般的です。父方・母方の両方の遺伝子に変化がそろうエリス・ヴァン・クレフェルド症候群は、心臓病と狭い胸郭を伴いうる、より重い型にあたります。

原因

EVC2 と EVC は、染色体の上で隣り合って並んでいる2つの遺伝子です。それぞれがつくるたんぱく質は、細胞の表面に1本ずつ生えている「一次繊毛」というアンテナの根もとで、2つ1組になってはたらきます。

一次繊毛は、体づくりのための成長の合図(ヘッジホッグシグナル)を受け取る場所です。EVC2・EVC のはたらきが失われるとこの合図が十分に伝わらず、骨の成長板の軟骨、指の数、歯や爪、心臓の壁のつくられ方に影響が出ます。2つのたんぱく質は組になってはたらくため、どちらの遺伝子の変化でも、ほぼ同じ症状になります。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。通常は、同じ遺伝子(EVC2 どうし、または EVC どうし)に父方・母方由来の変化がそろったときに発症します。

症状

  • 手足の短縮と低身長:特に前腕・すね・指の骨が短くなり、体の先にいくほど短さが目立ちます
  • 多指症:手の小指側に指が1本多いことがほぼすべてのお子さまにみられ、足にみられることもあります
  • 先天性心疾患:およそ半数〜6割にみられ、心房の壁が大きく欠ける心房中隔欠損(単心房に近いもの)や房室中隔欠損が多く、乳児期の見通しを左右します
  • 狭い胸郭:肋骨が短く、新生児期に呼吸が苦しくなることがあります。成長とともに目立たなくなることが多いです
  • 爪の形成異常:小さく、薄く、もろい爪
  • 歯と口の特徴:生まれたときから歯が生えている(出生歯)、歯の数が少ない・形が小さい、上唇と歯ぐきをつなぐひだ(小帯)が多い、または癒着している
  • 膝が内側に寄るX脚(外反膝)
  • 知的発達は通常は正常です

検査・診断

妊娠中の超音波検査で、手足の骨の短縮、多指症、狭い胸郭、心臓の形の異常(房室中隔欠損など)がそろうことから疑われる場合があります。出生後は、多指症・爪や歯の異常・心臓病・手足の短縮という特徴的な組み合わせと、X線検査(短い肋骨、骨盤の特徴的な形、手首の骨の癒合など)から診断が考えられます。心臓病の有無を調べるための心臓超音波検査は欠かせません。

確定診断は遺伝学的検査で行い、EVC2 または EVC 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。症状からこの病気が強く疑われても、一部のお子さまでは変化が見つからないこともあります。軽い型との区別や次のお子さまの見通しを正しくお伝えするために、原因遺伝子を確定することには大きな意味があります。

治療

現時点で、この病気そのものを治す治療はありません。症状ごとに専門の診療科が連携して治療と経過観察を行います。特に生まれてすぐの時期は、心臓と呼吸の状態を確認できる施設での出産・管理が大切です。

  • 心臓病の治療:心臓超音波検査で評価し、必要に応じて薬による治療や手術を行います
  • 呼吸の管理:胸郭が狭く呼吸が苦しい新生児には、酸素投与や人工呼吸などの補助を行います
  • 多指症の手術:手の使いやすさや見た目を考えて、乳幼児期に行うことが一般的です
  • 歯科での継続的な管理:出生歯が授乳の妨げになるときの対応、歯の数が少ない場合の入れ歯や矯正治療など
  • 整形外科での経過観察:X脚や関節の状態を見守り、必要に応じて手術を検討します
  • 成長の見守りとご家族への支援:遺伝カウンセリングを含め、継続的な支えが必要です

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる EVC2, EVC 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、EVC2, EVC 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

エリス・ヴァン・クレフェルド症候群は常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患のため、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

EVC と EVC2 は 4p16 上で互いの5′側を向き合わせた配置(頭部対頭部配置)をとる、相同性のない2遺伝子である。両者の産物は一次繊毛基部の限局した領域で複合体を形成し、Smoothened の下流で GLI 転写因子の活性化を担う。欠損するとヘッジホッグシグナル、とりわけ成長板における Indian hedgehog への応答が低下し、軟骨細胞の増殖・分化が障害される。本症は繊毛病(シリオパチー)の一つと位置づけられ、骨系統疾患の国際分類では短肋骨胸郭異形成症(多指症の有無を問わない)群に含まれる。

本遺伝子座では遺伝形式の異なる2疾患が生じる——①両アレルの機能喪失型変異によるエリス・ヴァン・クレフェルド症候群(常染色体潜性、OMIM #225500)と、②主に C 末端側の短縮型変異がヘテロ接合で優性阻害的にはたらくワイヤーズ先端顔面異骨症(常染色体顕性、OMIM #193530)である。後者は軽度の低身長・軸後性多指・爪と歯の異常にとどまり、心疾患や胸郭低形成は通常伴わない。エリス・ヴァン・クレフェルド症候群のヘテロ接合保因者は通常無症状である。オールド・オーダー・アーミッシュでは EVC の創始者変異により高頻度に認められる。

鑑別としては、窒息性胸郭異形成症(ジュンヌ症候群、DYNC2H1 など)、短肋骨多指症候群(周産期致死型)、口顔指症候群などの他の繊毛病が挙がる。先天性心疾患(共通心房・房室中隔欠損)と外胚葉症状(爪・歯・口腔小帯の異常)の合併は本症を強く示唆する。また、ワイヤーズ先端顔面異骨症との区別は次子再発率が25%(潜性)と50%(顕性)で異なるため、遺伝子診断は遺伝カウンセリングに直結する。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。一方、同じ遺伝子による軽い病気(ワイヤーズ先端顔面異骨症)は顕性遺伝で、確率は2分の1です。再発率が異なるため、原因遺伝子と変化の種類を確定することが重要です。

Q. 妊娠中に分かりますか。

A. 妊娠中期以降の超音波検査で、手足の骨の短縮、多指症、狭い胸郭、心臓の異常から疑われることがあります。ただし、所見がはっきりせず出生後に診断されることもあります。前のお子さまで診断がついている場合は、妊娠早期からの検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 同じ遺伝子で別の病気もあると聞きました。

A. はい。EVC2・EVC 遺伝子の変化は、ワイヤーズ先端顔面異骨症という軽い病気も起こします。こちらは1つの変化だけで発症し、多指症や爪・歯の異常、軽い低身長がみられますが、心臓病や狭い胸郭は通常伴いません。エリス・ヴァン・クレフェルド症候群は、父方・母方の両方に変化がそろう、より重い型です。

Q. 大人になるまで成長できますか。

A. 乳児期には心臓病や呼吸の問題で命にかかわることがありますが、この時期を乗り越えると、多くの方は成人を迎えます。知的発達は通常正常で、低身長はありますが、学校生活や社会生活を送っている方も多くいます。心臓・歯・関節について、長く専門的なフォローを続けることが大切です。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Baujat G, Le Merrer M. Ellis-van Creveld syndrome. Orphanet J Rare Dis. 2007;2:27.
  • Ruiz-Perez VL, Ide SE, Strom TM, et al. Mutations in a new gene in Ellis-van Creveld syndrome and Weyers acrodental dysostosis. Nat Genet. 2000;24(3):283-286.
  • Ruiz-Perez VL, Tompson SW, Blair HJ, et al. Mutations in two nonhomologous genes in a head-to-head configuration cause Ellis-van Creveld syndrome. Am J Hum Genet. 2003;72(3):728-732.
  • Ruiz-Perez VL, Goodship JA. Ellis-van Creveld syndrome and Weyers acrodental dysostosis are caused by cilia-mediated diminished response to hedgehog ligands. Am J Med Genet C Semin Med Genet. 2009;151C(4):341-351.
  • OMIM #225500 Ellis-van Creveld syndrome; EVC. Online Mendelian Inheritance in Man.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

AIチャットで相談する AIチャット