アダムス・オリバー症候群4型

Adams-Oliver Syndrome 4, EOGT

概要

アダムス・オリバー症候群4型は、生まれつき頭のてっぺんの皮膚が一部欠けている「先天性皮膚欠損症」と、手足の指先が短い・欠けているといった「四肢末端の形の違い」を特徴とする病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、EOGT(3p14.1)遺伝子の変化が原因となります。

症状の程度は人によって大きく異なり、小さな頭皮の欠損と指のわずかな短さだけで、日常生活にほとんど支障がない方もいれば、広い範囲の頭皮・頭蓋骨の欠損により手術や慎重な管理が必要な方もいます。4型では、知的な発達は保たれることが多いと報告されています。

アダムス・オリバー症候群は、原因遺伝子によって現在1型から6型までに分けられています。このうち常染色体潜性遺伝をとるのは2型(DOCK6)と4型(EOGT)の2つで、ほかの1型・3型・5型・6型は顕性(優性)遺伝です。同じ潜性遺伝の2型では脳や目の異常、発達の遅れを伴うことが多いのに対し、4型は頭皮と手足の症状が中心で、脳の異常は比較的少ないとされています。

原因

EOGTは、細胞のなかでたんぱく質に小さな糖を付ける酵素の設計図です。

この酵素が糖を付ける相手のひとつが、「Notch(ノッチ)」という、細胞どうしが情報をやりとりするための受け取り役のたんぱく質です。Notch のしくみは、胎児期に血管が正しく枝分かれし、皮膚や骨、手足の先まで栄養を届ける血管網をつくるうえで大切な役割を担っています。EOGT がはたらかないと、このやりとりがうまくいかず、胎児期に頭のてっぺんや手足の先といった体の末端への血流がつくられにくくなり、皮膚や骨の形成が妨げられると考えられています。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。

症状

  • 頭皮の先天性皮膚欠損:多くは頭頂部に見られ、4型ではほぼすべての方に認められる中心的な症状です
  • 頭蓋骨の欠損:皮膚欠損の下の骨が欠けていることがあり、範囲が広いと出血や感染に注意が必要です
  • 手足の指先の形の違い:指が短い、爪が小さい・無い、指先が欠けている、指がくっついているなど。左右で程度が異なることもあります
  • 大理石のような網目状の皮膚の模様(先天性血管拡張性大理石様皮斑)
  • 心臓の形の異常(一部の方)
  • 知的な発達は保たれることが多い:脳の形の異常やてんかんは、同じ潜性遺伝の2型に比べて少ないとされています
  • 同じご家族のなかでも、症状の重さが異なることがあります

検査・診断

出生時の診察で、頭皮の欠損と手足の指先の形の違いから疑われます。頭蓋骨の欠損の有無と範囲を確かめるために頭部のX線検査やCT検査を行い、あわせて心臓の超音波検査や頭部MRI検査でほかの臓器の合併症がないかを調べます。手足の大きな形の違いは、妊娠中の超音波検査で気づかれることもありますが、頭皮の欠損は出生前にはわかりにくいことが多いです。

確定診断は遺伝学的検査で行い、アダムス・オリバー症候群4型では EOGT 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。アダムス・オリバー症候群は型によって遺伝形式が異なり、次のお子さまの見通しも大きく変わるため、原因遺伝子を確定することには大きな意味があります。

治療

現時点で、遺伝子の変化そのものを治す治療はありません。治療は、それぞれの症状に合わせた対症療法が中心です。症状が軽い場合は、特別な治療を必要としないこともあります。

  • 頭皮欠損の創部の管理:小さな欠損は、乾燥や感染を防ぐ処置で自然に皮膚が張ることが多いです
  • 広い頭皮・頭蓋骨欠損への外科的治療:出血や感染を防ぐため、皮膚の移植や頭蓋骨の再建を検討します
  • 手足の形の違いへの対応:機能に支障がある場合は、整形外科・形成外科で手術やリハビリテーションを検討します
  • 合併症の定期的な確認:心臓などの合併症がある場合は、それぞれの専門科で経過をみます
  • ご家族への遺伝カウンセリングと心理的支援

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる EOGT 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、EOGT 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

EOGTは小胞体内腔に局在する、上皮成長因子様ドメイン特異的な O-結合型 N-アセチルグルコサミン転移酵素で、特定の共通配列をもつ上皮成長因子様リピートのセリン・スレオニン残基に糖を付加する。主要な基質は NOTCH1 などの Notch 受容体の細胞外ドメインであり、この修飾はリガンド DLL4 との結合を高め、血管新生における Notch シグナルを支えると考えられている。

アダムス・オリバー症候群の原因遺伝子は、Notch 経路(NOTCH1、DLL4、RBPJ、EOGT)と、細胞骨格を制御する低分子量Gたんぱく質の経路(ARHGAP31、DOCK6)の2群に整理される。EOGT 変異は2013年にアラブ系の近親婚家系で初めて報告され、以後、機能喪失型のホモ接合性または複合ヘテロ接合性変異が複数の民族で見出されている。4型の表現型は頭皮の先天性皮膚欠損と四肢末端横軸欠損が主体で、同じ潜性型の DOCK6 関連(2型)に高頻度な脳室周囲石灰化・多小脳回・てんかん・知的障害・眼異常は比較的まれとされる。ただし報告例数は限られており、表現型の幅については今後の蓄積が必要である。

鑑別としては、アダムス・オリバー症候群のほかの型(1型 ARHGAP31、3型 RBPJ、5型 NOTCH1、6型 DLL4、いずれも顕性)、2型(DOCK6、潜性)、頭皮欠損を単独で示す非症候性の先天性皮膚欠損症、羊膜索症候群(多くは非遺伝性)が挙がる。顕性の型では浸透率が不完全で親が軽症ないし無症状のことがあり、次子再発率が50%(顕性)、25%(潜性)、ほぼ0%(羊膜索などの非遺伝性)と大きく異なるため、遺伝子診断は遺伝カウンセリングに直結する。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この型は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。アダムス・オリバー症候群には顕性遺伝の型もあり、その場合は再発率が2分の1になることがあります。型によって再発率が大きく異なるため、原因遺伝子を確定することが重要です。

Q. 妊娠中に分かりますか。

A. 手足の大きな形の違いは超音波検査で気づかれることがありますが、頭皮の欠損や指先の小さな違いは、妊娠中には見つけにくいことが多いです。前のお子さまで原因遺伝子がわかっている場合は、遺伝学的な出生前検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 1型や2型など、ほかの型とは何が違うのですか。

A. 型の違いは原因となる遺伝子と遺伝形式の違いです。4型は EOGT 遺伝子が原因の潜性遺伝の型で、頭皮と手足の症状が中心となり、知的な発達は保たれることが多いとされています。同じ潜性遺伝の2型では、脳や目の異常、発達の遅れを伴うことが多いと報告されています。

Q. 頭皮の欠損は治りますか。

A. 小さな欠損であれば、適切な処置で数週間から数か月のうちに皮膚が張り、傷あとが残る程度で落ち着くことが多いです。傷あとの部分には髪が生えないことがあります。範囲が広い場合や骨の欠損を伴う場合は、出血や感染を防ぐために手術が必要になることがあり、専門の医療機関での管理が大切です。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Lehman A, Wuyts W, Patel MS. Adams-Oliver Syndrome. In: Adam MP, et al., editors. GeneReviews®. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-.
  • OMIM #615297 Adams-Oliver syndrome 4; AOS4. Online Mendelian Inheritance in Man.
  • Shaheen R, Aglan M, Keppler-Noreuil K, et al. Mutations in EOGT confirm the genetic heterogeneity of autosomal-recessive Adams-Oliver syndrome. Am J Hum Genet. 2013;92(4):598-604.
  • Cohen I, Silberstein E, Perez Y, et al. Autosomal recessive Adams-Oliver syndrome caused by homozygous mutation in EOGT, encoding an EGF domain-specific O-GlcNAc transferase. Eur J Hum Genet. 2014;22(3):374-378.
  • Snape KM, Ruddy D, Zenker M, et al. The spectra of clinical phenotypes in aplasia cutis congenita and terminal transverse limb defects. Am J Med Genet A. 2009;149A(8):1860-1881.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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