ブロムストランド型軟骨異形成症

Chondrodysplasia, Blomstrand Type, PTH1R

概要

ブロムストランド型軟骨異形成症は、骨が本来より早く、硬く、短くできあがってしまうために、手足が極端に短くなる骨系統疾患です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、PTH1R(3p21)遺伝子の変化が原因となります。

多くの骨系統疾患では骨の形成が遅れるのに対し、この病気では骨の成熟(骨化)が年齢に比べて著しく進み、骨の密度が高くなるという、ほかにあまり見られない特徴があります。胸郭が小さく肺が十分に育たないため、多くは死産、または生後まもなく亡くなる重い病気です。報告はごくまれで、妊娠中の超音波検査で手足の短さや胎児水腫から気づかれることがほとんどです。

PTH1R 遺伝子は、変化のしかたによってまったく異なる病気を起こします。はたらきが失われる変化を両親から受け継ぐとこのブロムストランド型軟骨異形成症に、はたらきが一部残る変化ではより軽いアイケン症候群に、逆にはたらきが強まりすぎる変化ではジャンセン型骨幹端軟骨異形成症(顕性遺伝)になります。また、歯が生えてこない「原発性萌出不全」もこの遺伝子の変化で起こります。

原因

PTH1R は、副甲状腺ホルモン(PTH)と、それによく似た「副甲状腺ホルモン関連たんぱく(PTHrP)」の両方を受け取る受け皿(受容体)です。

骨は、まず軟骨でかたちがつくられ、その軟骨が少しずつ骨に置き換わることで伸びていきます。PTHrP はこの受容体を通じて、「軟骨細胞はまだ増え続けて、骨に置き換わるのを待ちなさい」というブレーキの役目を果たしています。受容体がはたらかないとブレーキがきかず、軟骨が十分に増える前に早々と骨に置き換わってしまうため、骨は伸びずに短く、硬く、太くなります。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。近親婚のご家庭からの報告が多いことが知られています。

症状

  • 四肢の極端な短縮:手足の骨が短く太くなります
  • 骨の密度の上昇と骨化の促進:この病気をほかの骨系統疾患と見分ける最も特徴的な所見です
  • 小さな胸郭と肺の低形成:生まれたあとの呼吸を難しくし、予後を左右します
  • 特徴的な顔つき:目が飛び出して見える、鼻が低い、あごが小さいなど
  • 胎児水腫、羊水過多:妊娠中の超音波検査で指摘されます
  • 心臓・血管の異常(大動脈の一部が細くなる大動脈縮窄など)、乳腺や乳頭の形成不全、歯の発生の異常が報告されています
  • 多くは死産、または生後まもなく呼吸不全で亡くなります(はたらきがわずかに残る変化では、やや軽い経過の報告もあります)

検査・診断

妊娠中の超音波検査で、四肢の著しい短縮、小さな胸郭、胎児水腫、羊水過多から疑われます。出生後(または死産後)のX線検査では、骨が全体に白く濃く写り(骨密度の上昇)、本来はまだ骨になっていないはずの部分まで骨化が進んでいることが特徴です。

確定診断は遺伝学的検査で行い、ブロムストランド型軟骨異形成症では PTH1R 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。見た目が似ていても遺伝の形式が異なる骨系統疾患が多いため、次のお子さまの見通しを正しくお伝えするうえで、原因遺伝子を確定することには大きな意味があります。

治療

現時点で、この病気を治す治療はありません。出生前に診断がついた場合は、ご家族と医療チームが十分に話し合い、出生後の方針をあらかじめ決めておくことが大切です。

  • 出生前の遺伝カウンセリング:診断、見通し、次のお子さまへの影響についてご説明します
  • 分娩方法と出生後の対応の事前の話し合い:呼吸の補助をどこまで行うかを含め、ご家族の意向を尊重して決めます
  • 心臓や呼吸の状態の評価:生まれたあとに必要に応じて行い、方針を見直します
  • 緩和ケア:お子さまの苦痛を最小限にし、ご家族が過ごす時間を大切にする支援
  • ご家族への心理的支援:グリーフケアを含め、継続的な支えが必要です

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる PTH1R 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、PTH1R 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

この疾患は常染色体潜性(劣性)遺伝のため、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。ご夫婦がキャリアかどうかを妊娠前に調べる方法もあります。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

PTH1R(PTH/PTHrP 受容体1型)はクラスBのGたんぱく質共役受容体で、PTH と PTHrP の双方に応答し、主に Gs-cAMP-PKA 経路を介してシグナルを伝える。成長板では、関節周囲軟骨から分泌される PTHrP が前肥大軟骨細胞の PTH1R に作用し、Indian hedgehog(Ihh)との負のフィードバックループにより軟骨細胞の増殖を維持し、肥大化を遅らせる。両アレルの機能喪失では軟骨細胞の早期肥大化と内軟骨性・膜性骨化の著明な促進が起こり、短く高密度の長管骨、骨年齢の著しい促進として表れる。

本遺伝子は機能変化の方向と程度により対照的な表現型を示す——①ブロムストランド型軟骨異形成症(両アレル機能喪失、周産期致死、骨化促進・骨硬化)、②アイケン症候群(両アレルの部分的機能低下、生存可能、逆に骨化遅延・過剰骨端核・歯の萌出遅延が特徴)、③ジャンセン型骨幹端軟骨異形成症(ヘテロの恒常的活性化変異、顕性、高カルシウム血症と低身長)、④原発性萌出不全(ヘテロの機能喪失、顕性、臼歯の萌出不全)となる。残存機能の程度により重症型(I型)と比較的軽症の型(II型)に分ける報告もあり、ヘテロ保因者で萌出障害など軽微な所見がみられる可能性には留意が必要である。

鑑別としては、致死性骨異形成症(FGFR3、新生突然変異)、軟骨無発生症(SLC26A2・TRIP11・COL2A1)、レイン症候群(FAM20C、致死性の骨硬化性骨異形成症)、新生児期発症の大理石骨病が挙がる。四肢短縮に骨密度上昇と骨化促進が併存する点が本症の手がかりとなるが、遺伝形式は疾患により異なり、次子再発率が25%(潜性)とほぼ0%(新生突然変異)で大きく違うため、遺伝子診断は遺伝カウンセリングに直結する。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。骨系統疾患には偶発的に起こる(新生突然変異による)ものも多く、その場合の再発率はごくわずかです。再発率が大きく異なるため、原因遺伝子を確定することが重要です。

Q. 妊娠中に分かりますか。

A. 多くは妊娠中期以降の超音波検査で、四肢の著しい短縮、胎児水腫、羊水過多から気づかれます。骨が硬く濃く見えることが手がかりになる場合もあります。前のお子さまで診断がついている場合は、妊娠早期からの検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 同じ遺伝子で別の病気もあると聞きました。

A. はい。PTH1R 遺伝子の変化は、はたらきが失われるのか、一部残るのか、強まりすぎるのかによって、まったく異なる病気を起こします。はたらきが一部残るアイケン症候群は命に関わらないことが多く、逆に骨化が遅れるのが特徴です。また、片方の遺伝子の変化だけで歯が生えてこない病気(原発性萌出不全)が起こることもあります。

Q. 生まれたあと、どのくらい生きられますか。

A. この病気では、胸郭が小さく肺が十分に育たないため、多くは死産、または生後まもなく亡くなります。やや軽い経過の報告もありますが、ごくまれです。つらいお話ですが、事前に知っておくことで、お子さまと過ごす時間の準備ができます。医療チームとよく話し合ってください。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Blomstrand S, Claësson I, Säve-Söderbergh J. A case of lethal congenital dwarfism with accelerated skeletal maturation. Pediatr Radiol. 1985;15(3):141-143.
  • Jobert AS, Zhang P, Couvineau A, et al. Absence of functional receptors for parathyroid hormone and parathyroid hormone-related peptide in Blomstrand chondrodysplasia. J Clin Invest. 1998;102(1):34-40.
  • Duchatelet S, Ostergaard E, Cortes D, Lemainque A, Julier C. Recessive mutations in PTHR1 cause contrasting skeletal dysplasias in Eiken and Blomstrand syndromes. Hum Mol Genet. 2005;14(1):1-5.
  • Schipani E, Kruse K, Jüppner H. A constitutively active mutant PTH-PTHrP receptor in Jansen-type metaphyseal chondrodysplasia. Science. 1995;268(5207):98-100.
  • OMIM #215045 Chondrodysplasia, Blomstrand type. Online Mendelian Inheritance in Man.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

AIチャットで相談する AIチャット