ブラウン・ヴィアレット・ヴァン・レール症候群1型

Brown-Vialetto-Van Laere syndrome 1, SLC52A3

概要

ブラウン・ヴィアレット・ヴァン・レール症候群1型は、ビタミンB2(リボフラビン)を体に取り込むしくみがうまくはたらかないために、脳幹や脊髄の神経が少しずつ傷んでいく病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、SLC52A3(20p13)遺伝子の変化が原因となります。

代表的な症状は、両耳の難聴と、話す・飲み込む・呼吸するための筋肉の力が弱くなることです。発症の時期は乳児期から成人期まで幅がありますが、多くは小児期〜思春期に、まず聞こえにくさとして気づかれます。生まれたときには症状がないことがほとんどです。

この病気で特に大切なのは、ビタミンB2を多めに飲む治療で、症状の進行が止まったり改善したりした例が多く報告されていることです。そのため、早く気づいて早く治療を始めることに大きな意味があります。

同じ名前の病気には2型もあり、こちらは別の遺伝子(SLC52A2)が原因です。1型は難聴と、顔・のど・舌の筋肉の麻痺(球麻痺)が中心であるのに対し、2型では視力の低下(視神経萎縮)やふらつき、腕の筋力低下が目立ちやすいとされます。また、同じ SLC52A3 遺伝子の変化で、難聴をともなわずに球麻痺が中心となる「ファツィオ・ロンデ病」という病気も起こります。

原因

SLC52A3は、腸の細胞が食べ物からビタミンB2を取り込むための運び屋(トランスポーター)の設計図です。ビタミンB2の運び屋は体の中に3種類あり、SLC52A3 がつくる運び屋は主に小腸ではたらいています。

ビタミンB2は、体の中でエネルギーをつくる反応に欠かせない「補酵素」の材料になります。運び屋がうまくはたらかないと、体に取り込まれるビタミンB2が不足し、エネルギーをたくさん使う神経細胞、特に脳幹の脳神経(聞こえ・顔・のど・舌を動かす神経)や脊髄の運動神経が傷みやすくなると考えられています。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。

症状

  • 進行する感音難聴:両耳に起こり、最初に現れる症状であることが多いです
  • 球麻痺:話しにくさ、飲み込みにくさ、むせ、舌の筋肉のやせ・ぴくつきが現れます
  • 顔の筋肉の力の低下:表情がつくりにくくなったり、まぶたが閉じにくくなったりします
  • 呼吸の障害:横隔膜や呼吸に使う筋肉が弱くなり、この病気の見通しを左右するもっとも重要な症状です
  • 首・肩・腕・脚の筋力低下と筋肉のやせ
  • 視神経の萎縮による視力の低下(1型では2型より少ないとされます)
  • 体調をくずしたとき(感染症など)に、急に症状が悪くなることがあります

症状の重さや進み方は人によって大きく異なります。乳児期に発症した場合は呼吸の障害が早く強く現れやすく、成人期に発症した場合はゆっくり進むこともあります。

検査・診断

原因のはっきりしない進行性の難聴に、話しにくさ・飲み込みにくさや呼吸の弱さが加わったときに疑われます。聴力検査、神経の伝わり方を調べる検査(神経伝導検査・筋電図)、頭部MRIなどを行います。

血液検査では、ビタミンB2やその仲間の物質の濃度が低いことや、脂肪をエネルギーに変える反応の異常を示すアシルカルニチンの異常が見つかることがあります。ただし、これらの値が正常な方もいるため、正常でもこの病気を否定することはできません。

確定診断は遺伝学的検査で行い、1型では SLC52A3 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。治療ができる病気であるため、疑われた時点で結果を待たずにビタミンB2の内服を始めることが勧められています。

治療

中心となるのは、ビタミンB2(リボフラビン)を多めに飲み続ける治療です。多くの方で筋力・呼吸・飲み込みなどの改善や進行の停止が報告されていますが、効果には個人差があり、すでに失われた聞こえや神経のはたらきが十分に戻らないこともあります。治療は生涯にわたって続ける必要があり、量は主治医が決めます。

  • ビタミンB2の大量内服:できるだけ早く始め、自己判断で中断しないことが大切です
  • 呼吸の補助:必要に応じて、夜間の人工呼吸器(マスク型)や気管切開による呼吸管理を行います
  • 栄養と飲み込みの支援:食事の形の工夫、言語聴覚士による訓練、必要に応じて胃ろうを検討します
  • 聞こえの支援:補聴器や人工内耳を検討します
  • リハビリテーション:筋力や生活動作を保つための理学療法・作業療法
  • 定期的な診察:聴力・視力・呼吸機能・飲み込みの状態を定期的に確認します

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる SLC52A3 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、SLC52A3 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

SLC52A3(旧称 C20orf54)はリボフラビントランスポーター3(RFVT3)をコードし、主に小腸上皮の刷子縁膜に発現して腸管からのリボフラビン吸収を担う。リボフラビンはFMN・FADの前駆体であり、その欠乏はミトコンドリア電子伝達系や脂肪酸β酸化などフラビン依存性酵素の機能低下をもたらす。脳幹運動核・前角細胞・ラセン神経節が選択的に障害される機序は十分には解明されていない。

ブラウン・ヴィアレット・ヴァン・レール症候群は遺伝子座異質性を示し、1型は SLC52A3、2型は SLC52A2(RFVT2)が原因である。両者は現在「リボフラビントランスポーター欠損症」としてまとめて扱われることが多い。1型は感音難聴と脳神経(第VII・IX〜XII)障害による球麻痺が中核で、2型は視神経萎縮・感覚性運動失調・上肢優位の筋力低下がより目立つ傾向がある。また、難聴を欠き進行性球麻痺を主とするファツィオ・ロンデ病も SLC52A3 のアレル疾患であり、両者は同一スペクトラム上の表現型と理解されている。1型では女性例の報告が多いとされる。

一部の症例で血漿アシルカルニチン分析が軽症型マルチプルアシル-CoA脱水素酵素欠損症に類似したパターンを示し、これが高用量リボフラビン補充療法の導入の契機となった。補充療法により運動・呼吸機能の改善や進行停止を認めた例が多数報告されているが、反応には差があり、難聴の改善は限定的なことが多い。鑑別としては、若年性筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、重症筋無力症、ミトコンドリア病、マルチプルアシル-CoA脱水素酵素欠損症、ギラン・バレー症候群などが挙がる。治療可能な疾患であるため、原因不明の小児期発症の運動ニューロン障害や難聴をともなう球麻痺では、本症を早期に念頭に置くことが重要である。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。男の子・女の子のどちらにも起こります。キャリアの方ご自身に症状が出ることは通常ありません。原因遺伝子を確定しておくことで、次のお子さまについて正確な見通しをお伝えできます。

Q. 妊娠中や生まれたときに分かりますか。

A. この病気は生まれたときには症状がないことがほとんどで、妊娠中の超音波検査や新生児の診察で気づかれることはまずありません。ご両親がキャリアであることが分かっている場合や、前のお子さまで診断がついている場合は、遺伝子を調べる出生前検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. ビタミンB2を飲めば治りますか。

A. ビタミンB2を多めに飲む治療で、症状の改善や進行の停止がみられた方が多く報告されています。ただし、効果には個人差があり、すでに進んだ難聴などは戻りにくいこともあります。早く始めるほど効果が期待できるため、早期の診断が大切です。市販のサプリメントで自己判断せず、量や続け方は必ず主治医とご相談ください。

Q. 1型と2型はどう違うのですか。

A. 原因となる遺伝子が異なります。1型は SLC52A3、2型は SLC52A2 です。1型は難聴と、話す・飲み込む力の低下(球麻痺)が中心で、2型は視力の低下やふらつき、腕の筋力低下が目立ちやすいとされます。どちらもビタミンB2の運び屋の病気で、ビタミンB2の内服が治療の中心になる点は共通しています。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Green P, Wiseman M, Crow YJ, et al. Brown-Vialetto-Van Laere syndrome, a ponto-bulbar palsy with deafness, is caused by mutations in C20orf54. Am J Hum Genet. 2010;86(3):485-489.
  • Bosch AM, Abeling NG, Ijlst L, et al. Brown-Vialetto-Van Laere and Fazio Londe syndrome is associated with a riboflavin transporter defect mimicking mild MADD: a new inborn error of metabolism with potential treatment. J Inherit Metab Dis. 2011;34(1):159-164.
  • Bosch AM, Stroek K, Abeling NG, et al. The Brown-Vialetto-Van Laere and Fazio Londe syndrome revisited: natural history, genetics, treatment and future perspectives. Orphanet J Rare Dis. 2012;7:83.
  • Cali E, Dominik N, Manole A, Houlden H. Riboflavin Transporter Deficiency. In: Adam MP, et al., editors. GeneReviews®. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-.
  • OMIM #211530 Brown-Vialetto-Van Laere syndrome 1. Online Mendelian Inheritance in Man.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

AIチャットで相談する AIチャット