ブルック症候群2型

Bruck Syndrome 2, PLOD2

概要

ブルック症候群2型は、骨が折れやすい性質(骨形成不全症に似た症状)と、生まれつき大きな関節が曲がったまま伸びにくい状態(先天性関節拘縮)をあわせもつ病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、PLOD2(3q24)遺伝子の変化が原因となります。

ひじ・ひざなどの関節の拘縮は生まれたときから見られることが多く、骨折は乳幼児期から小児期にかけて繰り返し起こります。骨折と変形が重なることで、背骨の曲がり(側弯)や低身長につながることがあります。一方で、知的な発達には通常影響がないとされています。

ブルック症候群には、原因遺伝子の違いによって1型(FKBP10 遺伝子)と2型(PLOD2 遺伝子)があります。2つの型は症状がよく似ていて、見た目だけで区別することは難しく、遺伝子を調べてはじめてどちらの型かがわかります。また PLOD2 遺伝子の変化では、関節拘縮がほとんど目立たず、骨折しやすさが中心となる例も報告されています。

原因

PLOD2 は、骨の主な材料であるコラーゲンの端の部分に手を加える酵素(リシルヒドロキシラーゼ2)の設計図です。

コラーゲンは細い糸のような分子で、分子どうしが端の部分で「橋かけ(架橋)」をつくって結びつくことで、丈夫な線維になります。この酵素は、骨のコラーゲンが正しい種類の橋かけをつくるための下準備を担っています。はたらきが失われると、骨のコラーゲンの結びつきが弱くなり、骨がもろく折れやすくなります。関節拘縮が起こる詳しいしくみは、まだ十分にはわかっていません。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。

症状

  • 先天性の関節拘縮:ひじ・ひざ・足首などの大きな関節が曲がったまま、または伸びたままで動きにくくなります
  • 翼状片:関節の内側に皮膚の膜のようなひだが見られることがあります
  • 骨折を繰り返す:小さな力で骨が折れ、乳幼児期から小児期にかけて骨折を重ねることが多いです
  • 骨の変形と側弯:骨折と変形が重なり、手足の骨の曲がりや背骨の側弯が進むことがあります
  • 低身長、内反足
  • X線で骨の量が少なく見える(骨密度の低下)、頭の骨に小さな骨片(ウォルム骨)が見られることがあります
  • 重さには個人差が大きく、歩行に車いすが必要になる方から、比較的軽い経過の方までいます

検査・診断

生まれたときの関節拘縮と、その後の繰り返す骨折から疑われます。妊娠中の超音波検査で、手足の関節の位置の異常や動きの少なさが指摘されることもありますが、妊娠中の超音波だけで診断をつけることは難しいとされます。X線検査で骨密度の低下や骨の変形を確認します。

確定診断は遺伝学的検査で行い、ブルック症候群2型では PLOD2 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。1型(FKBP10)や、関節拘縮を伴うほかの病気と見分け、次のお子さまの見通しを正しくお伝えするために、原因遺伝子を確定することには大きな意味があります。

治療

現時点で、遺伝子の変化そのものを治す治療はありません。骨折を減らし、関節の動きと生活の自立をできるだけ保つための治療と支援を、整形外科・小児科・リハビリテーションなどが連携して長く続けていくことが大切です。

  • 骨を強くする薬:骨形成不全症と同じように、ビスホスホネート製剤で骨密度を高め、骨折を減らすことが試みられます(効果には個人差があります)
  • 整形外科的治療:骨折の治療、骨の変形を整える手術、側弯への対応、内反足の治療など
  • リハビリテーション:関節の動く範囲を保つ訓練、装具、移動手段(車いすなど)の工夫
  • 日常生活の工夫:骨折を防ぐための抱き方・動き方の指導、学校生活での配慮
  • ご家族への心理的・社会的支援と遺伝カウンセリング

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる PLOD2 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、PLOD2 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

PLOD2 はリシルヒドロキシラーゼ2(LH2)をコードし、I型コラーゲンのテロペプチド領域のリシン残基を水酸化する(テロペプチド・リシルヒドロキシラーゼ)。テロペプチドのヒドロキシリシンは、骨に特徴的なヒドロキシリシルピリジノリン型の成熟架橋の形成に必須であり、LH2 の欠損により骨コラーゲンのテロペプチド水酸化が低下し、架橋パターンが異常となる。一方、らせん領域のリシン水酸化(主に LH1、PLOD1)は保たれる。ブルック症候群では靱帯や軟骨の架橋は比較的保たれ、骨で選択的に異常がみられることが報告されている。

1型の原因遺伝子 FKBP10(FKBP65)は LH2 の二量体化・活性化に関わる分子シャペロンであり、両型は同じ経路(テロペプチド水酸化)の障害に収束する。このため臨床像はほぼ重なり、表現型からの型の区別は困難である。FKBP10 は拘縮を伴わない潜性骨形成不全症(XI型)の原因にもなり、PLOD2 でも拘縮が軽微な骨形成不全症様の例が報告されており、両遺伝子とも「ブルック症候群—骨形成不全症」のスペクトラムを形成する。PLOD2 の病的変異は触媒ドメインのミスセンス変異が多い。

鑑別としては、ブルック症候群1型(FKBP10)、COL1A1/COL1A2 による骨形成不全症(多くは顕性、新生突然変異を含む)、その他の潜性骨形成不全症(CRTAP、P3H1、SERPINF1 など)、骨折を伴わない先天性多発性関節拘縮症が挙がる。顕性の骨形成不全症とは次子再発率が大きく異なり、また FKBP10 と PLOD2 のどちらかによって保因者検査の対象遺伝子が変わるため、遺伝子診断は遺伝カウンセリングに直結する。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。骨が折れやすい病気には、顕性遺伝や偶発的に起こる(新生突然変異による)ものも多く、再発率はそれぞれ異なります。正しい見通しをお伝えするために、原因遺伝子を確定することが重要です。

Q. 1型と2型は何が違うのですか。

A. 違いは原因となる遺伝子です。1型は FKBP10 遺伝子、2型は PLOD2 遺伝子の変化で起こります。2つの遺伝子は同じしくみ(骨のコラーゲンの結びつき)にかかわっているため、症状はよく似ていて、症状だけで区別することはできません。ご家族の検査や次のお子さまの検査を考えるうえで、どちらの遺伝子かを知ることが大切です。

Q. 妊娠中に分かりますか。

A. 超音波検査で関節の位置の異常や動きの少なさが見つかることはありますが、それだけで診断をつけることは難しい病気です。前のお子さまで原因遺伝子が確定している場合は、妊娠中に遺伝子を調べる検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 成長するとどうなりますか。

A. 経過には個人差が大きく、骨折の回数や側弯の程度によって歩く力や生活の様子が変わります。知的な発達には通常影響がないとされ、骨を強くする薬、手術、リハビリテーションを組み合わせながら、学校生活や社会生活を送っている方もいます。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • OMIM #609220 Bruck syndrome 2; BRKS2. Online Mendelian Inheritance in Man.
  • Ha-Vinh R, Alanay Y, Bank RA, et al. Phenotypic and molecular characterization of Bruck syndrome (osteogenesis imperfecta with contractures of the large joints) caused by a recessive mutation in PLOD2. Am J Med Genet A. 2004;131(2):115-120.
  • Puig-Hervás MT, Temtamy S, Aglan M, et al. Mutations in PLOD2 cause autosomal-recessive connective tissue disorders within the Bruck syndrome—osteogenesis imperfecta phenotypic spectrum. Hum Mutat. 2012;33(10):1444-1449.
  • van der Slot AJ, Zuurmond AM, Bardoel AF, et al. Identification of PLOD2 as telopeptide lysyl hydroxylase, an important enzyme in fibrosis. J Biol Chem. 2003;278(42):40967-40972.
  • Bank RA, Robins SP, Wijmenga C, et al. Defective collagen crosslinking in bone, but not in ligament or cartilage, in Bruck syndrome: indications for a bone-specific telopeptide lysyl hydroxylase on chromosome 17. Proc Natl Acad Sci U S A. 1999;96(3):1054-1058.
  • Kelley BP, Malfait F, Bonafe L, et al. Mutations in FKBP10 cause recessive osteogenesis imperfecta and Bruck syndrome. J Bone Miner Res. 2011;26(3):666-672.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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