ケアリー・ファインマン・ジッター症候群

Carey-Fineman-Ziter syndrome, MYMK

概要

ケアリー・ファインマン・ジッター症候群は、生まれつき筋肉の力が弱く、顔の表情をつくる筋肉や目を動かす筋肉が動きにくい病気です。あごが小さい、口の中の上側(口蓋)が割れている(口蓋裂)ことも特徴です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、MYMK(9q34.2)遺伝子の変化が原因となります。

この病気は、顔の筋肉と目を外側へ向ける動きが弱くなる「メビウス症候群に似た症状」と、小さなあご・舌が奥に落ち込む・口蓋裂が重なる「ロバン連鎖(ピエール・ロバン・シークエンス)」を合わせもつことが知られています。赤ちゃんの時期には、飲み込みや呼吸の助けが必要になることがあります。

一方で、筋肉の弱さは年齢とともに進むことは少なく、成長につれて少しずつ改善していく方が多いとされています。知的な発達は多くの場合保たれます。報告されている患者さんは世界でも少なく、症状の重さには個人差があります。

原因

MYMK(マイオメーカー)は、筋肉のもとになる細胞(筋芽細胞)どうしをくっつける(融合させる)ためのたんぱく質をつくる遺伝子です。

私たちの筋肉の細胞は、たくさんの筋芽細胞がくっつき合って、1本の長い筋線維になることでできあがります。MYMK のはたらきが弱まると、この融合がうまく進まず、筋線維が十分に育ちません。その結果、生まれつき筋肉の力が弱くなります。とくに顔・目・あご・のどの筋肉に影響が出やすく、胎児期に口やあごがよく動かないことが、小さなあごや口蓋裂につながると考えられています。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。

症状

  • 顔の筋肉の弱さ:表情が乏しく、口を閉じにくい、笑顔をつくりにくいといった症状が見られます
  • 目の動きの制限:とくに目を外側に向ける動きが弱く、まぶたが下がる(眼瞼下垂)こともあります
  • 小さなあご・口蓋裂(ロバン連鎖):舌が喉の奥に落ち込み、呼吸や哺乳が難しくなることがあります
  • 全身の筋緊張低下:赤ちゃんの時期に体がやわらかく、首すわりや歩き始めが遅れることがあります
  • 哺乳・飲み込みの難しさ:経管栄養が必要になる場合があります
  • 内反足などの足の変形、背骨の曲がり(側弯)、低身長が見られることがあります
  • 筋肉の弱さは進行しにくく、成長とともに改善していくことが多いとされています

検査・診断

多くは生まれた直後に、表情の乏しさ、目の動きの制限、小さなあご、口蓋裂、哺乳の難しさから疑われます。妊娠中の超音波検査で、小さなあご、羊水過多、胎動の少なさなどが指摘されることもありますが、妊娠中にこの病気と特定することは簡単ではありません。

筋肉の検査(筋生検)では筋線維の大きさのばらつきなど、生まれつきの筋肉の病気(先天性ミオパチー)を示す所見が見られることがあります。確定診断は遺伝学的検査で行い、MYMK 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。メビウス症候群やほかの先天性ミオパチーと症状が重なるため、原因遺伝子を確定することが、見通しと次のお子さまへの影響を正しくお伝えするうえで大切です。

治療

現時点で、原因そのものを治す治療はありません。治療は、それぞれの症状に合わせた対症療法と、成長・発達の支援が中心になります。小児科、形成外科、耳鼻咽喉科、眼科、整形外科、リハビリテーション科などが協力して支えていきます。

  • 呼吸の管理:舌の落ち込みで息がしにくい場合は、うつぶせ寝の工夫や呼吸の補助、必要に応じて外科的な処置を検討します
  • 栄養の支援:哺乳の工夫や経管栄養で、体重の増加を支えます
  • 口蓋裂の手術と、その後の言葉の訓練
  • リハビリテーション:運動発達を促す理学療法、食べる・話すための訓練
  • 目・足・背骨の経過観察:眼瞼下垂、内反足、側弯に対して、必要に応じて治療を行います
  • ご家族への支援:療育や就園・就学についての相談

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる MYMK 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、MYMK 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

MYMK(Myomaker、旧称 TMEM8C)は筋芽細胞膜に局在する多回膜貫通型たんぱく質で、Myomerger(MYMX)と協調して筋芽細胞融合と多核筋線維の形成に必須の役割を担う。マウスでは完全欠損により筋線維が形成されず周産期致死となる。

ケアリー・ファインマン・ジッター症候群(CFZS1)は、2017年に MYMK の両アレル性変異が原因として同定された。報告された変異の多くは機能を部分的に残す低形成(hypomorphic)アレルであり、融合能の低下が残存することで生存可能な表現型となると考えられている。臨床的には非進行性の先天性ミオパチーに、メビウス様の顔面筋・外眼筋の筋力低下とロバン連鎖を伴うのが中核で、筋生検では筋線維径の大小不同などのミオパチー所見を示す。外眼筋・顔面筋障害が脳神経核の異常ではなく筋原性に生じる点で、古典的なメビウス症候群とは病態が異なる。

鑑別としては、メビウス症候群(多くは孤発例)、先天性筋強直性ジストロフィー(DMPK)、STAC3 関連先天性ミオパチー(ネイティブアメリカンミオパチー)、RYR1 関連ミオパチー、先天性筋無力症候群、ロバン連鎖を伴うほかの症候群が挙がる。これらは遺伝形式や再発率、合併症(悪性高熱症のリスクなど)が異なるため、遺伝子診断は遺伝カウンセリングと周術期管理の双方に直結する。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。似た症状をもつ病気には、偶発的に起こるものや遺伝形式が異なるものもあります。再発率が大きく異なるため、原因遺伝子を確定することが重要です。

Q. 妊娠中に分かりますか。

A. 超音波検査で小さなあごや羊水過多が見つかることはありますが、それだけでこの病気と診断することは困難です。前のお子さまで原因遺伝子が確定している場合は、妊娠中に遺伝子を調べる検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 筋肉の弱さはだんだん悪くなりますか。

A. この病気の筋肉の弱さは進行しにくく、成長とともに運動の力が伸びていく方が多いと報告されています。ただし症状の重さには個人差があり、背骨の曲がりなどが出てくることもあるため、定期的な診察を続けることが大切です。

Q. 知的な発達に影響はありますか。

A. 多くの場合、知的な発達は保たれるとされています。表情が乏しく話しにくいことから、気持ちや理解力が実際より低く見られてしまうことがあります。言葉の訓練や周囲の理解が、お子さまの生活を支えます。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Di Gioia SA, Connors S, Matsunami N, et al. A defect in myoblast fusion underlies Carey-Fineman-Ziter syndrome. Nat Commun. 2017;8:16077.
  • Carey JC, Fineman RM, Ziter FA. The Robin sequence as a consequence of malformation, dysplasia, and neuromuscular syndromes. J Pediatr. 1982;101(5):858-864.
  • Millay DP, O’Rourke JR, Sutherland LB, et al. Myomaker is a membrane activator of myoblast fusion and muscle formation. Nature. 2013;499(7458):301-305.
  • OMIM #254940 Carey-Fineman-Ziter syndrome 1; CFZS1. Online Mendelian Inheritance in Man.
  • OMIM *615345 Myomaker, myoblast fusion factor; MYMK. Online Mendelian Inheritance in Man.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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