シャルコー・マリー・トゥース病4C型

Charcot-Marie-Tooth disease type 4C, SH3TC2

概要

シャルコー・マリー・トゥース病4C型は、手足の末梢神経を包む「髄鞘(ずいしょう)」が正しく保たれないために、手足の筋力低下や感覚の低下がゆっくり進む遺伝性の神経の病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、SH3TC2(5q32)遺伝子の変化が原因となります。

シャルコー・マリー・トゥース病は遺伝性の末梢神経の病気をまとめた呼び名で、原因となる遺伝子は100種類以上知られています。そのなかで4C型は、常染色体潜性遺伝で髄鞘が傷む型(4型)のなかでは比較的多いタイプとされ、小児期の早い時期から背骨の曲がり(側弯症)が目立つことが大きな特徴です。多くは10歳ごろまでに、歩き方の異常や側弯で気づかれます。

同じ「4型」でも、4A型(GDAP1)、4B型(MTMR2 など)、4D型(NDRG1)、4F型(PRX)など、型ごとに原因遺伝子が異なります。4C型は SH3TC2 遺伝子が原因で、早くから現れる重い側弯や、難聴・顔や舌の筋力低下といった脳神経の症状を伴うことがある点が特徴です。一方で進行は比較的ゆっくりで、多くの方が成人後も歩く力を保つと報告されています。また、SH3TC2 遺伝子の変化を片方だけもつ方の一部で、手首の神経(正中神経)の障害が起こりやすいことが報告されています。

原因

SH3TC2 は、末梢神経の髄鞘をつくる「シュワン細胞」ではたらくたんぱく質です。

髄鞘は電線の被覆のように神経を包み、脳や脊髄からの信号を手足へ速く正確に伝える役割をもっています。SH3TC2 は、シュワン細胞のなかで膜やたんぱく質を運んだり再利用したりするしくみにかかわり、髄鞘を正しく形づくり、保つために必要と考えられています。はたらきが失われると髄鞘が薄く不安定になり、神経の信号の伝わる速さが大きく落ちます。長い神経ほど影響を受けやすいため、症状は足先・手先から始まります。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。

症状

  • 側弯症(背骨の曲がり):小児期から思春期の早い時期に現れ、進行して手術が必要になることもあります。この型でもっとも特徴的な症状です
  • 足の変形:土踏まずが高くなる(凹足)、指が曲がるなど
  • 歩き方の異常:つまずきやすい、走るのが苦手、足首が上がりにくい(下垂足)
  • 手足の先の筋力低下とやせ:足から始まり、のちに手にも及ぶことがあります
  • 感覚の低下:足先のしびれや感覚の鈍さ、体の位置の感覚が落ちることによるふらつき
  • 腱反射の低下・消失
  • 脳神経の症状:難聴、顔の筋力低下、舌のやせ、目の動きの異常などを伴うことがあります
  • 呼吸機能の低下:重い側弯や、呼吸の筋肉を動かす神経の障害によって起こることがあります
  • 症状の重さや進み方には、同じご家族のなかでも個人差があります

検査・診断

歩き方の異常、足の変形、側弯などから疑われ、神経伝導検査で手足の神経の信号の伝わる速さを調べます。4C型では伝わる速さがはっきり遅くなる(髄鞘が傷むタイプの)所見が見られます。ご家族の病歴、側弯や難聴の有無も手がかりになります。妊娠中の超音波検査でこの病気に気づかれることは、通常ありません。

確定診断は遺伝学的検査で行い、シャルコー・マリー・トゥース病4C型では SH3TC2 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。この病気は原因遺伝子が非常に多いため、複数の遺伝子をまとめて調べる検査が役立ちます。型によって遺伝の形式が異なるため、次のお子さまの見通しを正しくお伝えするうえで、原因遺伝子を確定することには大きな意味があります。

治療

現時点で、この病気を根本から治す治療はありません。症状に合わせたリハビリテーション、装具、手術などを組み合わせ、体の動きと生活の質をできるだけ保つことが治療の中心になります。神経内科、小児科、整形外科、リハビリテーション科などが連携して長く見守ります。

  • リハビリテーション:筋力や関節の柔らかさを保つための運動療法
  • 装具:足首を支える装具で、つまずきを減らし歩きやすくします
  • 側弯症の管理:定期的なX線検査で経過をみて、必要に応じて体幹装具や手術を検討します
  • 足の変形に対する整形外科的な手術
  • 聴力や呼吸機能の定期的な評価:必要に応じて補聴器や呼吸の補助を用います
  • 神経に負担をかける薬への注意:一部の抗がん剤(ビンクリスチンなど)は症状を悪化させるおそれがあるため、受診の際は病名をお伝えください
  • 園や学校、職場での生活の工夫と支援

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる SH3TC2 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、SH3TC2 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。

専門的な解説

SH3TC2(KIAA1985)は SH3 ドメインと TPR モチーフをもつたんぱく質で、末梢神経ではシュワン細胞に発現する。低分子量GTPase である Rab11 のエフェクターとしてエンドソームのリサイクル経路を介した膜たんぱく質の輸送にかかわり、ミエリン形成とランヴィエ絞輪の構造維持に必要と考えられている。病理では脱髄・髄鞘再生像に加え、シュワン細胞の細胞質突起の異常な伸長が特徴的所見として知られる。

臨床的には10歳までの発症が多く、側弯症が神経症状に先行またはほぼ同時に出現し、しばしば重度で手術を要することが、他の脱髄型CMTとの重要な違いである。脳神経障害(感音難聴、顔面筋力低下、舌萎縮など)を伴いうる一方、進行は緩徐で歩行能力の保たれる例が多い。欧州系で頻度の高い変異は p.Arg954Ter(c.2860C>T)であり、ロマの集団では創始者変異 p.Arg1109Ter(c.3325C>T)により本症が比較的多い。また本遺伝子は、全ゲノム解析で原因が初めて同定された遺伝性疾患の一つであり、その報告では p.Arg954Ter のヘテロ接合保因者に軽症の正中神経単ニューロパチーが認められた。

鑑別としては、CMT1A(PMP22 重複、常染色体顕性)、他の常染色体潜性脱髄型CMT(GDAP1、MTMR2、SBF2、NDRG1、PRX、FIG4 など)、デジェリン・ソッタス症候群、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー、特発性側弯症が挙がる。CMTは顕性・潜性・X連鎖の各形式をとり、次子再発率が50%(顕性)と25%(潜性)などで大きく異なるため、遺伝子診断は遺伝カウンセリングに直結する。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。シャルコー・マリー・トゥース病には顕性遺伝の型も多く、その場合は再発率が2分の1になります。型によって再発率が大きく異なるため、原因遺伝子を確定することが重要です。

Q. 妊娠中に分かりますか。

A. 症状は生まれたあと、主に小児期に現れるため、妊娠中の超音波検査で気づかれることは通常ありません。ご家族で原因となる変化がわかっている場合は、出生前の遺伝学的検査や着床前検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 将来、歩けなくなりますか。

A. 進行は比較的ゆっくりで、多くの方は装具などを使いながら成人後も歩く力を保つと報告されています。ただし、側弯の重さや症状の進み方には個人差があります。定期的な診察で、早めに側弯や足の変形に対応することが大切です。

Q. キャリア(保因者)でも症状は出ますか。

A. キャリアの方には、通常この病気の症状は出ません。ただし、SH3TC2 遺伝子の特定の変化を片方だけもつ方の一部で、手首の神経(正中神経)の軽い障害が起こりやすいという報告があります。気になる症状があるときは主治医にご相談ください。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Senderek J, Bergmann C, Stendel C, et al. Mutations in a gene encoding a novel SH3/TPR domain protein cause autosomal recessive Charcot-Marie-Tooth type 4C neuropathy. Am J Hum Genet. 2003;73(5):1106-1119.
  • Azzedine H, Ravisé N, Verny C, et al. Spine deformities in Charcot-Marie-Tooth 4C caused by SH3TC2 gene mutations. Neurology. 2006;67(4):602-606.
  • Lupski JR, Reid JG, Gonzaga-Jauregui C, et al. Whole-genome sequencing in a patient with Charcot-Marie-Tooth neuropathy. N Engl J Med. 2010;362(13):1181-1191.
  • Bird TD. Charcot-Marie-Tooth (CMT) Hereditary Neuropathy Overview. In: Adam MP, et al., editors. GeneReviews®. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-.
  • OMIM #601596 Charcot-Marie-Tooth disease, type 4C. Online Mendelian Inheritance in Man.
医師監修 監修日:2026年11月3日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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