概要
チェディアック・東症候群は、髪や皮膚の色が薄くなる「部分的な白皮症」、くり返す重い感染症、出血しやすさを特徴とする、まれな免疫の病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、LYST(1q42)遺伝子の変化が原因となります。
病名は、この病気を報告したキューバのチェディアック医師と、日本の東(ひがし)医師に由来します。血液の白血球のなかに、ふつうは見られない「巨大な顆粒(つぶ)」があることが最大の特徴で、顕微鏡で血液を見ることが診断の手がかりになります。
多くは乳幼児期に、銀色がかった髪の色と、くり返す感染症から気づかれます。治療をしないと、多くのお子さまが「促進期」と呼ばれる、免疫細胞が暴走して全身の臓器を傷つける命にかかわる状態に進みます。造血幹細胞移植によって免疫の異常を治すことが期待できる一方、神経の症状は移植のあとも年齢とともに現れることがあります。
同じ LYST 遺伝子の変化でも、症状の重さには幅があります。子どものうちに重い感染症や促進期を起こす「典型的な型(小児型)」がもっとも多く、遺伝子のはたらきが一部残っている場合には、感染症が軽く、思春期〜成人になってから歩きにくさや手足のしびれなど神経の症状で気づかれる「軽症型(思春期・成人型)」となります。
原因
LYST は、細胞のなかの「リソソーム」などの小さな袋(小胞)の大きさや運ばれ方を調節するたんぱく質の設計図です。
LYST がはたらかないと、小さな袋どうしがくっついて大きくなりすぎ、必要な場所へ中身を届けられなくなります。その結果、次のようなことが起こります。
- 白血球:細菌を壊す酵素の袋がうまく使えず、細菌を退治する力が弱くなります
- NK細胞・リンパ球:ウイルスに感染した細胞を攻撃する力が弱くなり、免疫の暴走(促進期)の原因になります
- 色素細胞:メラニン色素が大きな塊になり、髪や皮膚、目に均一に行き渡らず、色が薄く見えます
- 血小板:止血に必要な物質をためる袋が少なく、出血しやすくなります
お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。
症状
- 部分的な白皮症:髪が銀色・灰色がかった独特の色になり、皮膚や目の色も薄めになります。日焼けしやすく、まぶしさを感じやすいことがあります
- くり返す細菌感染症:皮膚、肺、耳、のどなどの感染症を何度も起こします。乳幼児期から気づかれることが多い症状です
- 出血しやすさ:鼻血、歯ぐきからの出血、あざができやすいなど。多くは軽〜中等度です
- 促進期(血球貪食性リンパ組織球症):典型的な型では、多くのお子さまが乳幼児期〜小児期にこの状態に進みます。高熱が続き、肝臓や脾臓が腫れ、血球が大きく減ります。治療しなければ命にかかわる、この病気でもっとも重い合併症です
- 神経の症状:思春期〜成人期にかけて、手足のしびれや筋力の低下、ふらつき(運動失調)、ふるえ、学習や記憶の困難などが少しずつ現れることがあります。軽症型ではこれが最初の症状になることもあります
- 目の症状:視力の低下、眼振(目が細かく揺れる)など
検査・診断
銀色がかった髪とくり返す感染症があるときに疑われます。血液を顕微鏡で調べ、白血球のなかに巨大な顆粒が見つかることが診断の大きな手がかりです。髪の毛を顕微鏡で見ると、メラニン色素が大きな塊になっている様子も確認できます。あわせて、NK細胞のはたらきや血小板の機能、促進期の兆候がないかを調べます。
確定診断は遺伝学的検査で行い、チェディアック・東症候群では LYST 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。似た症状の病気(グリセリ症候群やヘルマンスキー・パドラック症候群など)は治療方針や見通しが異なるため、原因遺伝子を確定することには大きな意味があります。また、移植のドナーとなるごきょうだいを選ぶうえでも役立ちます。
治療
免疫と血液の異常に対しては、造血幹細胞移植がもっとも根本的な治療です。促進期に進む前に移植を行うと、より良い結果が期待できるとされています。ただし、移植をしても髪や皮膚の色、そして神経の症状は改善せず、神経の症状は成長とともに現れることがあります。移植には合併症の危険もあるため、時期や方法は専門の医療チームと十分に話し合って決めます。
- 造血幹細胞移植:白血球やNK細胞のはたらきを回復させ、感染症と促進期を防ぐことを目指します
- 促進期の治療:抗がん剤、ステロイド、免疫抑制薬などを組み合わせて免疫の暴走を抑え、そのうえで移植につなげます
- 感染症の治療と予防:早めの抗菌薬治療、必要に応じた予防内服
- 出血への対策:アスピリンなど血を止まりにくくする薬を避け、手術や抜歯の前には止血の準備をします
- 日光対策と目の診察:日焼け止めやサングラスで皮膚と目を守り、定期的に眼科を受診します
- 神経症状への支援:定期的な神経の診察、リハビリテーション、学習面の支援
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる LYST 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、LYST 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。
専門的な解説
LYST(lysosomal trafficking regulator)は BEACH ドメインを持つ巨大な細胞質たんぱく質で、リソソームおよびリソソーム関連オルガネラ(メラノソーム、血小板濃染顆粒、細胞傷害性顆粒など)の大きさと分泌を制御する。欠損によりこれらのオルガネラが融合・巨大化し、開口分泌が障害される。末梢血塗抹標本での好中球・リンパ球の巨大顆粒、毛幹の不規則なメラニン塊が診断的所見である。マウスの beige 変異体が相同モデルとして知られる。
表現型は残存 LYST 機能に相関する——両アレルのナンセンス・フレームシフト変異は重症の小児型(早期の易感染性と、大多数に生じる促進期=HLH)と関連し、ミスセンス変異は感染症が軽く、思春期・成人期の進行性神経変性(末梢神経障害、小脳失調、認知機能低下、パーキンソニズム)を主徴とする軽症型と関連する傾向がある。造血幹細胞移植は血液・免疫学的異常と HLH を是正するが、色素異常と神経変性は是正しないため、移植後も長期の神経学的フォローが必要である。
鑑別としては、色素異常を伴う免疫不全症候群であるグリセリ症候群2型(RAB27A)、ヘルマンスキー・パドラック症候群2型(AP3B1)、および色素異常を伴わない家族性血球貪食性リンパ組織球症(PRF1、UNC13D、STX11、STXBP2)が挙がる。白血球の巨大顆粒の有無と毛髪のメラニン分布が鑑別に有用で、いずれも常染色体潜性であるが治療方針と神経学的予後が異なるため、遺伝子診断は治療選択と遺伝カウンセリングに直結する。
よくある質問
Q. 次のお子さまへの影響はありますか。
A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。2分の1の確率で症状のないキャリアとなり、4分の1の確率で変化を受け継ぎません。ご家族の遺伝子の変化がわかっていれば、次の妊娠での出生前検査や着床前検査も検討できます。
Q. 妊娠中の超音波検査で分かりますか。
A. この病気は、妊娠中の超音波検査で形の異常として気づかれることはほとんどありません。多くは生まれたあと、髪の色や感染症をきっかけに診断されます。前のお子さまで診断がついている場合や、ご夫婦がキャリアとわかっている場合は、遺伝子検査による出生前診断を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。
Q. 造血幹細胞移植をすれば治りますか。
A. 移植によって、感染症のかかりやすさや促進期といった免疫・血液の異常を治すことが期待できます。一方で、髪や皮膚の色は変わらず、神経の症状は移植のあとも年齢とともに現れることがあるため、長く経過をみていく必要があります。移植そのものにも危険があるため、主治医とよく話し合ってください。
Q. 大人になってから見つかることもありますか。
A. はい。遺伝子のはたらきが一部残っている軽症型では、子どものころの感染症が目立たず、思春期以降に歩きにくさや手足のしびれなど神経の症状で見つかることがあります。症状の現れ方には個人差が大きいため、専門医による診察が大切です。
Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。
A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。
参考文献
- Toro C, Nicoli ER, Malicdan MC, Adams DR, Introne WJ. Chediak-Higashi Syndrome. In: Adam MP, et al., editors. GeneReviews®. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-.
- OMIM #214500 Chediak-Higashi Syndrome; CHS. Online Mendelian Inheritance in Man.
- Introne W, Boissy RE, Gahl WA. Clinical, molecular, and cell biological aspects of Chediak-Higashi syndrome. Mol Genet Metab. 1999;68(2):283-303.
- Nagle DL, Karim MA, Woolf EA, et al. Identification and mutation analysis of the complete gene for Chediak-Higashi syndrome. Nat Genet. 1996;14(3):307-311.
- Barbosa MD, Nguyen QA, Tchernev VT, et al. Identification of the homologous beige and Chediak-Higashi syndrome genes. Nature. 1996;382(6588):262-265.
