概要
デスビュキュア骨異形成症1型は、生まれる前から始まる低身長と、全身の関節のゆるさ・脱臼を特徴とする骨系統疾患です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、CANT1(17q25.3)遺伝子の変化が原因となります。
手足が短いことに加えて、関節がやわらかすぎて脱臼しやすいこと、丸く平たい顔つきと目立つ目、手の指の骨の特徴的な形がみられます。乳児期に呼吸の問題で重症になることがありますが、この時期を越えると、多くのお子さまは成長していきます。知的発達は多くの場合正常です。妊娠中の超音波検査で、手足の短さから気づかれることもあります。
デスビュキュア骨異形成症は原因遺伝子によって型が分けられ、1型は CANT1、2型は XYLT1 という別の遺伝子が原因です。また、同じ CANT1 遺伝子の変化でも、より軽い場合には多発性骨端異形成症7型(成長期以降の関節の痛みなどが中心)となります。このページでは CANT1 による1型について説明します。
原因
CANT1 は、細胞のなかの「小胞体」や「ゴルジ体」と呼ばれるたんぱく質の加工工場ではたらく、カルシウムで活性化される酵素です。
軟骨の土台となる「プロテオグリカン」は、たんぱく質に長い糖の鎖がつながった物質で、この糖の鎖が水を抱え込むことで、軟骨のクッション性が保たれます。CANT1 は、糖の鎖をつくる工程で生じる不要な物質を分解し、工程が滞りなく進むように支えています。CANT1 がはたらかないと、プロテオグリカンが十分につくられず、軟骨や靱帯などの組織が正しい構造をつくれません。その結果、骨の伸びが妨げられ、関節を支える組織もゆるくなります。
お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。
症状
- 生まれる前から始まる低身長:手足、とくに腕や太ももが短くなります。大人になってからの身長もかなり低くなることが多いです
- 全身の関節のゆるさと脱臼:股関節・膝・肘などが脱臼しやすく、この病気の大きな特徴です
- 特徴的な顔つき:丸く平たい顔、目立つ目、小さなあご、短い首
- 手の特徴:人さし指の付け根の余分な骨、親指の先の骨が二つに分かれる、指が曲がるなど。1型ではこうした手の所見がよくみられます
- 口蓋裂、内反足
- 乳児期の呼吸の問題:気道が軟らかく胸郭が小さいため、呼吸障害を起こすことがあります。重い場合は乳児期に亡くなることもあります
- 成長にともなう背骨の曲がり(側弯・後弯)や関節の痛み
- 知的発達は多くは正常ですが、一部に遅れがみられることがあります
検査・診断
妊娠中の超音波検査で、手足の短さ、小さなあご、内反足などから骨系統疾患が疑われることがあります。出生後のX線検査では、太ももの骨の付け根の出っぱり(小転子)が大きく、骨の上端が「モンキーレンチ」のような形に見えること、手首の骨の成熟(骨年齢)が進んでいること、人さし指の付け根の余分な骨などが手がかりになります。
確定診断は遺伝学的検査で行い、デスビュキュア骨異形成症1型では CANT1 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。見た目やX線では2型(XYLT1)やほかの骨系統疾患と区別しにくいことがあるため、次のお子さまの見通しを正しくお伝えするために、原因遺伝子を確定することには大きな意味があります。
治療
現時点で、この病気そのものを治す治療はありません。症状に合わせて、小児科・整形外科・形成外科・呼吸器や麻酔の専門医などが連携し、成長に合わせた治療と支援を続けることが大切です。
- 呼吸の管理:乳児期の呼吸障害に対し、酸素投与や呼吸の補助を行います。麻酔をかける際は、気道の確保にとくに注意が必要です
- 関節の脱臼・内反足への対応:装具やギプスを用い、必要に応じて手術を検討します
- 背骨の定期的な確認:側弯・後弯の進み方をみて、装具や手術を検討します
- 口蓋裂の治療:形成外科での手術と、哺乳・ことばの支援
- リハビリテーションと生活の支援:運動機能を保ち、低身長に合わせた日常生活の工夫を行います
- 遺伝カウンセリングとご家族への心理的支援
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる CANT1 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、CANT1 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
この疾患は常染色体潜性(劣性)遺伝のため、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト1,200+のページ をご覧ください。
専門的な解説
CANT1(カルシウム活性化ヌクレオチダーゼ1)は小胞体・ゴルジ体に局在し、UDP を UMP へ加水分解する酵素である。糖転移反応で生じる UDP を除去し、ヌクレオチド糖の供給を円滑にすることで、グリコサミノグリカン鎖の合成を支えると考えられている。患者線維芽細胞ではプロテオグリカン合成の低下が示されており、軟骨基質や靱帯の異常が低身長と関節弛緩の背景にあるとされる。
本症は従来、臨床像から手の所見(第2中手骨遠位の副骨化中心、母指末節骨の二分、指節骨の変形)を伴う型、伴わない型、中手骨短縮と指節骨延長を伴うキム亜型に分けられてきた。原因遺伝子の同定後、CANT1 変異はこれらいずれの臨床型でも報告され、一方で XYLT1 変異は手の所見を欠く型を起こすことが明らかになり、現在は遺伝子に基づいて1型(CANT1)、2型(XYLT1)と呼ばれる。大腿骨近位の「モンキーレンチ」様変形と手根骨の骨年齢促進は診断の手がかりとなる。CANT1 のより軽症のアレルは多発性骨端異形成症7型として、低身長が軽く関節症状が中心の表現型をとる。
鑑別としては、ラーセン症候群(FLNB、常染色体顕性で新生突然変異が多い)、関節弛緩を伴う脊椎骨端骨幹端異形成症(B3GALT6)、大関節脱臼を伴う脊椎骨端異形成症(CHST3)、ダイアストロフィック骨異形成症(SLC26A2)などが挙がる。遺伝形式により次子再発率が25%(潜性)とごくわずか(新生突然変異)で大きく異なるため、遺伝子診断は遺伝カウンセリングに直結する。
よくある質問
Q. 次のお子さまへの影響はありますか。
A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。似た症状の骨系統疾患には、偶発的に起こる(新生突然変異による)ものもあり、その場合の再発率はごくわずかです。再発率が大きく異なるため、原因遺伝子を確定することが重要です。
Q. 妊娠中に分かりますか。
A. 妊娠中期以降の超音波検査で、手足の短さなどから骨系統疾患が疑われることがあります。ただし、超音波だけで病名まで確定するのは難しいことが多いです。前のお子さまで原因遺伝子が確定している場合は、妊娠早期からの検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。
Q. 2型や、同じ遺伝子の軽い病気とは何が違いますか。
A. 2型は XYLT1 という別の遺伝子が原因で、手の骨の特徴的な所見がみられないことが多い型です。症状は似ていますが、原因遺伝子が異なるため、検査で調べる遺伝子も異なります。また、同じ CANT1 遺伝子の変化でも、はたらきが比較的保たれている場合には多発性骨端異形成症7型となり、低身長は軽く、成長期以降の関節の痛みが中心になります。
Q. 生まれたあと、どのような経過をたどりますか。
A. 乳児期は呼吸の問題がもっとも注意の必要な時期で、重い場合には命に関わることもあります。この時期を越えると、多くのお子さまは成長し、学校生活を送っています。ただし、低身長や関節の脱臼、背骨の曲がりに対して、成長に合わせた継続的な診察と治療が必要です。経過には個人差が大きいため、主治医とよく話し合ってください。
Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。
A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。
参考文献
- Huber C, Oulès B, Bertoli M, et al. Identification of CANT1 mutations in Desbuquois dysplasia. Am J Hum Genet. 2009;85(5):706-710.
- Furuichi T, Dai J, Cho TJ, et al. CANT1 mutation is also responsible for Desbuquois dysplasia, type 2 and Kim variant. J Med Genet. 2011;48(1):32-37.
- Nizon M, Huber C, De Leonardis F, et al. Further delineation of CANT1 phenotypic spectrum and demonstration of its role in proteoglycan synthesis. Hum Mutat. 2012;33(8):1261-1266.
- Mortier GR, Cohn DH, Cormier-Daire V, et al. Nosology and classification of genetic skeletal disorders: 2019 revision. Am J Med Genet A. 2019;179(12):2393-2419.
- OMIM #251450 Desbuquois dysplasia 1; DBQD1. Online Mendelian Inheritance in Man.
