3-メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼ欠損症

3-メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼ欠損症3-メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼ欠損症

概要

3-メチルクロトニルCoAカルボキシラーゼ欠損症(3-Methylcrotonyl-CoA Carboxylase Deficiency 1)は、劣性遺伝疾患であり、ロイシン異化過程の中間代謝産物である3-メチルクロトニル-CoAを3-メチルグルタコニル-CoAに変換する3-メチルクロトニル-CoAカルボキシラーゼ(MCC)の欠損により生じます。乳幼児期に感染症の罹患を契機に発症しますが、無症状例からは、重度の発達遅滞などが報告されています。

疫学

欧米での発症頻度は3.6~8.5万人に1人で、そのうち有症状者は全体の約10%程度、さらに重症な患者は1~2%と考えられています。本邦では約15万出生に1人と推定されています。

原因

「MCC」はミトコンドリアに局在する酵素で、α鎖とβ鎖の二つの異なるサブユニットからなります。α鎖はビオチンを含有しており、MCCC1(MCCA)遺伝子にコードされ、β鎖はMCCC2(MCCB)遺伝子にコードされています。本症はα鎖、β鎖いずれかの欠損により生じます。

MCCC1遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。
原因
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症状

多くは生後6か月から3歳ぐらいまでに、発熱や下痢・嘔吐などの急性疾患に罹患した際、けいれん、昏睡、低血糖、嗜眠、代謝性アシドーシス、高アンモニア血症などの症状で発症します。適切な治療がされなければ、脳浮腫が進行し、命が助かったとしても重大な神経学的後遺症を残します。新生児スクリーニングで発見された症例は、多くの場合は無症状ですが、検査上、低カルニチン血症や軽度の高アンモニア血症を多く呈します。家族解析では、無症状の同胞例が発見されることがあります。

診断

急性発作時:代謝性アシドーシス、ケトーシス、低血糖、高アンモニア血症、肝障害等
尿中有機酸分析:3‐ヒドロキシイソ吉草酸、3‐メチルクロトニルグリシンの排泄。
血中アシルカルニチン分析:ヒドロキシイソバレリルカルニチン(C5-OH)が上昇するため、タンデムマススクリーニングの指標として用いられます。血中遊離カルニチンはしばしば低下。
確定診断:培養線維芽細胞を用いたMCC酵素活性測定や遺伝子(MCCC1, MCCC2)解析が有用。

治療

急性発作時には、高張糖液を用いて異化作用を抑制します。適宜、インスリンの併用やレボカルニチン、ビタミン、アルカリ化剤の投与を行います。 慢性期に、症状の有無にかかわらず低カルニチン血症が認められる場合は、レボカルニチンを投与します。
低蛋白食・ロイシンの制限食が勧められていますが、その効果は不明です。

予後

急性アシドーシス発作を起こさなければ良好です。

【参考文献】