軟骨無発生症1B型

Achondrogenesis type 1B, SLC26A2

概要

軟骨無発生症1B型は、軟骨が正しくつくられないために、手足の骨と体幹が極端に短くなる骨系統疾患です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、SLC26A2(5q32)遺伝子の変化が原因となります。

軟骨無発生症は骨系統疾患のなかでもっとも重い部類に入り、胸郭が極端に狭いために、生まれたあとの呼吸を保つことが難しい病気です。多くは出生前後に亡くなります。妊娠中の超音波検査で気づかれることがほとんどです。

SLC26A2 遺伝子は、症状の重さが大きく異なる複数の病気を起こします。もっとも重いのがこの軟骨無発生症1B型で、同じ遺伝子の変化がより軽い場合には、アテロステオジェネシスII型、ダイアストロフィック骨異形成症、多発性骨端異形成症(もっとも軽い型)となります。

原因

SLC26A2(DTDST)は、細胞のなかへ硫酸イオンを取り込む運び屋(トランスポーター)です。

軟骨の土台となる「プロテオグリカン」という物質は、硫酸をたっぷり結合させることで水を抱え込み、クッションとしてはたらきます。硫酸を細胞に取り込めないと、プロテオグリカンの硫酸化が不十分になり、軟骨が正しい構造をつくれません。骨は軟骨を鋳型にして伸びるため、結果として骨の伸びが強く妨げられます。

お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。

症状

  • 四肢の極端な短縮:手足が非常に短く、胴体も短くなります
  • 狭い胸郭と肺の低形成この病気の予後を決める最も重要な所見です
  • 大きく見える頭部(体幹と四肢が短いため相対的に大きく見えます)
  • 扁平な顔つき、短い首
  • 胎児水腫、羊水過多:妊娠中の超音波検査で指摘されます
  • 骨化の著しい不良:X線で椎体や骨盤がほとんど写りません
  • 多くは死産、または生後まもなく呼吸不全で亡くなります

検査・診断

妊娠中の超音波検査で、四肢の著しい短縮、狭い胸郭、椎体の骨化不良、胎児水腫から疑われます。出生後(または死産後)のX線検査では、椎体・仙骨・恥骨の骨化がほとんど認められないことが特徴です。

確定診断は遺伝学的検査で行い、軟骨無発生症1B型では SLC26A2 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。次のお子さまの見通しを正しくお伝えするために、原因遺伝子を確定することには大きな意味があります。

治療

現時点で、この病気を治す治療はありません。出生前に診断がついた場合は、ご家族と医療チームが十分に話し合い、出生後の方針をあらかじめ決めておくことが大切です。

  • 出生前の遺伝カウンセリング:診断、見通し、次のお子さまへの影響についてご説明します
  • 分娩方法と出生後の対応の事前の話し合い:呼吸の補助をどこまで行うかを含め、ご家族の意向を尊重して決めます
  • 緩和ケア:お子さまの苦痛を最小限にし、ご家族が過ごす時間を大切にする支援
  • ご家族への心理的支援:グリーフケアを含め、継続的な支えが必要です
  • ごきょうだいへの説明と支援

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる SLC26A2 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、SLC26A2 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

SLC26A2(DTDST、diastrophic dysplasia sulfate transporter)は細胞膜の硫酸/塩化物交換輸送体で、軟骨細胞への無機硫酸の供給を担う。欠損するとプロテオグリカン(アグリカン)のコンドロイチン硫酸鎖の硫酸化が低下し、軟骨基質の水和能と力学的性質が損なわれる。

本遺伝子は明確なアレル系列(allelic series)を形成する——重症端から順に、①軟骨無発生症1B型(周産期致死)、②アテロステオジェネシスII型(周産期致死〜乳児期死亡)、③ダイアストロフィック骨異形成症(生存可能、「ヒッチハイカー母指」と耳介の嚢腫が特徴)、④多発性骨端異形成症4型(rMED、成人期の関節症のみ)となる。残存輸送活性の程度が表現型を規定し、フィンランドではダイアストロフィック骨異形成症の創始者変異(c.-26+2T>C)により保因者頻度が1〜2%と高い

鑑別としては、軟骨無発生症1A型(TRIP11)、軟骨無発生症2型(COL2A1、多くは新生突然変異による顕性)、致死性骨異形成症(FGFR3、新生突然変異)、低ホスファターゼ症周産期致死型(ALPL)、骨形成不全症II型が挙がる。これらは遺伝形式が異なり、次子再発率が25%(潜性)とほぼ0%(新生突然変異)で大きく違うため、遺伝子診断は遺伝カウンセリングに直結する。

よくある質問

Q. 次のお子さまへの影響はありますか。

A. この病気は常染色体潜性遺伝のため、ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。骨系統疾患には偶発的に起こる(新生突然変異による)ものも多く、その場合の再発率はごくわずかです。再発率が大きく異なるため、原因遺伝子を確定することが重要です。

Q. 妊娠中に分かりますか。

A. 多くは妊娠中期以降の超音波検査で、四肢の著しい短縮と狭い胸郭から気づかれます。前のお子さまで診断がついている場合は、妊娠早期からの検査を検討できます。遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q. 同じ遺伝子で軽い病気もあると聞きました。

A. はい。この遺伝子の変化は、残っているはたらきの程度によって症状の重さが大きく変わります。もっとも軽い型では、成人になってから関節の痛みで気づかれる程度です。

Q. 生まれたあと、どのくらい生きられますか。

A. この型では、胸郭が極端に狭く肺が育たないため、多くは死産、または生後まもなく亡くなります。つらいお話ですが、事前に知っておくことで、お子さまと過ごす時間の準備ができます。医療チームとよく話し合ってください。

Q. 遺伝カウンセリングでは何を相談できますか。

A. 診断の意味、次のお子さまへの影響、出生前検査や着床前検査の選択肢、ごきょうだいやご親族への影響などをご相談いただけます。判断を急がせることはありません。

参考文献

  • Rossi A, Superti-Furga A. Mutations in the diastrophic dysplasia sulfate transporter (DTDST) gene (SLC26A2): 22 novel mutations, mutation review, associated skeletal phenotypes, and diagnostic relevance. Hum Mutat. 2001;17(3):159-171.
  • Superti-Furga A, Hästbacka J, Wilcox WR, et al. Achondrogenesis type IB is caused by mutations in the diastrophic dysplasia sulphate transporter gene. Nat Genet. 1996;12(1):100-102.
  • Bonafé L, Cormier-Daire V, Hall C, et al. Nosology and classification of genetic skeletal disorders: 2015 revision. Am J Med Genet A. 2015;167A(12):2869-2892.
  • Dwyer E, Hyland J, Modaff P, Pauli RM. Genotype-phenotype correlation in DTDST dysplasias: Atelosteogenesis type II and diastrophic dysplasia variant in one family. Am J Med Genet A. 2010;152A(12):3043-3050.
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

AIチャットで相談する AIチャット