アルギニノコハク酸尿症

Argininosuccinic aciduria, ASL

概要

アルギニノコハク酸尿症(Argininosuccinic aciduria)は、体のなかで生じたアンモニアを尿素に変えて捨てるしくみ(尿素サイクル)がうまくはたらかず、血液中のアンモニアが高くなる病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、ASL 遺伝子の変化が原因となります。

高アンモニア血症は脳に強い影響を与えるため、早く見つけて、たんぱく質を控えた食事と薬で予防することが大切です。日本では新生児マススクリーニングの対象です。

原因

ASL 遺伝子は、アルギニノコハク酸リアーゼという酵素の設計図です。この酵素は、尿素サイクルの4番目の段階で、アルギニノコハク酸をアルギニンとフマル酸に分ける役目をしています。

酵素がはたらかないと、アルギニノコハク酸が体にたまり、尿素サイクルが途中で止まってアンモニアが処理できなくなります。また、この酵素は一酸化窒素(NO)を作る材料の供給にも関わっており、肝臓や血管の症状にも関係すると考えられています。

症状

  • 新生児期発症型:生後数日での哺乳不良、嘔吐、けいれん、意識障害(高アンモニア血症による)
  • 遅発型:くり返す嘔吐、行動の変化、発達の遅れ、けいれん
  • 毛髪がもろく切れやすくなる(trichorrhexis nodosa)
  • 肝臓が大きくなる、肝機能の異常、肝線維症
  • 高血圧、学習の困難(長期の合併症)

検査・診断

新生児マススクリーニングで血液中のシトルリンの高値から疑われます。血中アンモニア、血漿アミノ酸分析(シトルリン高値)、尿中および血中のアルギニノコハク酸の検出で診断し、ASL 遺伝子の解析によって確定します。

治療

  • たんぱく質を制限した食事と、必要なアミノ酸の補充
  • アルギニンの補充(尿素サイクルを回し、アルギニノコハク酸として窒素を排泄させる)
  • フェニル酪酸ナトリウムなどの窒素排泄促進薬
  • 高アンモニア血症の発作時は、輸液・薬剤投与、必要に応じて血液透析
  • 体調が悪いときの対応(シックデイ)をあらかじめ決めておく
  • 重症例では肝移植が検討されることがあります

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる ASL 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、ASL 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

アルギニノコハク酸尿症は ASL(7q11.21)の両アレル変異により生じる尿素サイクル異常症で、頻度はOTC欠損症に次ぐ。ASLはアルギニノコハク酸をアルギニンとフマル酸へ開裂する。

血漿アミノ酸分析ではシトルリン高値(通常100〜300 μmol/L程度で、シトルリン血症I型ほど著明ではない)を示し、血中・尿中のアルギニノコハク酸の検出が診断確定的である。

本症に特徴的なのは、高アンモニア血症の重症度に見合わない長期合併症(神経発達障害、肝線維症、高血圧)が生じる点である。ASLはNO合成に必要なアルギニンの細胞内供給にも関与しており、その障害によるNO欠乏が、肝障害・高血圧・神経学的転帰に寄与すると考えられている。このため、アンモニア管理が良好でも認知機能の障害が残りうる。

急性期治療は蛋白除去・高カロリー輸液・アルギニン静注・窒素排泄薬(フェニル酢酸ナトリウム/安息香酸ナトリウム)であり、血中アンモニアが高値持続する場合は速やかに血液浄化療法へ移行する。

よくある質問

Q. 食事はどのように気をつけますか?

A. たんぱく質の量を調整し、不足するアミノ酸を専用のフォーミュラで補います。管理栄養士とともに、成長に必要な量を確保しながら進めます。

Q. アンモニアが上がるのはどんなときですか?

A. 感染症、発熱、嘔吐や下痢、長時間の絶食、手術のあとなどです。こうしたときは早めに受診してください。

Q. 髪の毛がもろいのは関係がありますか?

A. はい。この病気では毛髪がもろく切れやすくなることが知られています(結節性裂毛症)。アルギニンの補充で改善することがあります。

Q. アンモニアが安定していれば安心ですか?

A. この病気では、アンモニアの管理が良好でも、肝臓の線維化や高血圧、学習の困難が現れることがあります。定期的な検査を続けることが大切です。

Q. 次の子も同じ病気になりますか?

A. 常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がどちらもキャリア(保因者)の場合、妊娠のたびに4分の1の確率です。

参考文献

  • Nagamani SC, Erez A, Lee B. Argininosuccinate lyase deficiency. Genet Med. 2012;14(5):501-507.
  • Erez A, Nagamani SC, Shchelochkov OA, et al. Requirement of argininosuccinate lyase for systemic nitric oxide production. Nat Med. 2011;17(12):1619-1626.
  • Baruteau J, Diez-Fernandez C, Lerner S, et al. Argininosuccinic aciduria: Recent pathophysiological insights and therapeutic prospect. J Inherit Metab Dis. 2019;42(6):1147-1161.
  • Häberle J, Burlina A, Chakrapani A, et al. Suggested guidelines for the diagnosis and management of urea cycle disorders: First revision. J Inherit Metab Dis. 2019;42(6):1192-1230.
  • OMIM #207900 Argininosuccinic aciduria
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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