常染色体潜性難聴7型

Autosomal Recessive Deafness 7, TMC1

概要

常染色体潜性難聴7型(DFNB7/11)は、生まれつき、あるいは幼いうちから重い難聴が現れる病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、TMC1 遺伝子の変化が原因となります。

耳以外に症状を伴わない「非症候性難聴」で、人工内耳による聴覚の獲得が期待できます。早く診断して、早く介入することがことばの発達を大きく左右します。

原因

TMC1 遺伝子は、内耳の有毛細胞にある「音を感じ取る入り口」(機械受容チャネル)を作るたんぱく質の設計図です。音の振動を電気信号に変える、聴こえのいちばん最初の段階を担っています。

この遺伝子に変化があると音の信号が作られず、重い難聴になります。常染色体潜性の変化では先天性の重度難聴(DFNB7/11)、顕性の変化では成人発症の進行性難聴(DFNA36)となります。

症状

  • 生まれつき、あるいは乳幼児期からの重度〜最重度の難聴(両耳)
  • ことばの発達の遅れ(治療をしない場合)
  • 難聴以外の症状はありません(めまい・視力障害・腎障害などを伴いません)
  • 新生児聴覚スクリーニングで「要精査」となることが多い

検査・診断

新生児聴覚スクリーニングと、その後の聴力検査(ABR、ASSR)で難聴を確認します。原因を調べるため難聴の遺伝学的検査を行い、TMC1 遺伝子の変化を確認します。日本では難聴の遺伝学的検査が保険適用で、原因遺伝子によって人工内耳の効果の見通しが立てられます。

治療

  • 補聴器:まず装用し、効果を確認します
  • 人工内耳:この遺伝子が原因の難聴では、良好な効果が期待できます
  • ことばの発達を支える療育(言語聴覚療法)
  • 家族への支援、教育面での配慮
  • 定期的な聴力の評価

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる TMC1 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、TMC1 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

常染色体潜性難聴7型(DFNB7/11)は TMC1(9q21.13)の両アレル変異による非症候性感音難聴である。TMC1は内耳有毛細胞の不動毛先端に局在し、機械電気変換(MET)チャネルの構成分子である。

同一遺伝子の顕性変異は DFNA36(成人発症の進行性難聴)を生じ、潜性変異は先天性重度難聴を生じる。潜性型は先天性・非進行性・重度〜最重度で、両側対称性である。

難聴の遺伝学的検査により原因遺伝子を同定する臨床的意義は大きい。TMC1をはじめとする内耳有毛細胞の遺伝子(GJB2、SLC26A4、TMC1、CDH23 など)が原因の場合、蝸牛神経が保たれているため人工内耳の効果が良好である。一方、OTOF(DFNB9)はauditory neuropathyを呈するが人工内耳が有効、蝸牛神経低形成では効果が限定的となる。

本邦の難聴遺伝学的検査(保険収載)では、TMC1を含む多数の遺伝子が同時に解析される。人工内耳の適応判断と予後予測に直結するため、早期の実施が推奨される。

よくある質問

Q. 人工内耳は効果がありますか?

A. この遺伝子が原因の難聴では、良好な効果が期待できます。早く装用するほど、ことばの発達に有利とされています。

Q. 耳以外に症状は出ますか?

A. 出ません。難聴だけの「非症候性難聴」です。めまいや視力の問題、腎臓の症状は伴いません。

Q. なぜ遺伝子を調べるのですか?

A. 原因となる遺伝子によって、人工内耳の効果の見通しや、進行するかどうかが分かるためです。日本では保険で受けられます。

Q. 進行しますか?

A. この型では先天性で、進行しないことが多いとされています。

Q. 次の子も同じ難聴になりますか?

A. 常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がどちらもキャリア(保因者)の場合、妊娠のたびに4分の1の確率です。

参考文献

  • Kurima K, Peters LM, Yang Y, et al. Dominant and recessive deafness caused by mutations of a novel gene, TMC1, required for cochlear hair-cell function. Nat Genet. 2002;30(3):277-284.
  • Pan B, Géléoc GS, Asai Y, et al. TMC1 and TMC2 are components of the mechanotransduction channel in hair cells of the mammalian inner ear. Neuron. 2013;79(3):504-515.
  • Usami S, Nishio SY. The genetic etiology of hearing loss in Japan revealed by the social health insurance-based genetic testing of 10K patients. Hum Genet. 2022;141(3-4):665-681.
  • OMIM #600974 Deafness, autosomal recessive 7
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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