概要
常染色体潜性大理石骨病5型(だいりせきこつびょう)は、骨を溶かす細胞(破骨細胞)がはたらかないために骨が硬くなりすぎる病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、OSTM1(6q21)遺伝子の変化が原因となります。
骨は、つくる(骨芽細胞)と壊す(破骨細胞)を絶えず繰り返して生まれ変わっています。壊すはたらきが失われると骨は硬く厚くなりますが、硬いだけで質が悪いため、かえって折れやすくなります。さらに骨のなかにあるべき骨髄の空間が狭くなり血液がつくれなくなること、神経の通り道が狭くなって視力や聴力が失われることが、深刻な問題になります。
常染色体潜性大理石骨病5型では、この型は、常染色体潜性大理石骨病のなかでもっとも重い経過をとります。生後まもなくからの骨髄機能の低下に加えて、脳そのものの変性(神経変性)が急速に進みます。けいれん、著しい発達の遅れを伴い、多くは乳児期に亡くなります。
原因
OSTM1 は、CLCN7(4型の原因たんぱく質)と組になってはたらく相棒で、CLCN7が正しく機能するために欠かせません。
破骨細胞は、骨の表面に貼りついて酸と酵素を出し、骨を溶かします。このために必要な要素は大きく3つあり、①破骨細胞そのものがつくられること、②酸を送り出す装置が動くこと、③溶かすための酵素が届くことです。このいずれかがうまくいかないと骨が溶けなくなります。
お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。
症状
- 骨髄のはたらきの低下:貧血、血小板減少による出血、感染症にかかりやすい
- 肝臓と脾臓の腫大:骨髄以外の場所で血液をつくろうとするために起こります
- 視神経の圧迫による視力低下・失明:早期に現れ、進行すると回復しません
- 難聴、顔面神経のまひ:頭蓋骨の穴が狭くなるために起こります
- 骨折しやすい:硬いのに折れやすいのがこの病気の特徴です
- 歯が生えるのが遅い、あごの骨の炎症(骨髄炎)
- 成長障害、低身長
- 低カルシウム血症によるけいれん、テタニー
- 型により、腎尿細管性アシドーシス・脳の石灰化・神経の変性を伴います
検査・診断
X線検査で、骨全体が白く濃く写ること、「骨のなかの骨」(bone-in-bone)や、椎体の上下が濃くなるサンドイッチ像など特徴的な所見を確認します。血液検査では貧血・血小板減少・カルシウムの低下、骨を壊すはたらきの指標(TRACP-5b)を評価します。
確定診断は遺伝学的検査で行い、常染色体潜性大理石骨病5型では OSTM1 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。この病気では、遺伝子診断が「治療方針そのもの」を決めます。造血幹細胞移植が有効な型と、原理的に効かない型があるためです。
治療
造血幹細胞移植(骨髄移植)が、根治につながる唯一の治療です。ただしすべての型で有効なわけではありません。
- 造血幹細胞移植:破骨細胞は血液の細胞から分化するため、欠陥が血液側にある型では有効です。早期に行うほど視力の温存が期待できます
- 移植が有効でない型があります:RANKL(TNFSF11)型は欠陥が骨をつくる細胞側にあるため無効、OSTM1型は神経の変性が移植で止まりません
- 視神経の圧迫に対する減圧手術(時期を逃さないことが重要です)
- 貧血・血小板減少に対する輸血、感染症の予防
- カルシウム・ビタミンDの管理(過剰投与は避けます)
- 骨折・あごの骨髄炎に対する整形外科・歯科口腔外科的な管理
- インターフェロンγ-1bが用いられることがあります
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる OSTM1 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、OSTM1 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
キャリアスクリーニングテスト(228種類)
常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。
検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。
専門的な解説
大理石骨病は破骨細胞の機能または分化の異常による骨硬化性疾患群で、遺伝形式・重症度により常染色体潜性(悪性乳児型、ARO)、中間型、常染色体顕性(Albers-Schönberg病)に分けられる。AROは出生25万人に1人程度とまれだが、無治療では多くが10歳までに死亡するため早期診断が求められる。原因遺伝子の約50%はTCIRG1(V-ATPase a3サブユニット)、次いでCLCN7が約15%を占める。
OSTM1(6q21、grey-lethal)はI型膜たんぱく質で、ClC-7の必須βサブユニットとして輸送体を安定化する。欠損はClC-7の分解を招くため、生化学的にはCLCN7欠損と同等以上の影響を及ぼす。本型の中枢神経障害は骨変化に対する二次性ではなく一次性の神経変性であり、造血幹細胞移植によって阻止できないことが確立している。このため移植の適応判断において、OSTM1型の除外はきわめて重要である。予後は最も不良で、多くは1歳前後で死亡する。
治療戦略の観点からは、①破骨細胞は存在するが機能しない型(TCIRG1、CLCN7、OSTM1、SNX10、PLEKHM1、CA2)と、②破骨細胞そのものが形成されない型(TNFSF11、TNFRSF11A)に分けて理解するのが実際的である。さらに造血系内在性か間質系かという軸が移植適応を決め、TNFSF11型のみが間質系(移植無効)である。鑑別としては、ピクノディスオストーシス(CTSK)、大理石骨病様の骨硬化を示す骨幹端異形成症、中毒性・代謝性の骨硬化(フッ素症、鉛中毒)が挙がる。
よくある質問
Q. どのくらいの頻度で起こる病気ですか。
A. 常染色体潜性の大理石骨病は、出生25万人に1人程度とされる非常にまれな病気です。近親婚の多い地域では頻度が高くなることが知られています。
Q. 骨が硬いのに折れやすいのはなぜですか。
A. 骨は「つくる」と「壊す」を繰り返すことで、古くなった部分を新しく質のよい骨に置き換えています。壊すはたらきが止まると、古く質の悪い骨がそのまま残って厚くなるため、硬いのにもろく、折れやすくなります。
Q. 目が見えにくくなると聞きました。
A. 頭蓋骨が厚くなることで視神経の通り道が狭くなり、視神経が圧迫されます。いったん失われた視力は回復しにくいため、定期的な眼科の評価と、早い段階での治療の判断が大切です。
Q. 移植をしても神経の症状は残るのですか。
A. この型の神経の症状は、骨の異常が原因ではなく脳そのものの変性によるものです。そのため造血幹細胞移植では改善しません。ご家族と医療チームで十分に話し合ったうえで方針を決めます。
Q. 次のお子さまへの影響はありますか。
A. ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。正確な見通しは遺伝カウンセリングでご確認ください。
参考文献
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