常染色体潜性痙性対麻痺47型

Autosomal Recessive Spastic paraplegia 47, AP4B1

概要

常染色体潜性痙性対麻痺47型は、脳から脊髄を通って足へ向かう神経の通り道(皮質脊髄路)が少しずつ傷むために、両足がつっぱって(痙性)、歩きにくくなる病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、AP4B1 遺伝子の変化が原因となります。

痙性対麻痺には80以上の原因遺伝子が知られています。足の症状だけの「純粋型」と、知的障害・末梢神経障害・視力障害などを伴う「複合型」に分けられ、常染色体潜性の型は複合型が多いとされます。

原因

AP4B1 遺伝子は、神経の細長い突起(軸索)が正しく保たれるために必要なたんぱく質の設計図です。

足へ向かう神経の軸索は、体のなかでもっとも長く、1メートル近くに達します。そのため、物質の輸送や膜の形づくり、脂質の代謝といったしくみがわずかに乱れるだけでも、いちばん遠い先端から傷んでいきます。これが、足から症状が始まる理由です。

AP4B1 は、細胞のなかで荷物を仕分けて運ぶ「アダプタータンパク質複合体4(AP-4)」の部品です。AP-4を作る4つの遺伝子(AP4B1・AP4M1・AP4E1・AP4S1)のどれが変化しても、よく似た症状(AP-4欠損症候群)になります。

症状

  • 両足のつっぱり(痙性)と、歩きにくさ:つま先歩き、はさみ足歩行
  • 足の腱反射の亢進、バビンスキー徴候
  • 進行すると、杖や車椅子が必要になることがあります
  • 膀胱の症状(頻尿、尿意切迫、失禁)
  • 足の感覚の低下(振動覚が低下しやすい)
  • 複合型で伴うことのある症状知的障害・認知機能の低下、てんかん、末梢神経障害、視神経萎縮・網膜変性、小脳失調、難聴、脳梁の菲薄化
  • 上肢の症状は比較的軽いことが多い

検査・診断

両足の痙性と腱反射の亢進から疑い、頭部・脊髄のMRI(脳梁の菲薄化などの所見)と神経伝導検査を行います。ビタミンB12欠乏、脊髄の圧迫、多発性硬化症、副腎白質ジストロフィーなど、ほかの原因を除外することが大切です。原因遺伝子が80以上あるため、AP4B1 遺伝子を含む遺伝学的検査によって常染色体潜性痙性対麻痺47型と確定します。

治療

  • 根本的に治す方法は確立していません
  • 痙縮に対する治療:バクロフェン、チザニジンなどの内服、ボツリヌス毒素の注射、重症例では髄腔内バクロフェン療法
  • 理学療法(関節の拘縮を防ぎ、歩行機能を保つために重要です)
  • 装具(短下肢装具など)、歩行補助具
  • 膀胱の症状に対する薬物治療
  • てんかんがある場合は抗てんかん薬
  • 療育・教育面での支援(知的障害を伴う場合)

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる AP4B1 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、AP4B1 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

常染色体潜性痙性対麻痺47型(SPG47)は AP4B1 の両アレル変異による。遺伝性痙性対麻痺(HSP)は皮質脊髄路の遠位優位な軸索変性(dying-back degeneration)を本態とし、80を超える遺伝子座(SPG1〜)が同定されている。

責任遺伝子産物の機能は、膜の形成と輸送、脂質代謝、ミトコンドリア機能、軸索輸送、ミエリン形成など多岐にわたるが、いずれも「最も長い軸索の維持」という共通の要請に関わる。常染色体潜性型は顕性型(SPG4/SPASTなど)に比べ発症が早く、複合型(complicated form)の頻度が高い。

AP4B1(1p13.2)はAP-4複合体のβ4サブユニットをコードする。AP-4複合体(ε・β4・μ4・σ4)はトランスゴルジ網からの小胞輸送を担い、ATG9Aの輸送を介してオートファジーに関与する。SPG47/50/51/52(AP4B1/AP4M1/AP4E1/AP4S1)は臨床的に区別できず、AP-4欠損症候群として一括される。乳児期の筋緊張低下→痙性への移行、重度知的障害、小頭症、てんかん、薄い脳梁を特徴とする。

治療は対症療法が中心である。痙縮に対しては経口抗痙縮薬、ボツリヌス毒素、髄腔内バクロフェン療法を段階的に用いる。理学療法による拘縮予防と歩行機能の維持が、長期的なADLを大きく左右する。鑑別として、治療可能な疾患(ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏、銅欠乏、HTLV-1関連脊髄症、ドパ反応性ジストニア)の除外は必須である。

よくある質問

Q. どのように進行しますか?

A. 型によって幅がありますが、多くはゆっくり進行します。理学療法を続けることで、歩ける期間を長く保つことを目指します。

Q. 足以外にも症状が出ますか?

A. 常染色体潜性の型では、知的障害や末梢神経の障害、目の症状などを伴う「複合型」が多いとされます。型によって異なります。

Q. リハビリは効果がありますか?

A. とても重要です。関節が固くなるのを防ぎ、歩く力を保つために、継続することが勧められます。

Q. なぜ遺伝子を調べるのですか?

A. 80以上の原因遺伝子があり、型によって伴う症状や経過が異なるためです。また、治療できる別の病気との区別にも役立ちます。

Q. 他のAP-4関連の型と違いますか?

A. AP-4を作る4つの遺伝子はどれが変化しても、よく似た症状(AP-4欠損症候群)になります。管理の方法も共通です。

参考文献

  • Abou Jamra R, Philippe O, Raas-Rothschild A, et al. Adaptor protein complex 4 deficiency causes severe autosomal-recessive intellectual disability, progressive spastic paraplegia, shy character, and short stature. Am J Hum Genet. 2011;88(6):788-795.
  • Shribman S, Reid E, Crosby AH, et al. Hereditary spastic paraplegia: from diagnosis to emerging therapeutic approaches. Lancet Neurol. 2019;18(12):1136-1146.
  • Blackstone C. Hereditary spastic paraplegia. Handb Clin Neurol. 2018;148:633-652.
  • Fink JK. Hereditary Spastic Paraplegia Overview. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle.
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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