概要
バース症候群は、男の子に、心臓の筋肉の障害(拡張型心筋症)、白血球の一種である好中球の減少、筋力の低下、低身長が現れる病気です。X連鎖という形式で遺伝し、TAFAZZIN(TAZ) 遺伝子の変化が原因となります。
ミトコンドリアの膜を作る脂質(カルジオリピン)がうまく作れないことが原因です。心臓と感染症の管理によって、成人まで生活されている方が増えています。
原因
TAFAZZIN 遺伝子は、タファジンという酵素の設計図です。この酵素は、ミトコンドリアの内膜にあるカルジオリピンという特殊な脂質を、正しい形に作り替える役目をしています。
カルジオリピンはミトコンドリアがエネルギーを作るために欠かせません。この酵素がはたらかないと、心臓・骨格筋・白血球など、エネルギーを多く使う細胞のはたらきが損なわれます。
症状
- 拡張型心筋症(乳児期から。心不全、不整脈)
- 好中球減少症:くり返す細菌感染、口内炎(周期的に変動することがあります)
- 骨格筋の筋力低下、運動が苦手、疲れやすい
- 低身長(思春期に追いつくことがあります)
- 3-メチルグルタコン酸尿症(尿検査での特徴的所見)
- 哺乳の困難、成長の遅れ
- 学習面の特性(計算が苦手など)が報告されています
検査・診断
男児の拡張型心筋症に好中球減少と3-メチルグルタコン酸尿症を伴うことから疑います。血液や乾燥濾紙血でのカルジオリピン(モノリソカルジオリピン/カルジオリピン比)の測定が診断に有用です。TAFAZZIN 遺伝子の解析によって確定します。
治療
- 心不全の治療(利尿薬、ACE阻害薬、β遮断薬など)、重症例では心臓移植
- 好中球減少に対するG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)と、感染症の予防・早期治療
- 栄養の管理(成長の支援)
- 理学療法
- 定期的な心エコー、血球数の確認
- 歯科での口腔ケア(口内炎・歯肉炎の予防)
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる TAFAZZIN 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、TAFAZZIN 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
キャリアスクリーニングテスト(228種類)
この疾患はX連鎖で遺伝します。お母さまが保因者の場合、息子さんの2分の1が発症し、娘さんの2分の1が保因者になります。キャリアスクリーニングテストでは、お母さまが保因者かどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。
検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。
専門的な解説
バース症候群は TAFAZZIN(TAZ)(Xq28)の変異によるX連鎖疾患である。タファジンはミトコンドリア内膜のアシルトランスフェラーゼで、カルジオリピンのアシル鎖リモデリングを担う。
機能喪失により成熟型カルジオリピン(テトラリノレオイルカルジオリピン)が減少し、モノリソカルジオリピン(MLCL)が蓄積する。乾燥濾紙血での MLCL/CL比の上昇は感度・特異度が高い診断マーカーで、遺伝子検査に先行して用いられる。
カルジオリピンは電子伝達系の超複合体形成とクリステ構造の維持に必須であり、その異常が心筋・骨格筋・好中球の機能障害をもたらす。好中球減少は周期性を示すことがあり、無症状の時期があるため見逃されやすい。
従来は乳児期の心不全・敗血症による死亡が多かったが、心不全治療とG-CSFの普及により成人期まで生存する例が増加している。心筋症は改善することもあり、経過は一様でない。エラミプレチド(カルジオリピン標的薬)の臨床試験が行われている。
よくある質問
Q. 男の子だけがかかるのですか?
A. X連鎖遺伝のため、症状が出るのはほぼ男の子です。お母さまは保因者となりますが、通常は症状が出ません。
Q. 心臓の状態はよくなりますか?
A. 治療によって改善する方もいらっしゃいます。定期的な心エコーで経過をみていきます。重症の場合は心臓移植が検討されます。
Q. 熱が出やすく、口内炎ができます。
A. 好中球という白血球が減っているサインかもしれません。血液検査で確認し、必要ならG-CSFという薬を使います。
Q. 身長が伸びません。
A. この病気では低身長がみられますが、思春期に追いつくことが多いと報告されています。
Q. 次の子も同じ病気になりますか?
A. お母さまが保因者の場合、息子さんの2分の1が発症し、娘さんの2分の1が保因者になります。遺伝カウンセリングでご相談ください。
参考文献
- Bione S, D’Adamo P, Maestrini E, et al. A novel X-linked gene, G4.5. is responsible for Barth syndrome. Nat Genet. 1996;12(4):385-389.
- Barth PG, Scholte HR, Berden JA, et al. An X-linked mitochondrial disease affecting cardiac muscle, skeletal muscle and neutrophil leucocytes. J Neurol Sci. 1983;62(1-3):327-355.
- Clarke SL, Bowron A, Gonzalez IL, et al. Barth syndrome. Orphanet J Rare Dis. 2013;8:23.
- Kulik W, van Lenthe H, Stet FS, et al. Bloodspot assay using HPLC-tandem mass spectrometry for detection of Barth syndrome. Clin Chem. 2008;54(2):371-378.
- OMIM #302060 Barth syndrome
