カルニチン・アシルカルニチントランスロカーゼ欠損症

Carnitine-Acylcarnitine Translocase Deficiency, SLC25A20

概要

カルニチン・アシルカルニチントランスロカーゼ欠損症(CACT欠損症)は、脂肪をエネルギーに変えるために、脂肪酸をミトコンドリアの内側へ運び入れる「輸送口」がはたらかない病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、SLC25A20 遺伝子の変化が原因となります。

脂肪酸酸化異常症のなかでもとくに重症で、多くは新生児期に発症します。日本では新生児マススクリーニングの対象です。絶食を避けることと、体調が悪いときの早い対応が生命を守ります。

原因

SLC25A20 遺伝子は、ミトコンドリアの内膜にあるカルニチン・アシルカルニチントランスロカーゼ(CACT)の設計図です。この輸送体は、長鎖アシルカルニチンをミトコンドリアの内側へ運び入れ、代わりにカルニチンを外へ出しています。

この輸送体がはたらかないと、脂肪酸がミトコンドリアの内側に入れず、エネルギーを作れません。同時に、長鎖アシルカルニチンが細胞にたまり、心臓の不整脈などを引き起こします。

症状

  • 新生児期の発症(重症型):生後まもなくの重い低血糖、高アンモニア血症、不整脈・心停止、けいれん、昏睡
  • 肝臓の腫大、肝機能の異常
  • 筋力の低下、心筋症
  • 致死的な不整脈を起こしやすいのが、この病気のとくに危険な点です
  • 軽症型では、乳幼児期に低血糖発作をくり返します

検査・診断

新生児マススクリーニングで、長鎖アシルカルニチン(C16、C18:1)が著明に高く、遊離カルニチン(C0)が低いことから疑われます。CPT2欠損症と生化学的所見が似ているため、SLC25A20 遺伝子の解析による確定が必要です。

治療

  • 絶食を厳格に避ける(乳児期は夜間も含めて頻回の授乳・栄養が必要です)
  • 長鎖脂肪を強く制限し、中鎖脂肪酸(MCT)を主体とした食事療法
  • 高炭水化物食、夜間の経管栄養や生でんぷんの使用
  • シックデイ対応:食事がとれないときはただちに受診し、ブドウ糖の点滴(GIR 8〜10 mg/kg/分)を受ける
  • 不整脈の監視と治療
  • カルニチンの補充については慎重な判断が必要です(長鎖アシルカルニチンを増やす懸念があるため)

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる SLC25A20 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、SLC25A20 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

CACT欠損症は SLC25A20(3p21.31)の両アレル変異による。CACTはカルニチンシャトルの第2段階を担い、CPT1が生成した長鎖アシルカルニチンをミトコンドリアマトリックスへ輸送する。

アシルカルニチン分析では長鎖アシルカルニチン(C16、C18、C18:1)の著明高値と遊離カルニチン低値を示すが、このパターンはCPT2欠損症と鑑別困難である。両者の区別には遺伝子解析または酵素活性測定を要する。

脂肪酸酸化異常症のなかでも最も重症度が高く、新生児期発症例の予後は不良である。蓄積した長鎖アシルカルニチンが心筋のイオンチャネルを阻害し、致死性不整脈を惹起することが病態の中心である。

治療の要諦は異化の徹底的な回避で、シックデイには躊躇なく高濃度ブドウ糖輸液を開始する。カルニチン補充は長鎖アシルカルニチンの産生を増やす可能性があり、その適応には議論がある。トリヘプタノインの有効性が報告されている。

よくある質問

Q. どのくらい厳格に絶食を避ける必要がありますか?

A. この病気ではとくに厳格な管理が必要です。乳児期は夜間も含めて頻回の栄養が必要になります。担当の先生の指示に従ってください。

Q. 体調が悪いときはどうすればよいですか?

A. ためらわずすぐに受診してください。食事がとれないときは、早期にブドウ糖の点滴が必要です。緊急時の対応を書いた書面(緊急時カード)を常に携帯してください。

Q. 不整脈が危険と聞きました。

A. たまった物質が心臓のはたらきに影響し、危険な不整脈を起こすことがあります。定期的な心電図の確認が大切です。

Q. CPT2欠損症と似ていると言われました。

A. 血液検査の所見がよく似ているため、遺伝子検査で区別します。治療の考え方は共通する部分が多くあります。

Q. カルニチンは飲んだほうがよいですか?

A. この病気では慎重な判断が必要です。自己判断で服用せず、必ず担当の先生にご相談ください。

参考文献

  • Huizing M, Iacobazzi V, Ijlst L, et al. Cloning of the human carnitine-acylcarnitine carrier cDNA and identification of the molecular defect in a patient. Am J Hum Genet. 1997;61(6):1239-1245.
  • Rubio-Gozalbo ME, Bakker JA, Waterham HR, Wanders RJ. Carnitine-acylcarnitine translocase deficiency, clinical, biochemical and genetic aspects. Mol Aspects Med. 2004;25(5-6):521-532.
  • Vitoria I, Martín-Hernández E, Peña-Quintana L, et al. Carnitine-acylcarnitine translocase deficiency: experience with four cases in Spain and review of the literature. JIMD Rep. 2015;20:11-20.
  • OMIM #212138 Carnitine-acylcarnitine translocase deficiency
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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