小脳失調・知的障害・平衡障害症候群1型

Cerebellar ataxia, mental retardation, and dysequilibriumsyndrome 1, VLDLR

概要

小脳失調・知的障害・平衡障害症候群1型(VLDLR関連小脳低形成/ディスエクィリブリウム症候群)は、生まれつき小脳が小さいために、歩けるようになるのが遅れ、体のバランスが取りにくい病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、VLDLR 遺伝子の変化が原因となります。

四つばいではなく、手と足で歩く(四足歩行)方がいることが報告され、注目された病気です。近親婚のある集団(フッター派、中東など)での報告が多くみられます。

原因

VLDLR 遺伝子は、超低比重リポタンパク質受容体の設計図です。この受容体は、脂質の取り込みだけでなく、脳の発生においてリーリンという物質の信号を受け取り、神経細胞を正しい場所へ導く役目をしています。

この受容体がはたらかないと、神経細胞の移動がうまくいかず、小脳と大脳の一部が正しく作られません。

症状

  • 著しい運動発達の遅れ(歩行の獲得が遅れる、または獲得できない)
  • 体のバランスが取りにくい(失調)
  • 中等度〜重度の知的障害
  • けいれん
  • 低身長
  • 斜視、眼振
  • 一部の方で四足歩行(手と足を使った歩行)がみられます
  • MRIでの小脳低形成(とくに虫部)と、大脳皮質の単純化した脳回

検査・診断

生まれつきの運動発達の遅れと失調から疑い、頭部MRIで小脳低形成と大脳皮質の脳回の単純化を確認します。VLDLR 遺伝子の解析によって確定します。似た所見を示す他の疾患(リーリン(RELN)関連、ジュベール症候群など)との区別に役立ちます。

治療

  • 根本的に治す方法は確立していません
  • 理学療法・作業療法による運動機能の支援
  • 歩行補助具、装具
  • けいれんに対する抗てんかん薬
  • 療育・教育面での支援、コミュニケーションの支援
  • 定期的な発達の評価

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる VLDLR 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、VLDLR 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

VLDLR関連小脳低形成(VLDLR-associated cerebellar hypoplasia, VLDLRCH)は VLDLR(9p24.2)の両アレル変異による。VLDLRはApoER2(LRP8)とともにリーリン受容体として機能し、Dab1のリン酸化を介して神経細胞の移動を制御する。

画像所見は特徴的で、小脳低形成(虫部優位)、脳幹の低形成、大脳皮質の脳回単純化(simplified gyral pattern)の三徴を呈する。この組み合わせはリーリン経路の障害を示唆する。

本症は2005年にフッター派(Hutterite)における「ディスエクィリブリウム症候群」の原因として同定された。四足歩行(quadrupedal gait)を示す家系が報告され、その進化学的解釈をめぐって議論を呼んだが、現在では重度の失調に対する代償的な移動様式と理解されている。

RELN 変異では、より重篤な滑脳症を伴う小脳低形成(LCH)を呈する。両者はリーリン経路の異なる階層の障害であり、画像と遺伝学的検査による鑑別が必要である。

よくある質問

Q. 四足歩行になると聞きました。

A. 一部の方に報告されている歩き方で、バランスが取りにくいことに対する体の工夫と理解されています。すべての方に起こるわけではありません。

Q. 歩けるようになりますか?

A. 個人差が大きく、補助具を使って歩ける方から、歩行の獲得が難しい方までさまざまです。理学療法を早くから続けることが大切です。

Q. 知的な発達はどうですか?

A. 中等度から重度の知的障害を伴うことが多いとされます。療育と教育の支援が重要です。

Q. 進行しますか?

A. 生まれつきの脳の形の問題であり、進行性に悪化する病気ではありません。支援によってできることを増やしていけます。

Q. 次の子も同じ病気になりますか?

A. 常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がどちらもキャリア(保因者)の場合、妊娠のたびに4分の1の確率です。

参考文献

  • Boycott KM, Flavelle S, Bureau A, et al. Homozygous deletion of the very low density lipoprotein receptor gene causes autosomal recessive cerebellar hypoplasia with cerebral gyral simplification. Am J Hum Genet. 2005;77(3):477-483.
  • Ozcelik T, Akarsu N, Uz E, et al. Mutations in the very low-density lipoprotein receptor VLDLR cause cerebellar hypoplasia and quadrupedal locomotion in humans. Proc Natl Acad Sci U S A. 2008;105(11):4232-4236.
  • Boycott KM, Bonnemann C, Herz J, et al. Mutations in VLDLR as a cause for autosomal recessive cerebellar ataxia with mental retardation (dysequilibrium syndrome). J Child Neurol. 2009;24(10):1310-1315.
  • OMIM #224050 Cerebellar hypoplasia and mental retardation with or without quadrupedal locomotion 1
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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