進行性家族性肝内胆汁うっ滞症3型

Cholestasis, progressive familial intrahepatic 3, ABCB4

概要

進行性家族性肝内胆汁うっ滞症3型(Progressive familial intrahepatic cholestasis type 3・PFIC3)は、肝臓で作られた胆汁が流れにくくなり、乳幼児期から学童期にかけて黄疸やかゆみが現れ、肝臓の障害が進んでいく病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、ABCB4 遺伝子の変化が原因となります。

同じ「進行性家族性肝内胆汁うっ滞症」でも、1型・2型にくらべて発症の時期がやや遅く、思春期以降に見つかることもあります。

原因

ABCB4 遺伝子は、MDR3 というたんぱく質の設計図です。MDR3は、肝臓の細胞から胆汁のなかへ「リン脂質」を送り出すはたらきをしています。

リン脂質は、胆汁のなかで胆汁酸を包みこみ、その刺激をやわらげる役目をしています。MDR3がはたらかないとリン脂質が足りなくなり、むき出しの胆汁酸が胆管の壁を傷つけ、炎症と線維化が進みます。

症状

  • 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
  • かゆみ
  • 肝臓や脾臓が大きくなる
  • 体重が増えにくい
  • 胆石ができやすい
  • 進行すると肝硬変、門脈圧亢進症、肝不全に至る

検査・診断

血液検査、腹部の超音波検査、肝生検などで胆汁うっ滞の原因を調べます。胆汁うっ滞があって γ-GTPが高い ことがこの病気の特徴で、γ-GTPが正常か低い1型・2型と見分ける手がかりになります。ABCB4 遺伝子の解析によって確定します。

治療

  • ウルソデオキシコール酸の内服(効果が期待できる場合があります)
  • かゆみをやわらげる薬
  • 脂溶性ビタミンの補充と栄養の管理
  • 肝硬変や肝不全に進んだ場合は肝移植

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる ABCB4 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、ABCB4 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

PFIC3は ABCB4(7q21.12)がコードする multidrug resistance protein 3(MDR3, ABCB4)の機能喪失により生じる。MDR3は肝細胞の毛細胆管側膜に局在するホスファチジルコリンフリッパーゼで、胆汁中へのリン脂質分泌を担う。

リン脂質分泌が低下すると、胆汁中で混合ミセルを形成できない遊離胆汁酸が胆管上皮を直接傷害し、胆管障害と門脈域の線維化を惹起する。組織学的には胆管増生を伴う門脈域の線維化を示し、胆汁性肝硬変へ進展する。

血清γ-GTP高値を呈する点が、γ-GTPが正常〜低値のPFIC1(ATP8B1)・PFIC2(ABCB11)との重要な鑑別点である。ヘテロ接合体では、妊娠性肝内胆汁うっ滞症(ICP)、薬剤性胆汁うっ滞、低リン脂質関連胆石症(LPAC症候群)といった軽症型の表現型が報告されており、対立遺伝子疾患群を形成する。

ウルソデオキシコール酸は残存機能がある症例で有効なことがあり、無効例や進行例では肝移植が適応となる。

よくある質問

Q. かゆみや黄疸はいつごろ出ますか?

A. 1型・2型よりも遅く、乳幼児期から学童期、ときには思春期以降に見つかることもあります。経過には幅があります。

Q. 1型・2型とはどう違うのですか?

A. 原因となる遺伝子が違います。3型は ABCB4 が原因で、血液検査のγ-GTPが高くなるのが特徴です。1型・2型ではγ-GTPは正常か低い値になります。

Q. ウルソデオキシコール酸は効きますか?

A. 遺伝子のはたらきが一部残っている場合には、効果が期待できることがあります。効果が乏しい場合には他の治療を検討します。

Q. 将来、肝移植が必要になりますか?

A. 肝硬変や肝不全に進んだ場合には検討されます。早い時期から治療と経過観察を続けることが大切です。

Q. 妊娠中に肝機能が悪くなった家族がいます。関係はありますか?

A. ABCB4 の変化を片方だけ持つ方(保因者)では、妊娠性肝内胆汁うっ滞症や胆石症を起こしやすいことが報告されています。

参考文献

  • de Vree JM, Jacquemin E, Sturm E, et al. Mutations in the MDR3 gene cause progressive familial intrahepatic cholestasis. Proc Natl Acad Sci U S A. 1998;95(1):282-287.
  • Jacquemin E, De Vree JM, Cresteil D, et al. The wide spectrum of multidrug resistance 3 deficiency: from neonatal cholestasis to cirrhosis of adulthood. Gastroenterology. 2001;120(6):1448-1458.
  • Rosmorduc O, Poupon R. Low phospholipid associated cholelithiasis: association with mutation in the MDR3/ABCB4 gene. Orphanet J Rare Dis. 2007;2:29.
  • Bull LN, Thompson RJ. Progressive Familial Intrahepatic Cholestasis. Clin Liver Dis. 2018;22(4):657-669.
  • OMIM #602347 Cholestasis, progressive familial intrahepatic, 3
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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