概要
家族性血球貪食性リンパ組織球症2型は、免疫のブレーキがきかなくなり、免疫の細胞が暴走して自分の体を攻撃してしまう病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、PRF1(10q22.1)遺伝子の変化が原因となります。
本来、ウイルスに感染した細胞は免疫の細胞(NK細胞・キラーT細胞)によって取り除かれ、それによって免疫の反応も終わります。ところがこの病気では、標的の細胞を壊すしくみが働かないため免疫の反応が終わらず、サイトカインという物質が大量に出続けます。その結果、高熱、肝臓と脾臓の腫れ、血球の減少が起こり、治療しなければ命に関わります。
家族性血球貪食性リンパ組織球症2型では、もっとも頻度の高い型のひとつで、多くは1歳未満に発症します。中枢神経の症状(けいれん、意識障害、髄液の異常)を伴う頻度が高いことが知られています。一方、パーフォリンの活性が一部残る変化では、学童期以降や成人になってから発症する例も報告されています。
原因
PRF1(パーフォリン)は、免疫の細胞が標的の細胞を壊すときに細胞膜に穴を開ける「弾丸」そのものにあたるたんぱく質です。
免疫の細胞は、標的の細胞に取りつくと「弾丸(パーフォリンとグランザイム)」の入った袋を細胞膜まで運び、準備をして、膜と融合させて発射します。この一連の流れのどこかが止まると、標的を壊せません。家族性血球貪食性リンパ組織球症の原因遺伝子は、いずれもこの流れのいずれかの段階を担っています。
お父さま・お母さまがそれぞれ症状のないキャリア(保因者)で、その両方から変化した遺伝子を受け継いだときに発症します(常染色体潜性遺伝)。多くはウイルス感染(とくにEBウイルス)をきっかけに発症します。
症状
- 続く高熱:抗菌薬が効かず、原因のはっきりしない発熱が続きます
- 肝臓と脾臓の腫れ:おなかがふくらんで見えることがあります
- 血球の減少:貧血、出血しやすい(血小板減少)、感染しやすい(好中球減少)
- 肝機能の悪化、黄疸
- 中枢神経の症状:けいれん、意識障害、けいれん重積、ものが見えにくい。後遺症を残すことがあり、早期の治療が重要です
- リンパ節の腫れ、皮疹
- 検査所見:フェリチンの著明な高値、中性脂肪の上昇、フィブリノゲンの低下、可溶性IL-2レセプターの上昇、NK細胞活性の低下
検査・診断
国際的な診断基準(HLH-2004)では、発熱・脾腫・2系統以上の血球減少・高中性脂肪血症または低フィブリノゲン血症・血球貪食像・NK細胞活性低下・フェリチン500 ng/mL以上・可溶性IL-2レセプター高値の8項目のうち5項目を満たすことで診断します。
「一次性(遺伝性)」か「二次性」かの区別が治療方針を決めます。感染症・悪性腫瘍・自己免疫疾患に伴う二次性HLHでは、原疾患の治療が中心になります。一次性の確定診断は遺伝学的検査で行い、家族性血球貪食性リンパ組織球症2型では PRF1 遺伝子に父方・母方それぞれ由来の変化が見つかります。フローサイトメトリーによるパーフォリン発現とCD107a脱顆粒の評価は、結果が早く得られるため初期診断に有用です。
治療
まず暴走した免疫を鎮め、そのうえで造血幹細胞移植による根治をめざすという2段階の治療になります。治療開始の遅れが命に直結するため、疑った時点で専門施設への紹介が必要です。
- 寛解導入療法:エトポシド、デキサメタゾン、シクロスポリンを用いる国際プロトコル(HLH-94/HLH-2004)
- 中枢神経病変に対する髄腔内注射(メトトレキサート、ステロイド)
- 造血幹細胞移植:一次性HLHを治すことができる唯一の方法です。寛解が得られたら、できるだけ早期に検討します
- 抗インターフェロンγ抗体など、新しい分子標的薬が用いられることがあります
- 感染症の予防、輸血、支持療法
- ごきょうだいの検査:発症前に見つけられれば、状態のよいうちに移植を計画できます
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる PRF1 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、PRF1 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
キャリアスクリーニングテスト(228種類)
常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。
検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。
専門的な解説
家族性血球貪食性リンパ組織球症(FHL)は、細胞傷害性リンパ球(CTL・NK細胞)のパーフォリン依存性細胞傷害経路の欠損により生じる。標的細胞(抗原提示細胞を含む)を除去できないため抗原提示とT細胞活性化が終息せず、IFN-γを中心とするサイトカインストームとマクロファージの過剰活性化に至る。原因遺伝子は経路上の段階に対応し、PRF1(エフェクター)、UNC13D(プライミング)、STX11・STXBP2(膜融合)、LYST・RAB27A・AP3B1(顆粒の生成と輸送=色素低下症を伴う症候群性HLH)に整理される。
PRF1(10q22.1)は細胞傷害性顆粒の主要エフェクターで、Ca²⁺依存性に標的細胞膜へ重合してポアを形成し、グランザイムの侵入路をつくる。FHL全体の20〜40%を占め、フローサイトメトリーによるNK細胞・CTL内パーフォリン発現の欠失で迅速にスクリーニングできる。完全欠失型は乳児期発症、p.Ala91Val(A91V)などの低形態性バリアントは遅発型・成人発症型と関連する。中枢神経病変の頻度が高く、診断時の髄液検査と頭部MRIは必須である。
鑑別としては、X連鎖リンパ増殖症候群(SH2D1A、XIAP)、チェディアック・東症候群、グリセリ症候群2型、ヘルマンスキー・パドラック症候群2型、慢性活動性EBウイルス感染症、そして悪性リンパ腫・全身型若年性特発性関節炎に伴うマクロファージ活性化症候群が挙がる。成人発症例でも、低形態性バリアントによる一次性HLHが一定割合存在するため、年齢のみで遺伝学的検査を見送らない。
よくある質問
Q. どのくらいの頻度で起こる病気ですか。
A. 出生5万人から15万人に1人程度とされます。日本では、UNC13D遺伝子による3型がもっとも多いと報告されています。
Q. 風邪をきっかけに発症したと言われました。
A. この病気は、ウイルス感染(とくにEBウイルス)が引き金になることが多いことが知られています。ただし原因は感染そのものではなく、感染に対する免疫の反応を止められないという体質にあります。
Q. ごきょうだいも検査を受けたほうがよいですか。
A. はい。強くおすすめします。同じ遺伝子の変化をもっていても、まだ症状が出ていないことがあります。発症前に分かれば、状態のよいうちに移植を計画でき、治療成績が大きく変わります。
Q. 検査ですぐ分かる方法はありますか。
A. この型では、免疫細胞のなかのパーフォリンというたんぱく質を調べる検査(フローサイトメトリー)で、比較的早く見当をつけることができます。
Q. 次のお子さまへの影響はありますか。
A. ご両親がどちらもキャリアの場合、お子さまごとに4分の1の確率で発症します。正確な見通しは遺伝カウンセリングでご確認ください。
参考文献
- Henter JI, Horne A, Aricó M, et al. HLH-2004: diagnostic and therapeutic guidelines for hemophagocytic lymphohistiocytosis. Pediatr Blood Cancer. 2007;48(2):124-131.
- Sepulveda FE, de Saint Basile G. Hemophagocytic syndrome: primary forms and predisposing conditions. Curr Opin Immunol. 2017;49:20-26.
- Jordan MB, Allen CE, Greenberg J, et al. Challenges in the diagnosis of hemophagocytic lymphohistiocytosis: recommendations from the North American Consortium for Histiocytosis. Pediatr Blood Cancer. 2019;66(11):e27929.
- Stepp SE, Dufourcq-Lagelouse R, Le Deist F, et al. Perforin gene defects in familial hemophagocytic lymphohistiocytosis. Science. 1999;286(5446):1957-1959.
