免疫不全症52型

Immunodeficiency 52, LAT

概要

免疫不全症52型は、生まれつき免疫のはたらきの一部が損なわれるために、感染症をくり返したり、ふつうは病気を起こさない病原体で重い感染を起こしたりする病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、LAT 遺伝子の変化が原因となります。

こうした病気は「原発性免疫不全症(先天性免疫異常症)」と総称され、500以上の原因遺伝子が知られています。どの遺伝子が原因かによって、弱くなる免疫の種類と、かかりやすい病原体が違うのが大きな特徴です。そのため、遺伝子を調べることが治療方針に直結します。

原因

LAT 遺伝子は、免疫のはたらきに必要なたんぱく質の設計図です。

LAT は、T細胞の信号を伝える「連結板」のようなたんぱく質です。ZAP70 が付けた目印を足場にして、多くの信号分子を集めます。

症状

  • 感染症をくり返す(肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、皮膚の感染など)
  • ふつうは重くならない病原体で重症化する(日和見感染)
  • 抗菌薬が効きにくい、治りにくい
  • 成長の遅れ、体重が増えない
  • 自己免疫の症状(自分の細胞を攻撃してしまう)を伴うことがある
  • 慢性の下痢
  • 重い感染症に加えて、自己免疫症状(自己免疫性血球減少、リンパ節腫大、肝脾腫)
  • ※症状の組み合わせは、原因となる遺伝子によって大きく異なります

検査・診断

感染症のくり返しや重症化のパターンから疑い、血液検査(血球数、免疫グロブリン、リンパ球サブセット、補体)と、必要に応じて免疫機能の検査を行います。LAT 遺伝子を含む遺伝学的検査によって免疫不全症52型と確定します。原因遺伝子の同定は、造血幹細胞移植の適否や、避けるべきワクチン・薬剤の判断に直結します。

治療

  • 感染症の予防(抗菌薬・抗真菌薬の予防投与、環境の管理)と、感染時の早期・十分な治療
  • 免疫グロブリンの補充(抗体の産生が低下している場合)
  • 造血幹細胞移植:重症例では根治的治療となります
  • 生ワクチン(BCG、ロタ、麻疹風疹、水痘など)は避ける必要があります(診断がつくまで、および免疫が回復するまで)
  • 輸血が必要な場合は放射線照射血を用います(移植片対宿主病の予防)
  • 自己免疫症状に対する免疫抑制療法
  • 定期的な免疫機能の評価と、成長・発達の確認

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる LAT 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、LAT 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

免疫不全症52型は LAT の両アレル変異による原発性免疫不全症(inborn errors of immunity, IEI)である。IEIは国際免疫学会連合(IUIS)により10のカテゴリーに分類され、現在500を超える病因遺伝子が登録されている。

LAT(16p11.2、linker for activation of T cells)はZAP70によりリン酸化される膜貫通アダプター蛋白で、PLCγ1、GRB2、GADSなどを集積させてTCRシグナルのハブを形成する。欠損では進行性のT細胞数減少と機能不全に加え、リンパ増殖と自己免疫(自己免疫性血球減少、肝脾腫、リンパ節腫大)が前景に立つ点が特徴で、「免疫不全と免疫調節異常の併存」を示す。制御性T細胞の機能異常が自己免疫の基盤と考えられる。

IEIの管理で共通して重要なのは、(1) 生ワクチンの回避、(2) 輸血時の放射線照射血の使用、(3) 感染症の早期・十分な治療、(4) 造血幹細胞移植の適応判断のタイミングである。診断確定前に生ワクチン(とくにBCG、ロタウイルスワクチン)を接種すると、播種性感染により致死的となりうるため、家族歴のある例では接種前の評価が必要である。

新生児マススクリーニングにおけるTREC/KREC測定は重症複合免疫不全症(SCID)とB細胞欠損症を発症前に検出でき、日本でも一部自治体で導入が進んでいる。

よくある質問

Q. どんな感染症に気をつければよいですか?

A. 原因となる遺伝子によって、弱くなる免疫の種類が違います。この型で注意すべき感染症について、担当の先生から具体的にお聞きください。

Q. 予防接種は受けられますか?

A. 生ワクチン(BCG、ロタ、麻疹風疹、水痘など)は避ける必要があります。不活化ワクチンについては担当の先生にご相談ください。

Q. 造血幹細胞移植は必要ですか?

A. 病型と重症度によります。免疫の障害が重い場合には、根治的な治療として検討されます。

Q. 輸血のときに注意することはありますか?

A. 放射線を照射した血液を使う必要があります。医療機関に必ず病名をお伝えください。

Q. 自己免疫の症状も出るのですか?

A. この型では、感染しやすさに加えて、自分の血球を攻撃してしまう自己免疫の症状やリンパ節の腫れを伴うことが特徴です。

参考文献

  • Keller B, Zaidman I, Yousefi OS, et al. Early onset combined immunodeficiency and autoimmunity in patients with loss-of-function mutation in LAT. J Exp Med. 2016;213(7):1185-1199.
  • Tangye SG, Al-Herz W, Bousfiha A, et al. Human Inborn Errors of Immunity: 2022 Update on the Classification from the International Union of Immunological Societies Expert Committee. J Clin Immunol. 2022;42(7):1473-1507.
  • Bousfiha A, Moundir A, Tangye SG, et al. The 2022 Update of IUIS Phenotypical Classification for Human Inborn Errors of Immunity. J Clin Immunol. 2022;42(7):1508-1520.
  • Notarangelo LD, Bacchetta R, Casanova JL, Su HC. Human inborn errors of immunity: An expanding universe. Sci Immunol. 2020;5(49):eabb1662.
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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