概要
ジュベール症候群10型は、脳の一部である小脳と脳幹の形が生まれつき異なるために、体のバランスや呼吸、眼の動きに影響が出る病気です。X連鎖という形式で遺伝し、OFD1 遺伝子の変化が原因となります。
頭のMRIで見られる特徴的な形は「臼歯徴候(molar tooth sign)」と呼ばれ、この病気に共通する診断の決め手になります。ジュベール症候群には40以上の原因遺伝子が知られており、原因となる遺伝子によって、目・腎臓・肝臓などの合併症の出やすさが異なります。
原因
OFD1 遺伝子は、細胞の表面にある「一次繊毛」という小さなアンテナのはたらきに関わるたんぱく質の設計図です。一次繊毛は、細胞が周囲からの信号を受け取るために使われます。
この遺伝子に変化があると繊毛のはたらきが損なわれ、脳・目・腎臓・肝臓などの発生に影響が出ます。こうした病気のグループを「繊毛病(シリオパチー)」と呼びます。
OFD1 はX染色体上にあり、繊毛の基底小体で中心小体の長さを調節しています。この型はX連鎖で遺伝するため、症状が出るのは主に男の子です。腎臓の病気や多指症を伴うことがあります。
症状
- 赤ちゃんのころの筋緊張の低下(体がやわらかい)
- 発達の遅れ、知的障害(程度には幅があります)
- 歩くときのふらつき(失調)
- 新生児期の呼吸の乱れ(速い呼吸と無呼吸をくり返す)
- 眼球の動きの異常(眼球運動失行)
- 網膜の変性(視力の低下につながることがあります)
- 腎臓の病気(腎癆、腎嚢胞)を伴うことがある
- 肝臓の線維化を伴うことがある
- 多指症(指が多い)を伴うことがある
- 頭部MRIでの臼歯徴候
検査・診断
頭部MRIで臼歯徴候を確認することが診断の中心です。ジュベール症候群には40以上の原因遺伝子が知られているため、どの型かを知るには遺伝学的検査が必要です。OFD1 遺伝子の解析によってジュベール症候群10型と確定します。原因遺伝子が分かると、合併症のサーベイランス計画を立てやすくなります。
治療
- 根本的に治す方法は確立していません
- 理学療法・作業療法・言語療法による発達の支援
- 新生児期の呼吸の乱れに対する見守りと、必要に応じた呼吸の管理
- 眼科での定期的な診察(網膜の変性を早く見つけるため)
- 腎臓のはたらきと肝臓の状態を定期的に確認する
- てんかんがある場合は抗てんかん薬
- 多指症などに対する整形外科的な治療
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる OFD1 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、OFD1 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
キャリアスクリーニングテスト(228種類)
この疾患はX連鎖で遺伝します。お母さまが保因者の場合、息子さんの2分の1が発症し、娘さんの2分の1が保因者になります。キャリアスクリーニングテストでは、お母さまが保因者かどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。
検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。
専門的な解説
ジュベール症候群10型は OFD1 の半接合性変異により生じる。ジュベール症候群は現在40以上の責任遺伝子が同定されている遺伝的異質性の高い疾患群で、共通所見は頭部MRIにおける molar tooth sign(上小脳脚の肥厚・延長、深い脚間窩、小脳虫部低形成)である。
責任遺伝子産物の多くは、一次繊毛の基底小体・遷移帯(transition zone)・繊毛内輸送(IFT)に関わる。遷移帯は繊毛内外の蛋白質の出入りを制御する「門」であり、その破綻がSHHシグナルなどの異常を介して小脳虫部の形成不全をもたらす。
OFD1(Xp22.2)はX連鎖性の繊毛病遺伝子で、遠位中心小体に局在し中心小体長を制御する。女性における機能喪失変異は口顔指症候群1型(男性致死)を、男性における低形態性(hypomorphic)変異はジュベール症候群10型やSimpson-Golabi-Behmel症候群2型を生じる。したがって本型は他のJBTSと異なりX連鎖遺伝形式をとり、遺伝カウンセリングの内容が大きく異なる点に注意を要する。
繊毛病としての位置づけから、Meckel症候群、Bardet-Biedl症候群、腎癆・Senior-Løken症候群、口顔指症候群などと表現型が連続する。同一遺伝子が、変異の重症度に応じてジュベール症候群からMeckel症候群(致死的)までを生じることが知られており、原因遺伝子の同定は合併症のサーベイランスと予後の見通しに直結する。
よくある質問
Q. MRIの「臼歯徴候」とは何ですか?
A. 脳幹と小脳の形が、上から見ると奥歯(臼歯)のように見える所見です。ジュベール症候群に特徴的で、診断の決め手になります。
Q. 目や腎臓の検査は必要ですか?
A. 原因となる遺伝子によって、網膜の変性や腎臓の病気を伴いやすさが異なります。定期的な眼科・腎臓の検査をおすすめします。
Q. 発達はどのくらい進みますか?
A. お子さまによって幅があります。理学療法や作業療法などの支援を早くから続けることで、できることを増やしていけます。
Q. なぜ遺伝子を調べるのですか?
A. 40以上の原因遺伝子があり、どの遺伝子が原因かによって合併症の出方が変わるためです。検査によって、必要な定期検査の計画を立てられます。
Q. この型だけ遺伝のしかたが違うと聞きました。
A. はい。この型はX連鎖で遺伝するため、症状が出るのは主に男の子です。お母さまが保因者の場合、息子さんの2分の1が発症します。遺伝カウンセリングでご相談ください。
参考文献
- Coene KL, Roepman R, Doherty D, et al. OFD1 is mutated in X-linked Joubert syndrome and interacts with LCA5-encoded lebercilin. Am J Hum Genet. 2009;85(4):465-481.
- Parisi MA, Glass I. Joubert Syndrome. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle.
- Bachmann-Gagescu R, Dempsey JC, Phelps IG, et al. Joubert syndrome: a model for untangling recessive disorders with extreme genetic heterogeneity. J Med Genet. 2015;52(8):514-522.
- Romani M, Micalizzi A, Valente EM. Joubert syndrome: congenital cerebellar ataxia with the molar tooth. Lancet Neurol. 2013;12(9):894-905.
