α-マンノシドーシス(I型・II型)

Mannosidosis, alpha-, types I and II, MAN2B1

概要

α-マンノシドーシスは、体のなかで不要になった糖たんぱく質を分解できず、細胞のなかにたまっていく病気です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、MAN2B1 遺伝子の変化が原因となります。

特徴的な顔つき、知的な発達の遅れ、難聴、骨の変形、くり返す感染症が主な症状です。酵素を補う治療(酵素補充療法)が欧州で承認されています

原因

MAN2B1 遺伝子は、ライソゾームではたらくα-マンノシダーゼという酵素の設計図です。この酵素は、糖たんぱく質を分解する過程で、マンノースという糖を切り離す役目をしています。

酵素がはたらかないとマンノースを多く含む糖鎖(オリゴ糖)が細胞のなかにたまり、脳・骨・免疫のはたらきをそこないます。

症状

  • 難聴(ほぼ全例にみられます。乳幼児期から)
  • 知的な発達の遅れ(軽度〜中等度のことが多い)
  • 特徴的な顔つき(額が張り出す、鼻が低い、舌が大きい)
  • 骨の変形(多発性異骨症)、関節の症状、低身長
  • くり返す感染症(中耳炎、肺炎):免疫のはたらきが弱いため
  • 歩行のふらつき(小脳の症状)、筋力の低下
  • 角膜や水晶体の混濁
  • 精神症状(思春期以降にみられることがある)

検査・診断

尿中のマンノースを含むオリゴ糖の増加を調べ、白血球や培養した皮膚の細胞でα-マンノシダーゼの酵素活性を測定して診断します。MAN2B1 遺伝子の解析によって確定します。原因不明の知的障害に難聴とくり返す感染症を伴う場合には、この病気を考えます

治療

  • 酵素補充療法(ベルマナーゼ アルファ/ラミゼース®。欧州で承認されています。国内での使用については担当の先生にご確認ください)
  • 造血幹細胞移植:早期に行うことで、知的発達と聴力の悪化を抑えられたという報告があります
  • 補聴器による聴覚の支援(早期から重要です)
  • 感染症の予防と早期治療
  • 理学療法、整形外科的な治療
  • 療育・教育面での支援

この疾患は検査でわかります

この疾患は、原因となる MAN2B1 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。

エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)

エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、MAN2B1 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。

キャリアスクリーニングテスト(228種類)

常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます

検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。

専門的な解説

α-マンノシドーシスは MAN2B1(19p13.13)の両アレル変異による。ライソゾーム性α-マンノシダーゼの欠損により、マンノース含有オリゴ糖が蓄積する。頻度は1/500,000〜1,000,000。

従来はI型(重症・乳児型)とII型(中等症・若年型)に分けられてきたが、実際には連続的なスペクトラムである。難聴はほぼ全例に認められ、最も一貫した所見である。感音難聴と伝音難聴の混合型をとる。

免疫不全(好中球機能異常、低ガンマグロブリン血症)による反復感染が特徴的で、これが本症を他のオリゴ糖蓄積症から区別する手がかりとなる。

ベルマナーゼ アルファ(velmanase alfa)は2018年にEMAが承認した組換えヒトα-マンノシダーゼで、血清オリゴ糖の減少と運動機能・免疫指標の改善が報告されている。ただし血液脳関門を越えないため中枢神経症状には無効であり、神経学的転帰の改善を期待する場合は早期の造血幹細胞移植が選択肢となる。

よくある質問

Q. 難聴は必ず起こりますか?

A. ほぼすべての方にみられる症状です。乳幼児期から補聴器を使うことで、ことばの発達を助けることができます。

Q. 感染症をくり返します。

A. この病気では免疫のはたらきが弱くなるため、中耳炎や肺炎をくり返すことがあります。早めの受診と予防が大切です。

Q. 治療法はありますか?

A. 酵素を点滴で補う治療が欧州で承認されています。国内での使用については担当の先生にご確認ください。また、早期の造血幹細胞移植が検討されることもあります。

Q. 酵素補充療法で知的な発達もよくなりますか?

A. 点滴した酵素は脳へ届きにくいため、中枢神経の症状への効果は限られます。体の症状には効果が期待できます。

Q. 次の子も同じ病気になりますか?

A. 常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がどちらもキャリア(保因者)の場合、妊娠のたびに4分の1の確率です。

参考文献

  • Nilssen O, Berg T, Riise HM, et al. alpha-Mannosidosis: functional cloning of the lysosomal alpha-mannosidase cDNA and identification of a mutation in two affected siblings. Hum Mol Genet. 1997;6(5):717-726.
  • Malm D, Nilssen Ø. Alpha-mannosidosis. Orphanet J Rare Dis. 2008;3:21.
  • Borgwardt L, Guffon N, Amraoui Y, et al. Efficacy and safety of Velmanase alfa in the treatment of patients with alpha-mannosidosis: results from the core and extension phase analysis of a phase III multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled trial. J Inherit Metab Dis. 2018;41(6):1215-1223.
  • OMIM #248500 Mannosidosis, alpha B, lysosomal
医師監修 監修日:2026年9月8日
岡 博史 (医師・医学博士/ヒロクリニック統括院長)

日本皮膚科学会 皮膚科専門医/日本医師会 産業医/東京衛生検査所 指導監督医

この記事は、 ヒロクリニックNIPTの編集・監修体制 にもとづき、資格を持つ医師が内容を確認しています。

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