概要
ムコ多糖症I型 シャイエ型(Scheie syndrome)は、ムコ多糖症I型のなかでもっとも症状が軽い型です。常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとり、IDUA 遺伝子の変化が原因となります。
知的な発達は保たれ、身長もほぼ正常です。関節の硬さや角膜の濁り、心臓の弁の異常が、思春期以降にゆっくり現れます。診断が遅れやすい型で、成人になってから見つかることもあります。
原因
IDUA 遺伝子は、α-L-イズロニダーゼという酵素の設計図です。この酵素は、細胞のなかのライソゾームで、デルマタン硫酸とヘパラン硫酸というムコ多糖を分解しています。
酵素のはたらきが弱いとムコ多糖が分解されず、全身のさまざまな臓器にたまっていきます。どれくらい酵素が残っているかによって症状の重さが変わり、重い順にハーラー型・ハーラー/シャイエ型・シャイエ型と呼び分けられています。
症状
- 手指の関節が硬くなる(かぎ爪のような手)、手根管症候群
- 角膜の濁り(視力低下の原因になります)
- 心臓の弁の異常(大動脈弁狭窄・僧帽弁閉鎖不全)
- 関節の痛み、動かせる範囲の制限
- 知的な発達は正常、身長もほぼ正常
- 気道が狭くなり、睡眠時無呼吸を起こすことがある
検査・診断
尿中のムコ多糖(デルマタン硫酸・ヘパラン硫酸)の増加を調べ、白血球や培養した皮膚の細胞でα-L-イズロニダーゼの酵素活性を測定して診断します。IDUA 遺伝子の解析によって確定します。
治療
- 酵素補充療法(ラロニダーゼ/アウドラザイム®の点滴)
- 角膜移植、心臓弁の手術、手根管の手術
- 理学療法
- 定期的な心エコー、眼科・整形外科の診察
この疾患は検査でわかります
この疾患は、原因となる IDUA 遺伝子を調べることで、発症前や出生前に見つけることができます。ヒロクリニックNIPTでは次の2つの検査をご用意しています。
エクソーム解析を用いた検査(1,200種類以上)
エクソーム解析は、遺伝子のうちたんぱく質の設計図にあたる部分(エクソン)をまとめて読み取る検査です。この解析を行ったうえで、IDUA 遺伝子を含む1,200種類以上の遺伝子を対象に調べ、この疾患の原因となる変化を検出することが可能です。国内の検査所で行い、結果までの期間は5週間〜7週間です。
キャリアスクリーニングテスト(228種類)
常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患は、ご両親がどちらも症状のない「キャリア(保因者)」であるときに、4分の1の確率でお子さまが発症します。キャリアスクリーニングテストでは、ご夫婦がこの疾患のキャリアかどうかを頬の内側の粘膜から調べ、お子さまに受け継がれる可能性を、妊娠前や出生前に予測することができます。
検査の内容・費用・結果までの期間は キャリアスクリーニングテスト228 のページをご覧ください。
専門的な解説
シャイエ型は残存酵素活性が比較的保たれた軽症型で、以前はムコ多糖症V型と分類されていた。中枢神経障害を欠き、知能・身長ともにほぼ正常である。
初発症状は手根管症候群や関節拘縮、角膜混濁であることが多く、リウマチ性疾患と誤られて診断が遅れる例が少なくない。若年発症の両側手根管症候群は本症を疑う契機となる。
心弁膜症(とくに大動脈弁)は進行性で、成人期に弁置換を要することがある。酵素補充療法は身体症状の進行抑制に用いられるが、角膜と心臓弁への効果は限定的である。
よくある質問
Q. どんなきっかけで見つかりますか?
A. 若いうちに両手の手根管症候群が出た、角膜が濁ってきた、心臓の弁に異常が見つかった、といったことがきっかけになります。
Q. 知的な発達や身長に影響はありますか?
A. この型では知的な発達は正常で、身長もほぼ正常です。
Q. 大人になってから診断されることはありますか?
A. あります。症状がゆっくり進むため、成人期に診断される方もいらっしゃいます。
Q. 治療は必要ですか?
A. 酵素補充療法によって進行を抑えることが期待できます。あわせて、心臓・目・関節の症状に応じた治療を行います。
Q. ハーラー型の家族がいます。同じ病気ですか?
A. 同じ IDUA 遺伝子が原因ですが、残っている酵素のはたらきの量によって重さが変わります。ご家族内で型が異なることもあります。
参考文献
- Scott HS, Bunge S, Gal A, et al. Molecular genetics of mucopolysaccharidosis type I: diagnostic, clinical, and biological implications. Hum Mutat. 1995;6(4):288-302.
- Clarke LA. Mucopolysaccharidosis Type I. In: GeneReviews®. University of Washington, Seattle.
- Muenzer J, Wraith JE, Clarke LA. Mucopolysaccharidosis I: management and treatment guidelines. Pediatrics. 2009;123(1):19-29.
- Aldenhoven M, Wynn RF, Orchard PJ, et al. Long-term outcome of Hurler syndrome patients after hematopoietic cell transplantation: an international multicenter study. Blood. 2015;125(13):2164-2172.
- OMIM #607014 / #607015 / #607016 Mucopolysaccharidosis type I
